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INTERVIEW

Japanese

コンテンポラリーな生活

2016年06月号掲載

コンテンポラリーな生活

Member:朝日 廉(Vo/Gt)

Interviewer:石角 友香

-すごくかっこよくてオシャレなコード進行で。

そうなんですよ。BUMP OF CHICKENに「かさぶたぶたぶ」(2007年リリースの5thアルバム『orbital period』収録)って曲があるじゃないですか?"聴いてくれるかな?"と思ったときに、ああいうちょっと話のネタになるような、今回で言えば"唐揚げ"みたいなものを歌詞にしたら聴いてもらえるんじゃなかろうか?と思ったんです。曲を聴いてもらうために、歌詞でバランスをとりました。

-ま、「かさぶたぶたぶ」には理由がありそうですけどね(笑)。

「かさぶたぶたぶ」はなんなんでしょうね? いちリスナーとしては、ああいうちょっと引っかかりのある曲は、パワーを感じてくれるのかな?と思ってます。

-朝日さんの場合、シンガー・ソングライターじゃなくて、コンポーザーの部分もプレイヤーの部分もプロデューサー的な視点も歌詞書く人の部分も、いい意味で分かれた発想ですよね。

これ、前にレーベルメイトのじんさんと話になったんですけど、僕、ボーカロイドで曲を作ってたじゃないですか。動画の再生回数、お気に入りに追加された数とかがポイントになって、それをもとにランキングが決まるんで、曲の優劣はわからないですけど、人気の優劣は毎日毎日、ボボボボンッて並べられるんですね。その中でヴォーカルにほとんど差異がなく、歌の強さに一切頼らずに曲と歌詞だけでランキング上位に行かなければならないというところで2~3年間ずっと曲を作ってきて。そういう当時の考え方は今も根付いてて、歌の抑揚とかじゃなくちゃんとメロディで盛り上げられないと、ちょっと足りない気がするんですね、腑に落ちないというか。だからメロディや歌詞の提示で、曲の良さを出せないとダメで。そういう経験は今、バンドにとってプラスになったかはわからないですけど、作詞家とコンポーザーと、それを俯瞰で見る、反応を見る人格とが分かれた考え方っていうのはそこで培われたのかな?と思います

-反動でバンドのエモい部分を出す人もいるんでしょうけど、だからって人自体が変わるわけじゃないんだなと思います。

そうですね。「化け物になれば」は人が歌わなければ意味のない曲にはなってるんですけど。そういう中でもちゃんとメロディをこうしよう、歌詞をこうしようという、勢いだけじゃなくて、メロディの良さを考えようって、熱くなりながらもある時点ではクールに見てやれたのかなと思います。

-ところで"化け物"って特殊なカリスマを持った人を指しているんですか?

ZAZEN BOYSのライヴを観たんですね。そのとき、みんなステージ上では一種の音楽のパワーをまとった謎の物体になってるんだろうなと思って。そういう意味での化け物。で、知り合いのKANA-BOONとかレーベルメイトのじんさんとか、チャートのベスト10に入るようなアーティストで。周りからのいろんな重圧と戦いながら創作に四苦八苦してるのを見てると、なんか化け物になるってこういうことなんやろうなぁって思ったんです。ある強い力を手に入れるけど、強くなりすぎると戻れなくなる。そういう部分を持ってるんだろうな、でも片足を突っ込んでしまったしやるしかないんだろうなっていう意味が込められたタイトルなんですよ、この"化け物になれば"って。憧れと、ちょっとの怯えと恐ろしさと、ライヴに対するパワーっていうところですね。

-なるほど。最後の「虹がかかったなら」(Track.7)はこれこそ素直の極致というか、ネイキッドな弾き語りで。

この曲はいろんな方向にとっ散らかった6曲を一手に面倒を見てくれるマザーです(笑)。"この曲の手のひらの中で暴れなさい"みたいな。すごく素直な曲が、最初と最後に欲しかったんです。メロディに関しては自分の中で、今、変換があって。変なメロディをやるときは変なメロディ、その代わり、こういう素直な曲をやるときは"1回聴いたことがあるんじゃないか?"っていうぐらい普遍的なメロディの曲を1曲やりたいなと思ったんですよ。僕、いつもはメロディを作るときに出てきたものをあえてハズすんですね。素直に出てきたものをちょっといじって予想外のところにリズムを落とし込んだり、メロディの動きを予想外のところに落とし込んだりして。素直は嫌だっていう気持ちで作ってるんですけど、「虹がかかったなら」はすっと出てきて、一番優しいところに収まるっていうのを変に抵抗せずにちゃんと最後までやろうとしてできた曲なんです。だから"素直な曲"っていうのは間違ってなくて、そういう曲やからアルバムの最後に置いて、ちょっと尾を引く曲になれたかな、と思っています。

-そして現在、バンドとしては朝日さんと藤田さんのふたり体制になったわけですが、コンポラの見え方の理想はありますか?

メンバーが変わったっていうことにショックを受けた人もいると思うんですけど、僕ら自身はそれに落ち込んでしょぼしょぼして、"もう辞めます"ってなるわけにもいかないんで。思い入れみたいなんが、僕らよりお客さんの方が強い気がするんですよ。歌詞のミスとかもお客さんが気づいたりするじゃないですか。そういう思い入れにも負けないような、最終的な形に収まればいいなと思ってます。

-ライヴでの朝日さんの存在感っていうもの自体は変わらない気もします。

いや、以前は演出しようとしてたんですよ? でも、今は曲に肩を預けてむき出しのライヴをやっていこうと思っていて。それは楽しみにしていてほしいなと思うばかりです。