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INTERVIEW

Japanese

瀧川ありさ

2018年07月号掲載

瀧川ありさ

Interviewer:吉羽 さおり

肩の力が抜けた気がします


-最後の「東京」で綴った愛憎も、今の話でなんとなくわかりました(笑)。でもこの「東京」という曲を書くこと、"東京を知らない人が/この街覆ってく"ということを書くのって、結構な勇気がいりませんか?

1年間、ああじゃない、こうじゃないと曲を書いていたときに、なんていうか、あまり人にどう思われているとかは気にしていないつもりなんですけど、相手が決めつけてくることが多いなと思って。表に出る仕事柄なのもあるんですけど、見てくれとか、いろんなところで勝手に決められることが多いなって気づいたんですよね。それはイヤだなと。例えば、1年間リリースをしてないってことが、自分は別に不幸せだと思っていなくても、相手が勝手に決めてくるとか。どうしても表に出てないと、何もしてないってミュージシャンは思われがちじゃないですか。

-そうですね。

"なんなんだこれは"ってすごく思ったときに、上京者のような気持ち、ガッツというか。いいイラつきが出てきました(笑)。あの、ニュースになった当たり屋の話知ってます?

-はい、女性にばかりぶつかっていくやつですよね。

一時期ああいうのに本当に悩んだことがあったんです。"東京なんか出ていってやる!"って本当に思ったくらいに。小さいころからそういうタイプなんです。自分は何もしてないのに、そういう事故に遭うことが多くて。子供のころは、家に帰ってお母さんに泣きついたりしていたんです。でも"あんたはそういう引き寄せタイプなんだから、そういう星を持ってるのよ"って言われて。そんなこと言われても、イヤじゃないですか。でも、だんだんとわかってきて(笑)。胸張って歩かなきゃとか、どうやったらぶつかられないかとか、対策を考えるんですけど、でもどう考えても、ぶつかる方が悪いでしょっていう。いろいろごちゃごちゃ考えていたときに、すっと書けた曲なんです。だから、苦しんで生んだっていうよりは、ムカついたときにバーっと書きましたね(笑)。

-自分が生まれた街はこんなイヤな街じゃないはずなのに、という意味ですね。

東京は好きなんです。好きで、でもそこに生きている人とウマが合わない瞬間とかが悔しくて。お母さんはもう肝が据わってるから、"そういうのは田舎者なのよ"って言いますけど。私はそう思い切れないというか。戦い切れないところや、自分が弱いところもあって。そういう自分の本心や人間性、隠したい部分も含めて、出てしまった曲ですね。

-サビが印象的ですね。"東京はヘンテコだ"って。

東京はヘンテコだなぁって、最初に思ったんです。今までだったら、"東京はヘンテコだ"っていうフレーズは、最終的に変えると思うんです。でもヘンテコだとしか言えなかったんですよね(笑)。"ヘンテコ"っていう言葉も、ちょっと古臭くていいなって思って。平成のうちに"ヘンテコ"って言っておこうって。

-でもこの"ヘンテコ"っていう言葉って、そんなに強く否定してないっていうか。歪だけどかわいいみたいなニュアンスも出ますよね。

ちょっと愛もあるし(笑)。いい日本語ですよね、ヘンテコ。

-書き上げて、自分で腑に落ちたこと、スッキリした感じはありましたか?

逆に、この曲は人前に出すものじゃないなって思っちゃってました。でも、こういう曲を出さなきゃいけないんだって思って。こういうことなのかなと。聴いてくれた周りの人も、私っぽいと言ってくれたので、これが私らしいんだと思いました。だから、聴いてもらうのにちょっと勇気はいりますけど、逆にこの曲がわかるって思ってくれる人とは仲良くなれそうだなと(笑)。

-こうして自分の原点や、アイデンティティとなる作品を出したことで、瀧川さんのこれからが楽しみになります。

肩の力が抜けてきたような気がします。

-もっと心の内を表現できそうな感じですか?

なかなか、それが苦手なんですよね。"自分はこういう人間です"って堂々と歌うことへのコンプレックスはすごくあるし。あまり自分に自信がないからかわからないですけど、"こういう人です"、"で?"って言われるのが、イヤというか。Mっ気がゼロなので、私(笑)。こういう人ですって言われて、どうこう言われて、気持ち良くなれないタイプというか。だから、本当の気持ちは本当に信頼している人にしか言いたくないっていうところで、リリース曲って考えたときに、肩肘張っちゃうところがあったのかなと思うんですけど。

-だからこそ風景、情景をフィルターとしていたところもあったというか、そこで語らせる手法もあったんですかね。

そうですね、ありますね。でも、それだと何も伝わらずに終わるなっていうのもあるので、怖がらないように頑張りたいというのはありますけどね。逆に今、リリースを1年間待ってくれて、イベントやライヴに遊びに来てくれる人がいるっていうのは、すごく心強くて。MCで喋るのも、"誰が求めてるの?"って思っちゃう節があるんですけど、でも何を喋っても、"面白いです"って言ってくれる人がいたり、"話聞きたいですよ"って言ってくれる人がいたりすると、そのままを受け止めてくれる人もいるんだなって思いました。悪くないなっていう感じになってきて。「東京」の歌詞にもあるように、人にビビってるというか、信用してないのって、裏を返せば、自分のことも信用してないんだと気づいたんです。自分にちゃんと責任を持ってなかったんだなって。ちゃんと自分に責任を取れれば、どう思われようが大丈夫なんだろうなと。それが、言葉ではわかっていても、本当のところでわかってなかったなと思いました。この「東京」が書けたときに、大丈夫そうな気がしましたね。