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INTERVIEW

Japanese

BOYS END SWING GIRL

2017年11月号掲載

BOYS END SWING GIRL

Member:冨塚 大地(Vo/Gt)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-以前ライヴを拝見した際、MCで冨塚さんが"路上ライヴをしてきたけどなかなか人が立ち止まってくれなかった"という話をしていたことが印象に残っています。その経験を経て、バンドに持ち帰ってきたことはありますか?

前作『TRANCE』のツアー(※2017年5月に東名阪で開催した[BOYS END SWING GIRL TOUR 2017「to be "TRANCE" TOUR」])が終わったあと、武者修行の気持ちで路上ライヴをやろうと思ったんですけど、そこではバンドの名前を出さずに看板もなく、ただ歌いたくて。でも全然聴いてくれる人なんかいなくて、すごくつらかったなぁ。なんか、世界に取り残された気がしたんですよ。そこで"歌を聴いてもらえることって、当たり前じゃないんだな"と感じたんです。ライヴをすることも、CDをリリースできることも。それからは、前にも増してライヴ1本1本に気持ちが入るようになったし、もっともっといい歌を届けたい、そのためにはどうしたらいいだろう? と考えることができるようになりました。

-制作中、印象に残っているエピソードなどがあれば聞かせてください。

メンバー全員、お気に入りの曲がバラバラなんですよ。お互い全力で"この曲が一番いいでしょ!!"って言い合ってケンカになりました。今作は全曲A面! くらいの覚悟で作っていたので、7曲の親として僕は、悪い気持ちはしなかったですけど(笑)。

-やるせない気持ちや後ろ向きな気持ちを描くことにより、リリースを重ねるごとに歌詞のリアリティが増している印象があります。そのあたりは、歌詞を書いた冨塚さんご本人の心境の変化が関係しているのでしょうか?

写真みたいに日々の生活を切り取った詞を書きたいな、と思うようになりました。昔はしっかりと作り込まれて隙のない作品を完成形だと思っていたのですが、ここ最近は作者の中で完結させずに、聴いた人の心の中で完成する歌詞を目指して書いています。だからこそ歌詞の中では共感だったり逆に反発だったり、聴いてくれた人が感情に結びつきやすい言葉を用いるようになりました。それはやっぱり、頑張ってる地元の友達の存在が大きいかな。社会に出て戦ってる彼らを見て、僕も"ひとりよがりじゃない届ける歌詞"を書きたいと思ったんです。

-ステージに立てば照明で照らされ、歓声を浴びることのできる職業ですし、ファンの方の人数もどんどん増えてきている最中かと思いますが、それでも自分が"村人A"であるという意識は抜けないものですか?

10代のころって"俺は人とは違うんだ!"と思って突っ走っていけるんですけど、20代になって"あれ、もしかして俺って普通の人間なんかな"って不安になっていくと思うんですよね。そんなとき、それを認めたうえで歩いていくのか、認められずに立ち止まるのか。また認めたいけど認められないとか、認めたうえでどうしたらいいんだ? とか白と黒だけじゃ難しい部分もあって。「リレイズ」ではそうした前に進もうとしても進めない気持ちを描きたいと思いました。僕は"村人A"だからこそ、人に寄り添った音楽を届けられると思っています。でも、それを認めてしまった自分だからこそ差を感じる瞬間が怖いし、逃げたくなっちゃうんですよね。今まで"きれいなもの"で歌詞を作っていたけれど、「リレイズ」ではそうした弱さとか後ろ向きな感情も歌えるようになったことで、よりリアリティが生まれたんじゃないかと思います。

-今作のリリース・ツアー"BOYS END SWING GIRL TOUR 2017 「CLOCK」"に懸ける意気込みを聞かせてください。

今回は仙台、大阪、名古屋、東京と4公演あるんですけど、東京以外はほぼ『TRANCE』ツアーぶりなのですごく楽しみです。歌モノバンドだけれど、やっぱりライヴハウスが勝負の舞台なので"ライヴの方が断然いいね!"と言われるバンドでありたいですね。特に「ナスカ」はステージでみんなに向かって歌うことをイメージして作ったので、早く歌いたいです。新しい曲たちがライヴでどんな顔を見せるのか楽しみにしてもらえたらと思います。

-3部作も完結しましたし、今後の展望についてひと言お願いいたします。

やりたいことは数え切れないくらいあります。フル・アルバムもそうだし、コンセプト・アルバムだったり。歌詞やアレンジ面でも新しい芽を出したのが今作だったので、次回はそれを円熟した形で且つ新鮮味も出せるように挑戦していきたいです。青春三部作を経た僕たちが次にどこへ向かっていくのか、自分でもすごく楽しみにしています。

-"全年齢対象"を謳いながら"王道のギター・ロック"を鳴らすことって、つまりはピンポイントで"この層を狙おう"という想定しているわけではないということですし、それゆえの難しさがあるんじゃないかと思います。そのうえでBOYS END SWING GIRLというバンドはどのように攻めていこうと考えていますか?

好きな音楽を、好きな人たちと、作り続けていく。それを芯に置いて忘れないようにしたいです。もちろんその先で大きなステージを見据えて活動を続けていくんですけど、今は目の前のひとりひとりに精一杯音楽を届けることが、遠いようで一番の近道なんじゃないかなと思ってます。日々生活していくなかで、10代に届けたいメッセージもあれば、大人になった友達に届けたい気持ちもある。それはこれからも日々変わっていくと思うし、だからこそ自分がそのとき思ったことや感じたことをそのまま歌にしていきたい。全年齢対象っていうのは、きっとそういう意味もあると思ってます。それが誰であっても、どんな年齢でどんな性格であっても、変わらず信じるものを歌うことでこれからも音楽と、そして人間と、向き合っていきたいです。それがこの7年間でやっと辿り着いた僕の答えだと思います。