Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

FEATURE

Japanese

otsumami feat.mikan

otsumami feat.mikan

otsumami:青葉 紘季 福井 伸実
mikan
Interviewer/Writer:高橋 美穂


"「私ならできる。」"と1歩を進むまでを後押しする、曖昧を葛藤する僕らの日々の歌


otsumami feat.mikanが、新しい始まりの季節にぴったりなファイト・ソング「負けるな、わたし」をリリースした。

青葉:ファイト・ソングというと、どこか威勢良く聞こえるかもしれませんが、何かに1歩踏み出すときって必ずしも期待に胸膨らませていたり、勢いづいていたりだけではないと思うんです。そこで生まれる不安や葛藤、今までの場所への名残惜しさなどもある。"せーの"で一斉に走り出すというより、ふと立ち止まって、グッと唇噛み締めて"大丈夫"だと自分に言い聞かす、みたいな場面もあるよなと。この曲ではそういう場面を描きたかった感じです。ちなみに、こういう感情って春に限らずいつどこで生まれてくるかわからないものなので、あえて季節感を入れずに静かに動いていく感情の描写にフォーカスしました。

ファイト・ソングではあるものの、優しさの中に見える強さを追求したような歌声が印象的だ。

mikan:特に前半の歌詞は、レコーディング時に私自身が歌詞の主人公と同じような気持ちだったので、とても共感しました。季節を問わず、何かを始めようとするときには足が震えることもあると思います。そんなときに"わたし"に対してどんな言葉を掛けてあげられるのだろうと、歌詞の中にあるメッセージと共に、自分にも言い聞かせながら歌いました。

特に"「負けるな、わたし」"と歌うサビは演奏が削ぎ落とされていて、歌そのものの良さや楽曲のメッセージ性を引き出しているように感じられる。

青葉:タイトルにもなっている"負けるな、わたし"というワードをどのように聴かせるか? ということを考えたときに、サビ頭でリズムを抜いて"ひとり感"を出したほうが、そっと自分に言い聞かせるような、呟くような景色が見えてくるんじゃないかと思いました。

なお、今作にはさめざめの笛田サオリが作詞で参加。笛田は青葉の古い友人で、これまでのotsumamiの「きみのものにだけ (feat. mikan)」(2022年2月リリースのデジタル・シングル)や「さよならにさよなら (feat.mikan)」(2022年8月リリースのデジタル・シングル)にも関わってきた。なんと、イラストを手掛けるメンバー 福井伸実も笛田の紹介で出会ったというのだから、かなりの重要人物だ。


きみのものにだけ / otsumami feat.mikan【Music Video】


さよならにさよなら / otsumami feat.mikan【Music Video】


青葉:女性目線というか、男目線では絶対辿り着かない切り口や、ワードのチョイスが素晴らしいなと前から思っていたので声を掛けました。ちなみに"「負けるな、わたし」"というワードとメロディだけは最初から決まっていたんです。まぁ降りてきたというか(笑)。そこから派生するストーリーをみんなで話し合って、方向性を決めていった気がしますね。おそらく歌詞に散りばめられている"めげるな"とか"がんばれ"は、そのときにアイディアとして出てきたと思います。"「負けるな、わたし」"をかぎかっこで括るという彼女のアイディアのおかげで、より主人公の真剣さや情景が加わった気がするので、一緒にできて大成功ですね。

mikan:otsumamiは基本男性が歌詞を書いてくださっているのですが、笛田さんの書かれる女性目線の歌詞は共感しやすく、言葉の選び方も女性らしい柔らかさがあって素敵だなぁと思いました。最後に"「私ならできる。」"と言い切って終わるところが好きです。


負けるな、わたし / otsumami feat.mikan【Music Video】


また、歌詞を通して"わたし"とひらがなだった表記が、最後の"「私ならできる。」"だけ漢字になり、句読点"。"がついているところにも、ストーリー性を重視するotsumamiらしさが表れている。

青葉:最後だけ"私"と漢字になっているのも話し合って決めました。"「わたしならできる」"で締めるより"「私ならできる。」"としたほうが、曲の始まりの主人公より少しだけ強くなったというか、1歩前に踏み出せた感じがしたんですよね。普段ならあまり一人称の表記を変えるようなことはしないんですが、今回はあえて歌詞を読み物と捉えたときに、これが正解かなと思いました。

さらに、ファイト・ソングであり、始まりの季節に向かう気持ちを歌っていながらも、描かれている情景は夕方であるところも興味深い。

青葉:曲の雰囲気が呼んでいたと言ってしまえばそれまでですが(笑)。夕方ってどっちでもないところが好きで、なんとなく1日が終わっていく、でもまだ終わってもいない、どこか曖昧な感じが個人的に好きなんですよね。例えば、冬の17時と夏の17時って明るさが全然違うじゃないですか? 夏は夕方に感じられるけど、冬だと夜の装いになっているみたいな、同じ時間なのに。そんな曖昧さが人の心のようで。景気のいいファイト・ソングだったら、朝の描写からスタートしたかもしれませんが、曲の雰囲気や、"「負けるな、わたし」"というサビのワードが、この景色を呼んでいたっていうのが、一番しっくりきますね。

そして、"恋する絵描き"福井伸実が担当しているジャケットにも注目。今作は、ファイト・ソングで、葛藤も見せる歌詞でありながら、ジャケットの女の子は顔を上げて笑っている。まるで、最後の"「私ならできる。」"を噛み締めているかのような表情だ。

福井:実は、この楽曲に向けて数年前にすでに1枚描き下ろしていて、そのときは夕陽に染まり涙を堪える子を描きました。今回改めて楽曲を聴いて、"「私ならできる。」"という言葉が強く自分の中に入ってきました。頑張れる、負けない私を信じることができる。春に向かっていくような軽やかさのある表情を描きたいと思いました。

白いシャツが与えるまっさらな印象、そして桜の花びらと髪の色のピンクが織り成す春のイメージなど、シンプルな絵だからこそ映える色使いにも、表現や想いがこもっているように感じられる。

福井:この楽曲は言葉がすごくシンプルできれいで、mikanちゃんの透明感のある声が繊細さを加えていて、そのイメージを大切にしたいと思いました。春が来て、初めて咲いたばかりの、空に透けるような桜の花びらのイメージで描きました。

2024年、最初の新曲に相応しい、otsumamiがアプローチしたい方向性が明確に見える「負けるな、わたし」。今後の展開にも期待が高まる。

青葉:この曲は2年前にできたんですが、なぜかメンバー一同"今じゃない"という感じがありまして。そういう意味では"今"だったんだなと思います。今回、そのときのものをそのままではなく、ミックスを変えたり、楽器を抜き差ししたり、それと何より歌を新録したのも大きいですね。当時のモヤモヤを完全に解消することができました。これを皮切りにまさに今新曲制作中ですが、王道路線から少しだけ横道に逸れたような楽曲になったらいいなと思ってます。楽しみにしててください! 2024年もよろしくお願いいたします!


RELEASE INFORMATION

otsumami feat.mikan
NEW SINGLE
「負けるな、わたし」

NOW ON SALE
[OSAKANA label]
配信はこちら

  • 1