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INTERVIEW

Japanese

岸田教団&THE明星ロケッツ

2020年02月号掲載

岸田教団&THE明星ロケッツ

岸田教団&THE明星ロケッツ

Official Site

メンバー:ichigo(Vo) 岸田(Ba)

インタビュアー:杉江 由紀

れっきとしたロック・バンドである一方、サブカル文化を愛してやまない集団でもある岸田教団&THE明星ロケッツが、ここにきて発表するのは、表題曲がTVアニメ"とある科学の超電磁砲T"のEDテーマとして起用されているシングル『nameless story』だ。今回は新たな試みとして、もともと親交があったという草野華余子(LiSAの大ヒット・チューン「紅蓮華」作曲者)を迎えての、コライトというプロセスを経ての制作が行われたというだけあって、今までにないほどの洗練されたテイストが加わっている点は実に興味深い。そして、ロックとアニソンのいいとこ取りをなし得てしまう、このバンドのニッチな存在感はやはり希有である。

-このたびは、2018年末に出た4thアルバム『REBOOT』以来の音源となる、シングル『nameless story』が発表されることになりましたが、今回の表題曲は、アニメ"とある科学の超電磁砲T"のエンディング・テーマに起用されているのだとか。

岸田:基本的にうちはアニタイ(アニメ・タイアップ)以外でシングルを出すことはないんですけど、このタイアップはなんといっても"とある科学の超電磁砲T"ですからね。僕らは、この"とある"シリーズ自体が世に生まれた瞬間からのガチなリアタイ世代なので、最初の"とある魔術の禁書目録"がラノベとして書店に並んで買ったのが高校生くらいでしたし、それ以来ずっと慣れ親しんで来ているわけですよ。もうね、ほんと僕らにとって"とある"シリーズはいろんな意味で別格なんです。

ichigo:今回は、そういう歴史ある作品へのリスペクトを曲にみんなで入れていったよね。

-それだけの強い思い入れがあったとなると、今回の表題楽曲「nameless story」を仕上げていく際には、いつも以上のこだわりを詰め込んでいくことになったのでは?

岸田:いつもだったら曲は自分ひとりで書いちゃうんですけど、今回は草野華余子さんを連れてきまして、彼女と一緒に曲を作っていくという試みに挑戦してみたんですよ。もともと華余子さんとはお友達なんです。それに、最近だと海外なんかではコライトってかなり流行ってるじゃないですか。

-Bruno Marsが2018年にグラミー賞を獲った「That's What I Like」も、作詞作曲のクレジットには実に8名のクリエイターの名前が列記されていましたものね。

岸田:そうそう。クリエイターの中には作曲もできるけど、どちらかというと編曲のほうが得意というタイプもいれば、編曲もできるけど、どちらかというと作曲のほうが得意というタイプもいるわけで、その両方をひとりでまかなうよりも、得意な人がより得意なことを担当したほうが、さらに、クオリティの高いものを作れるという利点がありますからね。もちろんそこには信頼関係とかも必要になってきますけど、幸い華余子さんとは以前から交流もありますし、かねがね"ここぞというタイミングが来たら一緒にやろうぜ!"という話もしていたので、ここでようやくそれが実現したっていうことなんです。

-なるほど、そういうことでしたか。では、実際に草野華余子さんとのコライトを経て得られたメリットとは、具体的にどんなものだと感じられています?

岸田:純粋にいい曲ができました。最初は俺が土台となる原曲を渡したら"すごい、いつもよりいい曲ができたね!"って言われたわりに8割くらい新しく入れ替わったこの曲が返ってきましたからね(笑)。ですが、戻ってきたメロディが、これはまさにクラシック出身で、ずっと作曲をやってきたプロならではの仕事だなぁと感心したのを覚えています。

-そこからのアレンジに関して岸田さんがこだわられたのはどのような点でしたか?

