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INTERVIEW

Japanese

Charisma.com

2017年03月号掲載

Charisma.com

Member:MCいつか

Interviewer:石角 友香

"現役OLによるラップ&エレクトロ・ユニット"というカテゴリーを抜けて、360度アーティストとして生きる道を選んだCharisma.com。そして完成した、メジャー・デビュー後初のフル・アルバム『not not me』は、メジャー/インディーズやJ-POP/ラップ/ヒップホップ、踊れる/踊れないといった境界線を軽々と越える現在進行形の東京のポップ・ミュージックの先鋭が凝縮された仕上がりに。MCいつかの書くリリックは相変わらずの攻撃性を含みながら、自分にも放った矢が刺さらないとも限らない切なさと痛みが巧みに忍ばされているのも、表現として深い。さらに無二の表現者になりつつあるMCいつかにこの意欲作について訊いた。

-トラックメイキングに直接関わり、アーティストとして踏み込んだ表現を始めたアルバムですが、全体的なイメージはありましたか?

音数はとりあえず少なめで、最低限な感じがいいですっていうのは、今作に関わってくださったみなさんに始めの段階の打ち合わせでお話ししました。今までがむしろ隙間のない音数の多さだったから、変化をつけるにはそこから真逆なものをやった方がいいと思ってたので。

-ヒップホップやR&Bも潮流として音数は少ないし。日常的に好きなモノの影響は?

洋楽のヒット・チャートをたまにYouTubeとかで見るんですけど、それこそRihannaの曲とか、"これ、いくつ音を使ってる?"っていう。展開もあんまりないし。そういうのを聴いて、"あ、こういうのでもラップをしたら、ラップが引き立つかもな"みたいなイメージがありました。

-ところで気になるのはアルバム・タイトルです。

私じゃないっていうのをさらに打ち消して、結局、私ですっていう。"私じゃない"って否定したいけど、結局自分だって気づいている感じを出したかったんです。

-世の中のアラサー女性に普遍的に当てはまる内容が多いですね。

はい。結局、働いてても働いてなくても、子供がいてもいなくても、この年頃の漠然とした不安みたいなものは、知り合いの方とかと話してると見え隠れすることが多いので。

Tokyo RecordingsPABLO a.k.a. WTF!?さんなど、旬なクリエーターも参加してます。

私、BOMIちゃんが好きなんですよ。BOMIちゃんの新しいの(2016年リリースの3rdアルバム『A_B』。Tokyo Recordingsプロデュース)もなんですけど、1作前(2015年リリースの『BORN IN THE U.S.A.』)の「さよならミゼラブル」とか、CDにはなってないんですけど、「Y.O.U」(2015年に"BOMEN(お面)"、レコードのみでリリース)って曲が特に好きで。"誰が作ってんだろうな?"と思ったらPABLO君だったんです。それで、1曲お願いしたいなって話をディレクターさんとして。見た目とか存じ上げてなかったんですけど、打ち合わせのときにビーサンで登場したんです(笑)。

-何月に?

夏ぐらいだったんですけど、"おおっと?"と思って。しかも始めっからフランクだったので、"ええっ?"って。BOMIちゃんが歌ってる楽曲とPABLO君のキャラのギャップがすごくて、違う人に連絡したんじゃないのか? と思ったぐらいでしたね。

-「#hashdark」(Track.1)の作業は、具体的にはどんなふうに?

打ち合わせしたあとに、こういうイメージでこういう感じの曲がやりたいです、みたいな話をしたら、トラックを上げてくださって。で、メロディもちょっとつけてくださって、それに歌詞を乗せてから、PABLO君の家に行って、"こうだね、ああだね"みたいなやりとりをしながらデモ作りをしてから、本番のレコーディングに挑みました。

-リリックに対して、曲からインスパイアされた部分は多いですか?

多いですね。このトラックだと歌詞の乗せ方は、今までの直球で投げるみたいなやり方はなんか合わないなと。切ない感じを出したいっていうのが、今回お願いした方のトラックは多かったです。

-切なさという意味では、"#it's my world/#it's my love"の部分のリフレインはまさにというか。

これ、知り合いがInstagramに"そこまでやっちゃうと自虐的だけどね"みたいな載せ方をしてて。それを肯定してほしいのか、一緒に否定して笑ってほしいのか――"Instagramに上げなきゃ"というより、上げて肯定してほしいのも見えるし、でも自分では肯定できないから人にどう思ってるのか聞きたくて、遠回しにInstagramで発表して、でも間違ってるかも、っていうのに気づいてるっぽいのが見ていられなくて。

-単なる承認欲求でもなくなってきてるのかもしれないですね。

はい。"いいね!"を押してもらっても、"うん!"とも思ってないよね? みたいな。それに対して、"危ないな"っていう。何がいいのかわからなくなってるんだなと思います。

-"it's my world=これが私の世界"にも"#"はついてるわけですね。痛烈です。

そうなっちゃう気持ちもわからなくないけど、そういうんじゃなくない? と思って書きました。

-だからタイトルも"#hashdark"に?

最初は違ったんですけど、一応、映画(※同楽曲が主題歌に起用された"暗黒女子")にかけて。もともと、デモの段階で気に入ってくださっていたので、曲自体は書き下ろしじゃないんですけど。