Japanese
瀧川ありさ
2016年09月号掲載
Interviewer:吉羽 さおり
-ちょっとしたつぶやきも、あまり残したくない?
うん、それこそ何か言われるのが怖いのかもしれない。音楽で何かを言われるのは怖くないんですけど、SNSに書いて突っ込まれる方が怖いんです。そこはビビりなんですよね。でも音楽があると全然違うというか。
-何の違いなんでしょうね?
うーん。音楽に関しては、これしかないなってある程度覚悟しているところが、いい意味でのパンチになるというか。
-自信になってる。
SNSだとみんな平等に権利があるから、誰でも評論家みたいになってしまうところもあって、ある意味みんな強気っていう感じもありますよね。私、そういう気の強い人たちが苦手で、言い争いも苦手だし、意見の対立とかもしたくないんです。ああいう場では穏便に過ごしたいんですよね。でも、そういう人も多いと思うんです。「色褪せない瞳」(Track.1)で歌っていることもそうですけど、そういう中で思うことが言えなかったり、踏み出すことが怖くなって、かしこまってしまう自分ができあがったりすることもあると思うんです。
-どんどん自分を出すことができなくなってしまう。
私には音楽がありますけど。聴いてくれている人がそれぞれ、自分の人生の中で、私で言えば音楽に当たるような存在がひとつでもあればと思って。今そういうものがない人も、きっと幼少期を振り返ってみたり、"自分は何が楽しくて嬉しかったか"とかを掘り下げてみたりしていけば、灯台下暗しのはずなんですよね。そこを忘れないでほしいなっていう思いも込めて、このカップリング曲の「Goodbye,I love you」が書けたと思うんです。
-例えばネガティヴな気持ちがあったり、心がカオス状態になったりして、そんなところから歌が生まれてくると思うんですが。そのままのネガティヴな言葉が歌に乗るわけではないですよね? 歌や音楽を汚さないようにしてるのをすごく感じるんです。
そうですね。絶望を歌いたいわけではないんです。結局、暗闇でも光に向かって思考してると思うので、一筋でもその光が入れられたらと思うんです。それが、自分の曲を書いている感覚に近いかもしれないです。
-曲を書くことって、その光を辿っていく感覚なんですね。書き上がったときは、"出口が見えたな"って気持ちもあるんですか?
こうして曲ができあがってリリースするんですけど、そこは意外と、みなさんの前に立たないとわからないところがあるんですよ。自己満足できないっていうか。もちろん、書き上がったときは書けたなって思うんですけど、結局その良し悪しはみなさんが判断するところなので。自分では、めっちゃ良い曲って思っていても周りがそう思わないことが多かったり、どうかしら? と思ってる曲ほど受け入れてもらえることが多くて。そこは私の特質かなと思うんですけどね(笑)。なので、逆に自己満足しないようにしてます。
-どうかな? っていう思いもまた、本当だからかもしれないですね。ちゃんと相手が見えているからこそ、悩む。
そこがメジャーでやっている意味なのかなと思いますし。じゃなかったら、自己満足でもいいと思うんですよ。誰かにプレゼントをあげるにしても、"これ絶対あなた嬉しいでしょ?"ってあげないじゃないですか(笑)。
-たしかに、ちょっと不安はありますよね。
"どうかな、どうかな"って思う、ほんとそんな感じなんです。
-もう1曲のTrack.2「anything」は、打ち込みでまた雰囲気の違う良い平熱感ですね。
表題曲がまっすぐなぶん、「anything」は内々な気持ちというか。歌詞も部屋の中ひとつで完結しているような小さな世界で歌って、どんな自分が出てくるかを試してみたかったんです。安心したいなと思って(笑)。大きなことを歌っていると、時々不安になるんですよ。この曲が、「色褪せない瞳」と「Goodbye,I love you」の間にあることで、自分の心のバランスが取れる気がしていて。
-半径1メートルくらいの感覚ですもんね。
あえてパーソナル・スペースを狭くして、どんな自分が出せるかに挑戦していますね。表題曲やタイアップありきとはまた違ったまっさらなときに、何を歌えるのかというのは自分でも知りたかったんです。書いていても、どうなの? って自問自答をしていたかもしれない。
-考えるというよりは、向き合うという感じですね。
今の本音ってなんだろうと考えたときに、今はとても狭くて、その半径1メートルの気分なんです。もちろんみなさんの前に立つときは広がっていくんですけど。同じ家の中にいつつ、「色褪せない瞳」を書いたりしているんですけど、それは想像でしかないというか、見据えたものでしかない。でも「anything」に関しては想像じゃなく、"より自然体"みたいな感じで、本当の自分の心の中が書けたかなというのがあるので。サウンドも背伸びをせず、今の自分にしっくりくるものになっていますね。
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