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INTERVIEW

Japanese

コンテンポラリーな生活

2015年10月号掲載

コンテンポラリーな生活

Member:朝日 廉(Vo/Gt)

Interviewer:石角 友香

バンドがパワーアップしている中、ドラムの酒井俊介が一時的にコンポラを離れるというアナウンスには正直驚いたが、今、フロントマンでソングライターの朝日廉にはバンドがひと皮むけるためのヴィジョンがあるようなのだ。トレンドに左右されないだけじゃない、曲の良さとそれを引き立てるシンプルな音像。そして前向きとか後ろ向きとか割り切れない気持ちを乾いた筆致で描いた歌詞に、今のコンテンポラリーな生活がそのまま現れている。

-まず、レコーディング直後に酒井さんの活動休止が発表されて、せっかくバンドとしてパワーアップしてきた矢先なんで驚いたんですが......。

このEP『ヤンキーガール』は全曲ドラム叩いてるんですけど。まぁ......俺自身も驚いてますけど、今はどうとも言えない状況ですね。長くやってきて共通認識もしっかりあって、やりやすくはあったんですけど。まあ、でも酒井のことは、とりあえずとにかくいろいろあってやむなくって感じだったんです。じゃあここからも仕方なくズルズルやるのか?っていうとまたそれも違う感じで。俺はいろいろ機会があるんですけど、藤田がこのコンテンポラリーな生活をやってた7年間、酒井以外のドラムとやる機会がなくて。酒井も藤田もだいぶ特殊なクセを持ったリズム隊で、俺は若干、悪いクセと思ってたんですよ。でも俺が直せる機会もなかなかなくて。

-個性と捉えられないと?

サポート・ドラムの上手い方とやることで、ちゃんと個性まで持っていける感じがして。酒井って良くも悪くもクセの強いドラマーやったんですよ。別にそれでよかったんですけど、コンポラやから。でもとりあえず上手くてしっかり叩ける人に頼もうと思ったら、藤田がどんどん意識変わってきて、なんかリズム隊としてひとつ成長するんじゃないかな?っていう前向きな面もあると思ってやってます。

-「ヤンキーガール」は酒井さんが叩いてるんですが、今までと印象が変わった部分で言うと、なんかアナクロさが抜けた感じがします。あと、オルタナ・ブームは終わったのかな?と。

まず、『ポップソングと23歳』(2014年5月リリースのミニ・アルバム)っていう、すごくポップな盤を出して。それで、『ヘドが出る前に』(2014年11月リリースの1stアルバム)っていうちょっと変なアルバムを、『ハスキーガール』(2015年6月リリースのEP)っていう王道なEPを出して。そして次に『ヤンキーガール』っていうEPを出して。今もどこかを目指してたぶん曲たちがもがいてると思うんですよ。でも『ヤンキーガール』は、ちょっとだけ目指してるところに近づけたのかな?って感じがする5曲入りEPで。今言われたことは、もしかしたら目標がだんだん見えてきてるのが伝わったっていうことなのかもしれないです。

-ちなみに『ハスキーガール』と『ヤンキーガール』は連作というか、"ガール繋がり"というわけではない?

一応、繋がりともとれる、ぐらいの。曲的にも微妙にバランスを取ろうとしてて、好きな人は『ヤンキーガール』と『ハスキーガール』を混ぜて1枚にして聴いて楽しんでもいいよ、みたいな。

-ああ、なるほどね。話が主題からそれますけど、朝日さんにとってこの"ガール・タイトル"が象徴するものってあるんですか?