岸田:普段だと、それなりには自分たちならではの爪痕を残そうという意識も働くんですけど、今回そういうエゴイズムはすべて取っ払いました。面々と続いてきた作品だけに、コンサヴァティヴなニュアンスが必要だと思ったんですよね。バンド・サウンドとしてエモいというだけじゃなく、和音やメロディの響きも大事にしていったという意味では、うちの曲としてはちょっと新しい雰囲気も出たんじゃないかと思います。

ichigo:ポップスっぽいカラーがうまい具合に入った気がしますね。

岸田:アニメにメインで出てくるのは女子中学生なので、そんなにハードにしすぎるのは違うかなというのがあったんですよ。透明感も大事でしょ。

ichigo:たしかにこの曲の場合だと透明感は大事だったよね。

-とはいえ曲の途中に入るギター・ソロは透明感というよりも、非常に胸アツな雰囲気を漂わせた展開ではありませんか?

岸田:たしかに。でも、普段の僕らからしたら、ミックスの仕上がりも含めてあれでも大分おとなしめではあるんですよ。

-なお、この「nameless story」については歌詞も岸田さんが書かれたのだとか。

岸田:改めて原作をじっくり読み直してから書きました。これは食蜂操祈 (しょくほうみさき/登場人物)の目線で書いてますね。今回のストーリーは彼女が軸になっているので、自然と詞の内容はこうなるしかなかったんですよ。

-そんな「nameless story」を歌っていく際に、ichigoさんが重視されたのはどのようなことでしたか?

ichigo:このアニメは出てくるキャラクターがほとんど女子中学生だし、力強さだけではなくて、明るさも意識しながら歌いましたね。華余子さんのメロディを歌うのは慣れないのもあって難しかったですけど、できるだけこの複雑なメロの良さとエモさを生かしていくようにしました。

岸田:全体の指揮を執っているのは僕とギターのhayapiさんなんですけど、彼からするとヴォーカルのディレクションをしていくときや、レコーディング全体を通しても、大切にしていたのは"ナラティヴ"であるっていうことだったらしいです。すべての作業が終わったあと、実はそうだったんだって聞かされました。

ichigo:ナラティヴってどういう意味なんだっけ?

岸田:"ナレーション"から派生してる言葉だから、物語の記述性の部分にこだわるっていうことなんだと思うよ。つまり、物語の内容を人に伝えるための技術を重要視してたったていうことなんじゃないかな。みんなに伝えたうえで、さらに、それがそれぞれの物語となっていくようにするには、どうしたらいいかっていうところまで彼は考えてたんだろうね。

-なかなか深いです。

岸田:この曲は"とある科学の超電磁砲T"のエンディング曲であり、岸田教団&THE明星ロケッツの作品でもあって、そのうえでこの曲を受け取ったみんなの中でも自分のストーリーとして解釈したり、受け入れられたりするような何かをどれだけ残せるか? っていうことを考えながらhayapiさんはずっと作ってたっていうことみたいです。

ichigo:ほんとにこの曲は、そういう意味合いをいろいろ持った曲になったよね。

-なるほど。では、楽器隊の各メンバーに対し、レコーディング段階で岸田さんから、何かしらのオーダーを出す場面などはあったのでしょうか。

岸田:ドラムに関しては、曲ができあがったときに"この打ち込みのまんま叩いてください"って言っただけですね。みっちゃんは"すごい調子良く叩けた!"って言ってました。ギターに関しても、hayapiさんに対して言ったのは、"「超電磁砲感」を大事にしていきましょう"っていうことくらいだったかな。

ichigo:この曲に合わせてhayapiはギターをカスタマイズしたんでしょ?

岸田:うん、この曲の録りのためだけにギターを改造してきてた。赤いVのブリッジの裏側に、真鍮の板を埋め込んできてたよ。

-ブリッジ裏に真鍮板を埋め込むことで得られる効果とは、いかなるものなのですか?

岸田:hayapiさん本人に言わせると、"音がサクッとする"らしいです(笑)。実際かなり効果あったと思いますよ。真鍮って金属の中でも硬くて粘り気がないほうだから、そういう材質の靭性が音にちゃんと影響した感じというか。hayapiさんのギターは、これまでわりと粘り気のある音が出るタイプだったんですけど、それが"粘り過ぎて使いづらい"ということも前から言ってたんで、今回これがいい機会になったっていうことでしょうね。