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INTERVIEW

Japanese

EARNIE FROGs

2016年05月号掲載

EARNIE FROGs

Member:三木 正明(Gt/Vo) 尾形 悠妃(Ba/Vo) 寺尾 広大(Gt/Cho) 磯貝 祐香(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

-「Astroarts」はもともと2015年6月にリリースしたシングル曲なんですよね。

三木:この曲は"astro"と"art"を組み合わせた造語なんですけど、表現者や演者はオーディエンスにとって星のような存在だなと思ったんです。ライヴハウスには迷っている人もたくさんいて、そういう人の場所を示すという意味でもステージの上の人間は星のように見えるんだろうなと。でも僕らは太陽のように輝き続ける恒星ではなく、巡り会って引き寄せ合う"彗星"に近いなと思って。彗星にはもともと光る力はないんですけど、引き寄せられて近づき自分の分子を燃やすことで光が見える。そこにすごくロマンを感じたんです。バンド、オーディエンス、それ以外のたくさんの人との出会いによって僕たちが輝いて見える......ということがすごく素晴らしいなと思ったんですよね。

-"孤独の力で惹かれ合って届く事は無くても/そこからも見えるだろう白い軌跡が"という歌詞はそういうことだったんですね。

三木:闇だけ見せてもハッとさせるだけで終わっちゃう。そこからちゃんと方向性を示せたら......と思うんですよね。"前を向こうぜ!"とは歌えないけど、前を向いていきたい気持ちがお客さんに伝わって、お客さんもそういう気持ちになってもらえる道筋は作りたいなと。だから曲の精神性も開けてきたと思います。

-そして昨年12月にTrack.4「MATSURI」をシングル・リリース。「MATSURI」はそれまでのEARNIE FROGsの楽曲とは一転、お囃子のようなビートを取り入れた踊れるロックになりました。

三木:この曲を作っていたときはなかなか曲ができない時期が続いていて、寺尾が録っていたフレーズの中に何かヒントがないかと探していったんです。それで"あ、このフレーズいいじゃん。じゃあこんなAメロどう?"、"尾形こんなベース弾いてみてよ"みたいなセッションでアレンジやメロディを作っていって。......すごく昔のJ-POPのメロディを今のギター・ロックのサウンドに融合させるとかっこいいなと思って。2展開するサビの前半は最近のギター・ロック風のメロディとリズム重視の歌詞にして、後半は昔のJ-POP的なメロウな感じにして。そういう違いをつけるとサビの中だけでハッとさせられるなと思って作りましたね。

寺尾:僕らは(磯貝以外の)3人が曲作りをするんですけど、「MATSURI」ができる前までは3人が3人ともバンド内で定めた"EARNIE FROGsっぽい"に寄せながら曲を作ってたんです。でも「MATSURI」は半ばやけくそというか(笑)、ノリで作っていった部分もあるので、今までの"EARNIE FROGsっぽい"をぶっ壊して生まれた曲です。それからは"3人の個性が散らかってもなんとかなる"と思うようになりました。自分たちが作る"曲の性質"がだいぶ見えるようになったというか。

三木:闇を抱えながらも前を向いていきたい、闇を抱えていてもノれる音楽を......というイメージがすごくわかりやすい形で出ているのが「MATSURI」ですね。メロディもリズムもアレンジもできて、残すは歌詞だけだという状態になって、この曲で何を歌おうかと考えたときに"原動力"の部分がいいなと思ったんですよね。リズムが強いぶん言葉のわかりやすさは結構意識して。だから"悩んだ末の答えがいいんだ"という、言葉そのままの意味の歌詞を書くことは挑戦でしたね。

磯貝:この歌詞を見たときに"あ、ちゃんみきすごい変わったな"と思いました。それまでは自分自身の闇をさらけ出す、自分の中だけの話だったものが、それを人に問いかけたり提示したりするようになっていて。いい歌詞だなと思いました。

三木:"祭り"はもともと神様に祈りごとをするもので。"お祭り騒ぎ"という意味で使われたりもするけれど、踊ることや歌を歌うことは祈ることに通ずるものだなと思ったんです。なので、祈りに通ずる言葉を歌詞に乗せました。

-「uncircle」といい「MATSURI」といい、EARNIE FROGsはピンチを目の前にすると生まれる曲があり、それによってピンチを切り抜けているような気がします。

三木:はははは! そうですね(笑)。ピンチと直面したときに必ずいい曲が生まれてる。聴いている人にもそういうことが起こってくれたらいいなと思ってます。

-先ほど寺尾さんが"「MATSURI」をきっかけに3人の個性が散らかっていいかなと思えるようになった"と発言していましたが、尾形さんが原曲を作ったTrack.5「鯨」と、寺尾さんが原曲を作ったTrack.6「drifter」はまさしくその言葉の通り。まず「鯨」は歌詞の世界観とマッチする、ディープなミディアム・ナンバーだと思いました。

尾形:もともとこういう感じの曲を作るのは得意だったんですけど、バンドで演奏するとなると"もっと派手な感じにしないといけないな"と、なんとなく思っていて。だから作っては捨てて、作っては捨ててを繰り返してたんですけど、「MATSURI」みたいな曲も作って"どんな曲をやってもいい空気"のような雰囲気があったので、バラードっぽい曲をエイ!って作りました(笑)。歌詞で書いた鯨は深く沈んでいくけれど、消えていくわけではなくて。......ちょっと疲れてひとりになりたいときと同じ感覚というか。"上に戻っていくための孤独を求めていく"、そういうイメージで作りました。

三木:俺ら3人も聴いたときに"これは!"ってなったよね。"アルバムにしか入れられない曲だけどすごくいい、よし入れよう!"って(笑)。尾形らしさが出た曲だなと思ったので、それをより良く聴かせたいと思いましたね。コーラスも曲の良さを後押しすることを考えて作りました。

磯貝:私はバラードの曲でドラムを叩くのが苦手なんですけど(笑)、この曲も他の曲と同じようにそのとき聴いて感じたままにドラムをつけました。ずっとやってみたいなと思ってたフレーズも入れられたし、いい音で録れたので本当に良かったです。私はイメージが浮かぶだけで曲そのものはまったく作れないんですけどね(笑)。

寺尾:サビの裏でギターで"ピピピ"という高い音を鳴らしたりして。"今まで使ったことがない音を入れたい"、"深い海の暗くて青い透明感を出したい"と思わせてくれた曲ですね。新しいことにも挑戦させてくれました。