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INTERVIEW

Japanese

コンテンポラリーな生活

2016年06月号掲載

コンテンポラリーな生活

Member:朝日 廉(Vo/Gt)

Interviewer:石角 友香

-今回の朝日さんの歌詞は、全体的に素直な感じがします。

たしかに今回、全体を通して話したり、話を聞いたりしてる感じがすごいあるなぁって、できあがってから思いました。「かえるくんの冒険」(Track.5)も、"こういう少年がいたんだよ"っていう話を聞かせるような。作ったときは脳内ドーパミンみたいなものがドバドバと出てました。キメッキメの感じは演奏してて気持ちいいんですよね。で、2サビがちょっとアメリカンで、いいメロディなんですよ。この曲は、小説からヒントをもらってて。村上春樹さんの小説で、"かえるくん、東京を救う"っていうのと、筒井康隆さんの"遠蘇魯志耶(おそろしや)"("壊れかた指南"所収)って短編で、この曲は最後、"あとはご想像にお任せ"という感じで終わるんですけど、その筒井康隆さんの短編でも、"ここからいろいろあるけど、もうあとは各自で想像してください"って終わるんですよ。このあと、こんなことやらあんなことやらあるんだって、仔細に書いてもくだらないので割愛して終わるんです。それを読んで"えー?"と思って。

-短編の終わり方としては荒業というか。

江口寿史さんの漫画"ストップ!!ひばりくん!"の最終回ぐらいの衝撃でした(笑)。作者がネタ探しに行ってくるような終わり方で、続きはないんですけど、それを堂々と漫画の中でやってて、"原稿が真っ白だ......やべ、担当がもうそこまで来てる"みたいな話で、結局編集者から逃げ出して終わり。ここまで堂々と逃げ出した人っていうのもなかなか衝撃が大きかったんです。「かえるくんの冒険」はわりとそういうインパクト重視というか、当時、俺が体験した"えー!?"とか、"そんな投げっぱなしってあるんや?"っていうのを、僕らの音楽を聴いてくれる人にも体験してほしいなと思って。

-曲調も出だしは寓話的ですね。

俺、初めてギター触ったのが中学3年生の秋か冬ぐらいで、そこから一丁前に曲を作ろうとしてたんですよ。で、当時は全然音楽を知らなかったんで、"きっとバンドで三拍子をやってる人なんていないはずだ。今、俺が三拍子で曲を作ったらパイオニアになれるんじゃないか?"と思って。そんな僕を倒すことになったのが、くるりの「虹」(1999年リリースの2ndシングル表題曲)で、三拍子というか"ズーンチャ、ズンチャチャ"ぐらいの、"こんな曲があるんだ?"という、まさにカエルが初めて外に出て大海を眺めて、泡吹いて倒れたんですね(笑)。そういう体験談もありつつ、筒井康隆さんや江口寿史さんの作品の破天荒さとか、思春期の俺の驚いたものをポコポコ詰め込んで作られた曲です。

-結末や行く末は描かれてないけど、朝日さんが受けた衝撃はリアルにわかる歌詞になってると思います。

最近、音楽の中で"歌詞"っていうものがどんな優先順位なのか、みんなが聴くうえで、どのくらいの割合で重要視してんのかな?ってすごく考えてて。僕、"石風呂"名義でボーカロイドでも曲を作ってるじゃないですか。で、ギターはほとんど聞こえないぐらいの、打ち込みとシンセばっかの曲を1曲作ったんですよ。それがちょっと物語調の曲で、公開したときに"石風呂のよりもコンポラっぽい"というコメントがついてて。「九龍城にて待つ」(2015年6月リリースのEP『ハスキーガール』収録)とか「レッツゴー外道」(2015年10月リリースのEP『ヤンキーガール』収録)とか、ああいう曲を作ってたんで、"この曲、コンポラっぽい"って。

-そういうフィードバックが?

サウンド的にはシンセサイザーバリバリ、四つ打ち、"ちょっとEDMに影響受けてんじゃねえの?"くらいの(笑)、そんな感じの曲やったんです。でも、そんなんをぶっ飛ばして、歌詞の雰囲気で"コンポラっぽい"と思えるぐらい、みんな歌詞中心で聴いてるのか?って、最近すごく衝撃を受けて。重要視する要素の歌詞が占める割合の高さに衝撃を受けてから今回のアルバムを作ったので、もしかしたらそれもあったのかもしれないです。リード・トラックですごく伝わりやすく、"ドカーンと歌を"ってなったのも、こっちが思ってるよりも......自分はどういうことをやってるのか100%わかってるけど、聴く人の事を考えたら、中途半端なことをやるよりかは、こういうふうにまっすぐ歌うのが一番いいんやなって思ったんですよね。

-リスナーは作ってる人みたいにスタジオのスピーカー環境で聴いてるわけじゃないし、ほとんどイヤフォンだろうし、そうなると余計に歌詞が耳に入りますね。

いやー、そうですね。実際に今、洋楽離れみたいなんをちょくちょく聞くんですけど、俺も英語はさっぱりわかんないんで、もしかしたら歌詞に重きを置いて音楽を聴く流れの中で、歌詞がわかんないとちょっと......っていう距離の取り方をしてるのかな?と。でも作ってる側としては、そのうえでやっぱりサウンド面も遊びたいですよね。

-逆に言えば、歌詞で誰にでもわかるポイントがあれば、サウンドも遊べるという考え方もあるのかなと。

たしかに、今はみんなジャンルで聴くことはほとんどない気がするので、逆にやりたいことをやるチャンスだと思いますね。

-今回、朝日さんが歌詞で描いていることは身近になりましたよ。

その代表が「居酒屋で出てくるタイプの唐揚げが食べたい」(Track.4)(笑)。これとか最初、曲ができたときにすごく楽しくて、お気に入りやなと思ったんですけど、この曲はみんな聴いてくれるかな?と考えて。