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INTERVIEW

Japanese

キノコホテル

2017年06月号掲載

キノコホテル

Member:マリアンヌ東雲(歌と電気オルガン)

Interviewer:岡本 貴之

-こういうシンプルなロックンロールとは対極にあるのが、14分くらいの長尺曲「風景」(Track.10)だと思うのですが、三線が出てきたりスチール・ギターが出てきたり、途中からアフロ・ビートになったり、すごい展開ですよね。

この曲だけで何ヶ国か旅行できる感じ。もともとオリジナル曲にはギターのフレーズとかスケールにやや琉球音階的な持ち味があるんですけど。今回は露骨に島太鼓と三線を入れて、もう沖縄の人に笑われますね、これは(笑)。その裏にハワイ風のスチール・ギターが鳴っているという。どちらも南国だから良し、ということで。次のセクションの繋ぎを波の音にしてみたりと、思いつくままに好きなようにやりました、この曲は。

-タイトルの"プレイガール大魔境"を考えると、この曲はクライマックスのようにも聴こえますが、ストーリー性というのは考えて曲順を決めましたか?

そうですね、若干。アルバムの冒頭で離陸して、目的地も何もわからないけど"とりあえずあんたたち行ってらっしゃい"って感じで始まって。ミュンヘン・ディスコ調だったりオリエンタルだったり、フレンチ・ポップだったり、「荒野へ」(Track.6)なんかはちょっとジャズ風の方向に持っていってますけど、より曲の世界観に沿うアレンジというか、非常にわかりやすくなっていると思うんです。それぞれ異国情緒があったりスペ―シーだったり、ひとつひとつの持ち味が強くて他と被っていないので、そういう意味では旅している感があるというか。それで散々いろんなものを見てきて、スコーンと目の前に海が見えてきて、"ちょっと疲れたからひと休みしよう"ってのんびりしているんだけど......。

-10年間のキノコホテルの活動と重ね合わせて聴くのもいいのかなって。

上級者の聴き方(笑)。まぁ10年間やってきたんですけど、それまでは自分もただの音楽が好きな女の子だったわけで、やはりそのころに耳にしてきたものが、自分の個人的な集大成になっているなというのはあるんですよね。もちろんイコール、キノコホテルの集大成なんですけど、私個人の趣味とか遍歴が非常に出ている気がするんですよね。自分が好きなものを全部ぶっ込んだ、闇鍋みたいな感じですね(笑)。

-「荒野へ」は、アーバンギャルドのおおくぼけいさんがピアノで参加していますね。マリアンヌさんご自身が弾くのではなくゲストを入れた理由はなんですか?

私は電気オルガンを弾いてますけど、生ピアノはてんで弾けない人なので。でも「荒野へ」は、アレンジの骨組みを考えたときに"ピアノしかない"って思いついたんですよね。なので、自分の中で勝手におおくぼ君にオファーするって決めて、まだ本人に打診する前から"これ、おおくぼ君呼ぶから"と従業員の3人にも宣言して。実際に彼は快諾してくださりました。彼のピアノありきというか、外部のプレイヤーにいっそ身を委ねてみるというのは、キノコテルとしては今まで避けて通ってきた道なんですけど、アーバンギャルドとキノコホテルはお付き合いもあるし、おおくぼ君だったら面白いに違いない、と。この曲は彼のピアノがメインなんです。でも、それがとても心地いいというか、アルバムの中で非常に良いスパイスになったと思います。「荒野へ」に関しては選曲の段階でアレンジのイメージは何となくできていて。あえてギターを入れなかったあたりも、キノコホテルとしては新しいんですよね。4人のメンバーだからって必ずしも4人でやらなきゃいけないわけではないですから。かといって何でもかんでも外部から人を呼んでお願いするのも違うので。この曲はいいバランスで持っていけたと思います。

-ラストの新曲「惑星マンドラゴラ」(Track.11)は"完全未発表曲を発掘して録音したもの"ということですが、いつごろの曲なのでしょうか。

一応、原案とか自分で作った打ち込みのオケとか構想はあった曲で。ただ、自分が歌うというよりはかわいいアイドルに提供するコンセプトで作った曲なんです。

-前作に収録の「流浪ギャンブル」もアイドル向けに作った曲だとおっしゃっていましたよね。

そうですね。あれが楽しかったのかもしれないですね。でも今回の曲に関しては、カマトトぶってる感じもほんのりありつつ。アイドルと言いつつ、仕上がり的には80年代っぽいんですよね。ピンのトップ・アイドルがたくさんいた時代。だけど歌詞を見ると、今の世の中にちょっと疲れちゃった女の子みたいなニュアンスも持ちつつ。なので、明らかに自分のために書いたものではないんです。

-たしかに、"有り余るインフォメーション"とか、すごく今の時代を反映した歌詞になっていますよね。10年前と今ではSNSの浸透とかリスナー環境も激変していると思いますが、マリアンヌさんご自身には影響がありますか?

ないですね。自分も普段そういうものに毒されないで生きようと思っているので、あまり知らなかったりするし。"今SNSでこんなものが流行っている" なんてお友達から回ってきても、どうもピンと来ないというか、乗っかってあげられないことが多いんですけど(笑)。まぁ、あまり意識はしたくないですよね。そういったものの恩恵を知らず知らずのうちに受けていることは多々あるんでしょうけど、毒されるのは嫌なんです。

-音楽面では、クラシックなことをやっているようでいて、実はそうじゃないのがキノコホテルですよね。

出てきたときは本当に、昭和レトロみたいに思われるようにわざと自分で仕向けていた面もあったんです。まぁ、根本的にはそういうものがベースにあるのは確かなんですけどね。子供時代に触れたクラシックに始まって、そこにGSとか歌謡曲とかニュー・ウェーヴだとか、キッチュな要素が融合するとキノコホテルになるんでしょうね。世代も国も問わずに私が好きな様々な素材が渦巻いているというか。

-このアルバムの様々なアレンジを聴くと、マリアンヌさんは単純に音楽がすごく好きで、曲を作って演奏することが好きな人なんだろうなって。

ふふふふふ。なんだかんだで(笑)。そもそも、末長く頑張ろうとかメジャー・デビューしたいとか、そういうものもなく始めたわけですけど、今となっては音楽を作って作品を出して人前で演奏するという日常化した行為が、意外と自分の中でフィットしてくるものなんだなと。もしかしたら、それなしの生活が考えられないくらいになっているのかもしれないし、でもあんまりそれを認めたくない自分もいたりして。どうしても捻くれ者なもんで(笑)。まぁ、楽しいと言えば楽しいですよね。今回も誰も悪い意味での口出しをしてこないもんですから、アレンジにしても何にしても、うちのマネージャーもレーベルの方も丸投げなので(笑)。ただそれは信頼していただけているからなんだと、半ば強引に前向きに捉えて、作品づくりに没頭することができるので。そういう意味ではキノコホテルがキノコホテルらしくやれる環境ではあるのかも。