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岸田教団&THE明星ロケッツ

Skream! マガジン 2018年03月号掲載

岸田教団&THE明星ロケッツ

Official Site

2018.01.20 @ディファ有明

Writer 杉江 由紀

好きこそものの上手なれ。道を究めし猛者たちが、ここまで10年という月日をかけ構築してきた孤高なる音世界がその空間には特濃状態で充満していた。

岸田教団&THE明星ロケッツとは、リーダーである岸田(Ba)が、かの"東方Project"のアレンジCDや、オリジナル楽曲を同人界隈にて制作しているなかで、ライヴ活動を始めるにあたり10年前にメンバーを招集し結成した、なかなかに異色な背景を持つバンドである。と同時に、2010年には念願であったアニメ・タイアップにてメジャー・デビューを果たしたほか、その後の2016年には日比谷野音でのワンマンも成功させているなど、彼らは音源制作の面だけでなくライヴ展開の面でも着実な実績を積み上げてきたバンドだと言えるだろう。 そんななか、昨年11月からは10周年記念ツアーとなる"10th Anniversary Tour 2017~2018 ~懐古厨に花束を~(仮)"が全国各地にて繰り広げられていたそうで、このたびのディファ有明公演は彼らにとってそのファイナルを飾る晴れのステージとなったのだ。かくして、このライヴはまず冒頭にてドラマーであるみっちゃんが手掛けたという、岸田教団&THE明星ロケッツの10年間をダイジェスト的に振り返るレアな動画が上映されるところからスタート。

懐かしいライヴ映像や、過去のMVなどが連打されたことにより沸き上がった大歓声を受けるかたちで、「明星ロケット」(※もともと"東方Project"の楽曲として存在していた「レトロスペクティブ京都」を彼らがこのタイトルでアレンジした楽曲)がこのライヴの1曲目としてプレイされることとなり、ここではヴォーカリストのichigoがギターを肩にかけ激しくかき鳴らしながらパフォーマンスするという、あまり見慣れない光景も観られた。

"どうだった? わたしのギター&ヴォーカル。みんな、今日はすごいものを観たことになるよ。ディファ有明史上、最も歴史の浅いギター・ヴォーカルだからね(笑)"。 10年というそれなりに長い月日を経てもなお、新しいことに挑もうとするichigoの果敢なる姿勢は、岸田教団&THE明星ロケッツのこれからをより可能性豊かなものにしていくのではなかろうか。だいたい、しょっぱなから懐古するだけでなくアップツーデートなバンドの今現在をいきなり突きつけてくるあたりが実に乙ではないか。 "さて。今日ここにお集まりいただいたみなさんは、我々の古い曲を聴きたくて仕方がない懐古厨(※アニメやゲームの界隈で極端に昔にこだわる人のこと。2000年代初期に生まれたネットスラング)ということでよろしいですか? まぁ、本来ならいつものように最新の私たちを感じてもらえるカッコいいライヴをやりたいところなんですど、今日だけはね。10周年記念ということで、「昔は良かった......!」と思うことを許します(笑)。では、今夜は思う存分みんなで懐古していきましょう!"

ということで、ここからは2008年に"東方Project"の「亡き王女の為のセプテット」を岸田教団&THE明星ロケッツとしてアレンジし、人気動画サイトへ投稿したことで人気を博した「緋色のDance」や、「芥川龍之介の河童」など、まさに彼らが同人サークルの音楽集団として活躍していたころの名曲たちが、これでもか! と惜しみなくプレイされていったため、場内に集まった懐古厨たちがこぞって拳を振り上げながら沸きに沸いたことは言うまでもない。

また、ライヴ中盤では過去の思い出話という体で各メンバー同士が絶妙にディスり合うという(笑)、なんとも仲睦まじく微笑ましいMCで場内が和むひと幕もあり、そのあとにはアニメ"学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD"のOPテーマとして制作され、同時に岸田教団&THE明星ロケッツにとってはメジャー・デビュー楽曲としての意味合いも持つ「HIGHSCHOOL OF THE DEAD」が演奏されたくだりは、いかにも10周年記念ライヴ然としたものとして楽しむことができた。

"これまでの10年間、いろんなことがあったけどみんなありがとうね。我々はみんなに救われている部分もすごくあるから、音楽というかたちでみんなに何かお返しできたらいいなと思ってます。みんなのことが大好きだよ! 10年分の感謝を込めて歌います!"

ichigoのこの言葉に続いての「LIVE MY LIFE」では、みっちゃんの力強く頼もしい叩きっぷり、リーダーとしてバンドを牽引する岸田のダイナミックに躍動するベース・プレイ、エッジーでいてエモさも含んだはやぴ~のギター・ワーク、サポートながらに堅実なだけでなく要所では攻めのスタンスをみせるT-tsuのギター・センス、キュートさとパンチ力を兼ね備えたichigoの伸びやかなヴォーカリゼーションが渾然一体となり、岸田教団&THE明星ロケッツにしか創り出せない音世界が場内へと広がったのだ。

なお、アンコールでは懐かしい楽曲たちのほかにも、今期注目のTVアニメ"博多豚骨ラーメンズ"のOP曲に起用されている最新シングル表題曲「ストレイ」をサプライズとして初披露してくれる大サービスぶりであったのだが、そればかりか来たる5月5日にこのディファ有明にて岸田教団&THE明星ロケッツ主催の[岸田教団&THE明星ロケッツ presents "ガチです(ФωФ)!"]というイベントが行われることも発表されるに至った。

何かに夢中になればなるほど、その対象いかんに関わらず人はきっとヲタク化してゆく。好きなものや好きなことを徹底的に究める姿勢は、もちろん彼らの音楽活動の基盤となっているのにほかならず、すなわち彼らが持つ深いヲタク気質はストイックな求道者のそれだと言えよう。何かと異端視されることが多いバンドなのかもしれないが、この希有なる魅力を持った求道者の存在感こそ、オリジナリティそのものであるはずだ。


[Setlist]
1. 明星ロケット
2. SuperSonicSpeedStar
3. 緋色のDance
4. 宵闇鳥
5. 芥川龍之介の河童
6. 知ってる?魔道書は鈍器にもなるのよ
7. ただ凛として
8. クリアレイン
9. 暁を映して
10. LITERAL WORLD
11. HIGHSCHOOL OF THE DEAD
12. over planet
13. POPSENSE
14. セブンスワールド
15. 11月
16. DesireDrive
17. ケモノノダンス
18. ストライク・ザ・ブラッド
19. Hack&Slash
20. 天鏡のアルデラミン
21. LIVE MY LIFE
en1. ストレイ
en2. GATE~それは暁のように~
en3. 星空ロジック

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