Japanese
Charisma.com
Skream! マガジン 2017年06月号掲載
2017.05.03 @赤坂BLITZ
Writer 蜂須賀 ちなみ
昨年11月、OL引退宣言を発表したCharisma.com。今年3月にはメジャー1stフル・アルバム『not not me』を満を持してリリースし、その後、全国7都市に及ぶ全国ワンマン・ツアーを開催した。その中から、以下のテキストではファイナルの赤坂BLITZ公演をピックアップ。どこまでも痛快に、そして誰にとっても開かれた存在へと進化していくMCいつか&DJゴンチによるエンターテイメントの形に迫っていきたい。

定刻になると、ギラギラ輝く衣装を纏ったいつかとゴンチがそれぞれ下手と上手から登場。背中合わせでポーズを決め、1曲目「Like it」に突入すると、TEMPURA KIDZのメンバーがダンサーとしてゾクゾクと加わっていくオープニングだ。"よく来たね、ゴールデン・ウィークの最中に。とんだアホどもだ、よろしく!"、"Charisma.com、初めて観るって人?(何人か挙手したのを見て)くだらない人生を送ってきましたね! ウソウソ、ありがとう!"といつかは早速最初のMCからオーディエンスをいじってみせる。高速手拍子が起きた「YAJIUMA DANCE」、シンガロングが響き渡った「メキメキmore」などアルバム収録曲をオーディエンスと共に分かち合いつつ、ふたり揃ってMPCを使いながらDJタイムも展開。いつかの"ゴンチもラップやってみようか"という流れで突入した「classic glasses」では、いつかのラップと掛け合うようにゴンチが携帯アプリからサンプリング・ヴォイスを流すなど笑いどころも挟みつつ、後半戦に差し掛かったところで8人組インスト・バンド、カルメラが登場。いつかがウェディング・ドレス風の衣装で現れた「婿においで」から「もや燃やして」までの本編5曲、そしてアンコール・ラストの「アラサードリーミン」は、ビッグ・バンドを従えた豪華な編成で届けられたのだった。

駆け足で振り返ってしまったが、ダンサーやバンドを迎えた形式でのパフォーマンスはこれまでよりも多彩に、楽しく、スタイリッシュで、自由に。そして演奏時以外のふたりのラフなテンションは相変わらず。つまり締めるときは締める、緩めるときは緩める、のコントラストが非常にはっきりとしていたのが今回のツアーの特徴だろうか。その背景にあるのはやはりアルバム『not not me』の存在である。まず、同作誕生の背景には、Tokyo Recordingsやハマ・オカモト(OKAMOTO'S)、蔦谷好位置など、ジャンルを問わない豪華な顔ぶれがプロデューサーとして名を連ね、各曲のイメージを増長させる(あるいはまったく異なるものに化けさせてしまう)ような邂逅がいつかとの間で行われていた。その結果、サウンドはより先鋭的に、且つバリエーション豊かに。曲が持つカラーの種類が増えたことによって、パフォーマンス面での選択肢も増えたのだろう。その象徴が例えば、ミュージカルから飛び出してきたような「婿においで」や、雨だれのような照明の下でいつかがしっとりと歌い上げた「not not me」のようなアプローチだった。
そうして全方位的に進化を遂げたパフォーマンスは、もちろんいつかとゴンチのふたりだけの力で成し遂げたものではなく、ゲストのTEMPURA KIDZとカルメラ、レーザー・アニメーションを手掛けたhuez、吉川マッハスペシャルや、その他スタッフ陣も含めたクリエイティヴィティの結集によるものである。アルバム『not not me』は"私じゃない、じゃない=私です"とアルバム・タイトルが象徴するように"Charisma.comなりの人間讃歌"と言うべきメッセージ性を伴っていたが、DJにダンスにバンドに映像に......と多種の表現がせめぎ合い響き合い続けた実際のステージ上でも、そのメッセージ性は貫かれていたと言えるだろう。単なる毒舌に終始することなく"その矛先が自分に向かう恐れがある"という事実をもクールに暴いてしまうCharisma.comは、基本的に、他人に厳しいが自分自身に対してはもっと厳しい。だからこそ、その表現が突き詰められていくほど、私たちはステージに魅せられるばかりではなく、ビシッと背中を叩かれたような気分にもなる。そうしてライヴハウスを出るころには"明日からも頑張ろう"と日常に対する前向きな意欲を取り戻すことができるのだ。
OL引退、そしてアーティストの一本道へ。その決断はユニットの個性を減らすためのものではなく、可能性を増やすことを目的としていたことは今のふたりを見ていれば明らかなことである。射程範囲は広がるばかり。ここからまた、新たな物語が始まっていくような予感がした。

[Setlist]
1. Like it(w/ TEMPURA KIDZ)
2. Chicken boom(w/ TEMPURA KIDZ)
3. ジェンガジェンガ
4. NOW
5. スーパーガール
6. YAJIUMA DANCE
7. メキメキmore
8. classic glasses
9. 意地easy
10. ミイラキラー(w/ TEMPURA KIDZ)
11. カルメラ楽曲(w/ カルメラ)
12. 婿においで(w/ カルメラ)
13. Lunch time funk(w/ カルメラ)
14. だったらshow me(w/ カルメラ)
15. #hashdark(w/ カルメラ)
16. もや燃やして(w/ カルメラ)
17. 100%ブービー
18. HATE
19. イイナヅケブルー(w/ TEMPURA KIDZ)
en1. not not me
en2. アラサードリーミン(w/ カルメラ)
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