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INTERVIEW

Japanese

Manhole New World

Manhole New World

Member:関根米哉(Dr) オノシンサク(Gt) 有野拓洋(Gt) 細沼章吾(Per) 松田ナオト (Ba)

Interviewer:山元 翔一

-楽曲について詳しくうかがいたいと思います。Track.1「SE」はトライバルなパーカッションとカリンバのトロピカルな旋律が印象的です。この楽曲は今作においてどういった位置づけにあるのでしょうか? この楽曲は本作の方向性を決定づける契機になった楽曲のように感じましたが、もしそうであるならばこの楽曲の制作におけるエピソードなどについて詳しく教えていただけますか?

松田:この曲は実際、結構古いです。そもそも、楽曲にマリンバやカリンヴァを足そうときっかけの様なものにもなった楽曲ですね。確かにそう問われてみると、このSEは今作のあらゆる種火になったかもしれません。ニュアンス的には、多民族で開催する宴の様なものを感じてもらえればなと思ってます。

-続くTrack.2「Folklore」はダンサブルなビートやギターとマリンバのサウンドからは陽性のヴァイヴスが感じられる楽曲です。激しいサウンドも聴かせるうえに、展開も多い複雑な楽曲だと感じました。個人的にギターの奏でるノスタルジックな旋律などにSAKEROCKやSPECIAL OTHERSの影響もうかがえましたがこの楽曲について詳しく教えてください。

松田:この曲は、実はアルバムのタイトル候補に挙がっていたんです。それくらいみんなの中でエネルギーが溢れ、まさしく陽性のパワーが漲る楽曲だと思います。ギターの絡みなども豊富で、展開数も多いです。そのふたつのビッグネームには到底及んではいませんが、結果的に匂いがあったのならそれは敬意の現れです。

細沼:個人的にはそのSAKEROCKというか星野源さんのマリンバの音が好きでちょっと意識しましたね(笑)。

-Track.3「the die is cast」はめまぐるしい変拍子で幕を開けて、中盤以降ではゆったりとして叙情的且つメロウなパートに移行しますね。タイトルは"賽は投げられた"という意味かと思いますが、この楽曲ではどういったことを表現しようとされましたか?

松田:正に、シェイクスピアの作品である"The Tragedy Of Julius Caesar"の中で発せられた言葉をそのまま形にしたまでです。誰もこの曲を聴いてシーザーを連想する人はいないかもしれませんが、このインタビューをご覧になられた方がいて、この行をお読みになった方がいらっしゃれば、ぜひシーザーを想像して曲に入っていって欲しいです。それから頭のキメ、実は変拍子ではないんです。すごく変拍子っぽく聴かせようとおもって狙っていたのでそういってもらえると嬉しいです。

-Track.4「透明」は前の2曲に通じる部分もありつつ、タイトル通り透き通るようなポスト・ロック調のサウンドが印象的です。この楽曲はどういったイメージで制作されたのでしょうか?

松田:この曲は再結成直前に作られた曲で、実際、再結成した2014年の1月15日のライヴでやってるんです。そのときは電子マリンバを導入したりしていました。この曲にさらに少しアレンジを加え、完成させたのが今作のものになります。タイトルに込めた意味は、"透明"に対する不思議です。ちょうど制作する際、あるひとつの"死"がきっかけでした。コンセプトを簡略化すると、ペットボトルや水は透明/半透明とされているので透き通って見える。だとしたら人間はどうなのか。人間や動物も太陽に手を翳せば血管が見えたりするということは透明/半透明状態なんだなと。そして死んだあと肉体はなく、幽霊という透明な存在になるのかもしれない。恐らく幽霊の正体は透明。つまり人間なのかもしれない。そういうことを思いめぐらせて書いた曲です。

-Track.5「floating logs」は、"浮かんでいる丸太"を意味するタイトルですね。リズムはサンバ調のトライバルなのものである一方、マリンバのサウンドを始め全体的な質感は北欧をイメージさせる不思議な楽曲だなと感じました。どういった楽曲に仕上げようとディレクションされましたか?

細沼:今までにない感じに仕上げようとしましたね。パーカッションのパートは関根とふたりで全部とりましたからミックス確認までみんな知らなかったから新鮮且つびっくりな感じにしたかったですね。

松田:浮かんでいる丸太が、自然の雨に打たれ、風に流され、人間が踏み、動物が取り、虫が食べ、やがては消えてなくなり、そしてまた丸太は現れ、という風に永遠にそれが繰り返されて行く様を描きたかった作品です。"無とは有であり、有とは無である"という矛盾をうたっている楽曲でもあります。言われてみれば、北欧と中米を足して1回転させた様な具合かもしれません。

-Track.6「与謝蕪村と与謝野晶子」は一転して轟音ギターも聴かせる、前作の作風に近いかなりアグレッシヴなロック寄りの楽曲ですね。リズムや展開も複雑ですが、この楽曲について詳しく教えてください。また、この特徴的なタイトルにはどういった意味を込めていますか?

松田:仰せの通り、アグレッシヴなロックと民族調をトッピングしたという感じにはなっています。イメージとしては、武器を持たずして心の中で全力で戦っているイメージです。きっと昔の俳人や詩人は、心は熱く、表は穏やかというような感じだったのではないかなと想像して書いた曲です。1番文学的に対照的だが名前は似ている且つ語幹の良い人たちを選んだつもりです。彼/彼女らのバックグラウンド等は一切関係はありません。

-今作を締めくくるTrack.7「梟」はポスト・ロック色が1番強い楽曲ですね。他の楽曲に比べるとシンプルな構成になっているかと思いますが、曲自体の持つエネルギーは1番強いのではないかと感じました。制作ではどういったことを意識されましたか?

松田:この楽曲に対する特に制作に対してのエネルギーの持って行き方は、半端ではありませんでした。ボストンにいたころにでき上がった楽曲ですが、自分が行き詰まってた時期のピーク時に書き上げた曲です。メロディはあえてギターの有野に任せました。レコーディングでは様々なエフェクターを試し、音色を試し、音数を試し、アレも違うこれも違うと試行錯誤した曲でした。この曲は、このアルバムが出来る前から、絶対に最後に持って来たいという想いが強かったです。バンドとしてはまだまだこれからですが、めちゃくちゃ広い野外ステージやフェスで演奏してるのをイメージしながら楽曲制作に勤しんだ覚えがあります。

有野:サビのメロディをつけるにあたり、それまでのメロウな展開が"夢の中"にいるようなものだと感じたので、目まぐるしく過ぎてゆく現実をイメージしながら演奏しました。