やっぱりなんか"憧れ"じゃないですけど、"ボーイ"って言われても自分のことじゃないですか? あんまり......面白くないんですね。広げようがないというか、ポンって男の子がそこに立ってても別に特に何のドラマも感じなくて。それは俺の偏見なんですけど。なんか物語を広げようがなくて。でも結局女の子は、何を考えてるとか、何が好きとか、何をしたいとか自分は知らないんで。だからこそ何でも歌えるというか、リアルじゃないんで。まあでも、たぶん1番根深いのは僕がたぶんジブリっ子だからだと思います(笑)。ジブリってめちゃくちゃ女の子の主人公が多いじゃないですか? たぶんそこにドラマとかロマンを感じるんじゃないかなと。成長だったり葛藤だったり。ま、自分に近すぎるものやとなんとなくブレーキかかっちゃうというか、自分のことやからリアルにわかっちゃう。だから自分と正反対の存在ならっていうところで。自分がメインの歌詞もあるんですけど、自分目線だと空を飛べなくて。でも、鳥視点の歌詞なら別に空を飛んだり、海を渡ったりできる。だからそういうことがしたかったんじゃないのかなと。一旦自分から離れて曲を書きたかったんじゃないのかなと思います。

-そういうところに改めてこれまで朝日さんが書いてきた歌詞の書き方を見た思いがしました。

たまに書きたくなるんですよね、主人公が自分じゃない歌詞が。

-ハスキーガールもヤンキーガールも女子像は近い気がするんです、ちょっと悪そうな。

我の強そうな。まぁ......一応モデルがあって書いてるんで。2曲とも同じ人です(笑)。

-そうなんですね。Track.1「ヤンキーガール」の彼女みたいな人は、コンポラの楽曲として何を伝えようとしてる人なんでしょうか。

これあんまり伝わらなくてもいいんですけど(笑)、設定みたいなんがあって。ま、別にヤンキーって若者の中では微妙に強い立場だったりするわけじゃないですか。でも結局、その強さを誇示してる人たちの中でも、わりとそういうことに辟易してたり、"もういいのに......"って思ってる人っていると思うんです。でも決して10代の若者ってそこから外れて、映画の主人公みたいに、まあ、ナウシカみたいにひとりで強く生きられるわけでもなく。でも、属したくなくてもどこかに属して生きてるわけじゃないですか? ヤンキーじゃなくても、普通の人でも、根暗な少年少女も。でもどっかで......みんなひとりになるのがゴールではないんですけど、ひとりになったり、もうちょっと自由にスカッとというかもっと小気味良く生きられないものかなと。そういうのはたぶん若い子たちは、漠然としたモヤモヤした不安を抱えてる中で持ってると思うんです。どうにかここじゃないどこかで、もっとスカッと生きていく生き方、みたいなのがあるんでしょうけど、それがどこにあるかわからず。でも"たしかにどこかにはあるんだよ"っていうのをたぶん伝えたいんだと思います。

-それをヤンキーって概念を使って伝えてると。

ヤンキーって根暗な人よりもコミュニティを抜けるのが大変そうな人たちじゃないですか。どのヤンキーも根底には"なめられちゃいけない"みたいな思いがあると思うんです。そこは一貫してると思うんで、そこが伝わればいいかなぐらいですね。でも、その"なめられちゃいけない"っていうのはなかなか厄介な決まりで。ほんとになかなか大変そうな世界ですよね(笑)。

-そうか。じゃあ悪くて勝手やってるようなやつらですら、抜けられないという。

"すら"ですね。で、なんかその中ですごく頑張ってる人がいたり、頑張ってない人がいたり、どこも同じだなというか。なんとなく思うんですよね。

-そういうモヤモヤしたことが主題なのに、すごく乾いた感じがするんですよね。

ああ、たぶん、必死に何かを伝えようとはしてないからですかね。とにかくこういう在り方の、考え方の人がいるんだよってことをただ描いて、それをみんなが見てどう思うか?ぐらいの歌詞の書き方なんで。なんかそこまでドラマをつけないというか。「ハスキーガール」のときはあったんですけど、「ヤンキーガール」に関しては、みんなに勝手にドラマを作ってもらうぐらいの曲なんで、視点はドライかもしれないです。