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INTERVIEW

Japanese

chocol8 syndrome

2016年12月号掲載

chocol8 syndrome

Member:しゃおん(Vo) ケンコモブチ(Key/Vo) クロちゃん(Ba) 奏(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-先ほどの犬のエピソードもそうですけど、もともと人柄重視でメンバーを集めてるから、日夜一緒にいるのも苦じゃない関係性になれるのかもしれないですね。

奏:そうですね。僕はみんなのことを信頼してるので。

-では、音源の話に移ります。まずTrack.1の「エウロパ」はバラードですけど、この曲を表題曲に持ってきたのが意外だなと思ったんですよね。『8』は"ライヴで活きる曲を"というところに照準を合わせて作ったアルバムだったじゃないですか。

奏:そうですね。ツアーを回っていくなかで、"一緒に楽しもう"っていうスタンスでずっとやってきてたんですけど、自分らの中で伝えたいこと――感謝とか、バンドとして経験してきたこととか――がどんどん出てきて。そういうメッセージを込めた曲を1曲書きたいということから、この曲は始まりました。

-「エウロパ」は作詞がしゃおんさんです。

しゃおん:"エウロパ"っていうのは、生命がいるかもしれないと言われている星の名前なんです。実際に生命がいるかどうかはわからないけど、ロマンを感じていて。そのときめきと、自分の中にある未知の可能性に対する不安を掛け合わせて書いてみました。あともうひとつ意味を込めたんですけど――前の取材でも言ったように、私は不登校だった時期に音楽に触れてこの道を目指すようになったんですけど、その当時はアーティストって身近な存在じゃなかったんですよ。ライヴはお金を出して行くものだし、CDはお金を出して買うものだし、"お前頑張れよ"とか言ってくれるような身近な存在では決してない。アーティストは私がライヴに行ったって覚えてくれるわけでもないけど、遠くにいるその人の頑張りを見ているだけで、自分も元気をもらったり頑張れたりする。それは、一生会えないであろうエウロパの生命に対して私が感じているものとリンクする部分があるなぁと思って。

-しゃおんさんが書く歌詞は全体的に孤独ですよね。

しゃおん:今でこそ、こうやって日夜一緒に夢を追ってくれるメンバーがいるので幸せなんですけど、当時は本当に孤独だったんですよね。それこそ学校と家族が怖かったので。

-その話はもう少し詳しく聞いても大丈夫ですか?

しゃおん:はい。お母さんがすごく情緒不安定な人で、外に出ると叩かれたりすることがあったんですよ。でも普通に学校に通えてたし、全然引っ込み思案でもなかったんですけど、中学校1年生ぐらいから友達と関わることが怖くなっていっちゃって。最初は軽い気持ちで学校を1週間休んで、"もう休んだから次から頑張ろう"って思って行ってみたら、いつもわかってた勉強がわからなくなってたんです。(先生に)当てられて、そのとき初めて"わかりません"って言ったんですけど......それが自分の中ですごく恥ずかしくて、人に自分のことを見られたくないって思うようになってしまって。それで学校と家庭が怖くなって、逃げ場がなくなってしまって、最終的に部屋から出ないほどになったんです。部屋から出ないから孤独だったし、ひたすら携帯で動画を見たりSNSをやったりしてました。だからそのときは音楽だけが心の拠り所だったし、唯一外に出られたのが好きなアーティストのライヴを観に行くときでしたね。そのときの経験が心の支えになって今頑張れてるから、「エウロパ」にはそういうメッセージを込めたというか。"いつも勇気をもらいながらこっちで生きてるよ"っていうのをこっちから話しかける、けど伝わらない、っていうもどかしさのある曲なんです。

-この詞を読んで、作曲担当のケンさんはどう思いましたか?

ケン:僕はこの詞をもらってから曲を書いたんですけど、最初に読んだときは命のことが書かれてるのかなって思って......。

しゃおん:意思疎通が図れてない(笑)。

ケン:まぁ最初の段階だから(笑)。でも、宇宙とか星のことが描かれてることはわかったので、壮大できれいな感じにしたいなと思いました。でも、その対比としてやっぱり現実とか自分があって......というのをどう表現しようか考えて。それでイントロはキラキラした感じにして、夜空のシーンから今の自分へ、みたいな切り替えを表現しました。

-Track.2の「Why don't you?」は打って変わってダンス・チューンですが、音の引き算ができているアレンジで、これまでのアッパー・チューンよりも大人っぽいですよね。今までのchocol8 syndromeにはなかったタイプの曲ですが、例えば"次はこういう曲を出したいよね"みたいな方向性はバンドで話し合って決めてるんですか?

しゃおん:"こういう曲が欲しい"みたいなのは、常日頃ケンさんに対してみんなで言ってますね。

奏:あくまで作曲者はケンなので、僕らは口出しできないんですけど、そういう曲ができるようにちょっとずつ仕向けるというか(笑)。ご飯を食べながら"最近、バラードの曲があんまりないよね~"みたいな感じで。

しゃおん:ツアー中の車内で"こういうブレイクの曲、うちにはないよね~"って言ってみるとか。

クロちゃん:決して直接的には言わない(笑)。でも、そしたらめっちゃブレイクが入ってる曲を作ってきてくれます。

-その方法、直接指示されるよりも逆にプレッシャーがかかりませんか(笑)?

ケン:でも、やっぱりみんなが言ってくれることは自分たちの曲に足りないところだし、どんどん取り入れたいなとは思うんで。

奏:(笑)どっちの方がいい? 直接的に言った方がいいの?

ケン:どっちでもいいよ(笑)。

-Track.3「向日葵」はヴォーカルとピアノのみによる演奏です。

奏:僕がこの曲をふたりでやろうと決めたんですけど、やっぱり、ヴォーカルとキーボードだけでどこまでやれるのかっていうのを一度試してみたい気持ちがありました。バンドの音を消してそのふたつだけの音が残ったときに、本当にいい曲になるのか、みんなに好きになってもらえるような曲になるのか、っていうのを含めて。あと、ライヴのオファーをいただくときって全員揃ってできることがすべてじゃなくて。そんななかで、例えばしゃおんひとりで歌いに行ったり、ふたりで動いたり、自分らの中での新しい形が生まれたんですね。いろいろなアレンジを作っていきながら、たくさんの道を模索していけたらいいなと思ってます。今はチャレンジ期間です。

ケン:うちはやっぱりワイワイする曲が多くて、そのなかに突然バラードが入ってくると落差が激しいので、二面性というか、別のものを表現してる感じでした。なので、歌詞はちょっと暗めだけど――

しゃおん:でも前向きだよ? というか、綺麗事を並べるような歌詞があんまり好きじゃないんですよ!