Japanese
otsumami feat.mikan
otsumami:青葉 紘季 福井 伸実
mikan
Writer:高橋 美穂
時代に左右されないotsumami feat.mikanの普遍性、その決定版
otsumami feat.mikanが、11月24日に「星影のパレード」をリリースした。今年は「恋のまぼろし」(7月リリース)、「レモン水」(8月リリース)と夏曲が続いてきたなかで、今回はクリスマス・ソングであり、冬曲。季節感を大事にしている彼ららしい流れとなっている。
青葉:映画やドラマの冒頭シーンで、引きの画から入ってくる作品ってよくあると思うんですけど、そういうイメージがありますね。時代背景や季節感、時間帯とか、例えば主人公が外にいるのか家の中にいるのか? ひとりなのかふたりでいるのか? みたいな、そういう情景を先に映像として見せて、同じ景色を共有すれば、聴いてくれる人たちが曲の世界観に入ってきやすいかなと。そういうことで言うと「レモン水」は"夏"、"夕暮れ"、"部屋の中"という景色を見せつつスタートさせてますし、今回はそれが"冬"、"外"、"クリスマス"という感じです。
恋のまぼろし / otsumami feat.mikan【Music Video】
レモン水 / otsumami feat.mikan【Music Video】
10月には、フィーチャリング・ヴォーカルとして参加するmikanが愛してやまない80年代ポップスを収録したカバー・ソング集『ピアノと私 #2』もリリース。そのことも、今作に影響をもたらしている。
青葉:今回は、無数にあるクリスマス・ソングへ立ち向かっていった感はあります(笑)。実は僕自身、「星影のパレード」が人生で初めて作ったクリスマス・ソングなんです。これは間違いなく『ピアノと私 #2』を経てというのが大きいですね。80~90年代ってクリスマス・ソングが溢れていたというか。そういう意味では最近は、今年のクリスマスはこの曲! みたいなのが減ったなと。今まではワンポイント的な曲から身を遠ざけてた感がありましたが、今回は初めての試みをしてみました。
そんな、満を持してのクリスマス・ソングと言える「星影のパレード」は、ウィンド・チャイムや鐘の音が聴こえたり、まさに王道と言えるアレンジとなっている。
青葉:ここは惜しげもなく、再生ボタンを押した瞬間にクリスマス・ソング感満タンでいこうと。じゃあやっぱりど頭から鐘の音だ! みたいな(笑)。それと"一瞬でわかる"って大事だと思うんですよね。そこがいわゆる"王道=わかりやすい"ということなのかもしれないですけど。やっぱり音楽って、基本的に生活のなかで右から左へ流れてくものだと思うので、どうやって耳にキャッチしてもらえるか? みたいなことは、普段の音楽制作のときも大事にしてるポイントです。
また、王道とは言え、otsumami feat.mikanらしさも感じられる。例えば夏曲においても暑さより爽やかさを表現している印象だったが、今回の「星影のパレード」においても、寒さよりも温かさを表現している印象なのだ。
星影のパレード / otsumami feat.mikan【Music Video】
青葉:夏って暑いし、冬って寒いから、それを和らげるために人って、そうでないものを求めるんじゃないかなと。夏はアイス・コーヒー、冬はホット・コーヒー的な。音楽もそのひとつなんじゃないかなと思ったりします。ちょっと気分が滅入ってるときにこの曲を聴くと元気になれるみたいな。音楽に物理的なエアコンみたいな役割はできずとも、"温まりたい"と思う感情には寄り添えるんじゃないかなと思いますね。otsumamiの音楽が誰かのそういう役割を果たせていたら、それは本当にミュージシャン冥利に尽きますね。
さらに、歌詞にも "ジングルベル"、"Silent night"、"Holy night"、なんなら"Merry Christmas"とまで、これでもか! とばかりにクリスマスにまつわるワードが取り入れられている。
青葉:自分自身が今まで使ってこなかったクリスマス・ワードが踊った感ありますね。"クリスマスといえばこれだ! まだこんなワードも残ってる! トナカイ、サンタはさすがにやりすぎか!"とか、とにかく書いてて楽しかったです(笑)。初めて書いてみて思ったのは、クリスマスってやっぱり華やかだなと。今回は失恋的なラヴ・ソングではありますが、切ないものはより切なく、楽しいものはより楽しく、対比が作りやすいし、結果的に改めてクリスマスの偉大さを感じました。
そして、歌詞でも"とは言え"なのだが、タイトルは"星影のパレード"であり、直接的にクリスマスを指してはいない。そこも、この楽曲の深みに繋がっている。
青葉:聖なる夜の"星"が煌びやかな景色なら、主人公はその影、"星影"と表現するのがいいのかなと思いました。ただ、そのなかでも感情があっち行ったりこっち行ったりとめまぐるしく動いていく様子は、"パレード"と表していいのかなと。これに味を占めて「◯◯クリスマス」とか「クリスマス◯◯」とか作るかもしれないんで、そのときまで取っておこうかなと思ってます(笑)。
今回、otsumamiらしいワードとして出てくるのが"キャラメルミルク"。「レモン水」でも顕著だったが、飲み物の温度や味で臨場感を伝える手法が、またしても冴え渡っている。
青葉:五感はいつも意識しています。音楽は基本メロディと歌詞で、映像のないものなので、どこまで聴き手に想像してもらえるか、どこまでその情景を共有できるかが一番大事だと思っています。そのなかで飲み物は、聴き手にリアルを伝えやすいアイテムなのかもしれないですね。そのうちotsumamiならではで缶ビールだの熱燗だの出てくるかもしれないんで、楽しみにしててください(笑)。
また、otsumamiのメンバーとしてすべてのアートワークを担当する"恋する絵描き"福井伸実が手掛けたジャケットも、爽やかだった夏曲の2作からガラッと変わって黒がベースになっており、その中でオレンジやピンクが映えている。
福井:会えなくなった誰かを想う、otsumamiらしい憂いを帯びたクリスマス・ソングだと解釈しました。この季節に輝く街を見ると無性に切なくなる、置いてけぼりのような感覚はわかります。冬の深く冷たい空気の中に、華やかな街の光や音が浮かんでいます。星に照らされた横顔の瞬間を描きたいと思いました。
次は新年の楽曲、春曲と、毎年の季節ごとにotsumami feat.mikanの楽曲が聴きたいと思ってしまうのは、私だけではないはず。シティ・ポップや季節という、年代によって揺るがない普遍的なものが、otsumami feat.mikanには似合う。
青葉:ひとりでも多くの方が季節の節目にotsumamiを思い出してくれるのであれば、めちゃくちゃ幸せです。ありふれた日常でも、otsumamiのフィルターを通すとotsumamiっぽい感じに聴こえてくれれば嬉しいですし、あとはmikanの声が加わることこそが独自性なのかなと思っています。
mikan:普遍性を売りにしているものとか人って、意外と少ない気がします。最近流行りの音楽は賞味期限が短い印象です。そんな時代に左右されないのはひとつの個性であり、強さだと感じます。
今後についても青葉は"アルバムみたいなものを出したいですね。自分たちなりの遊び心だったり、肩の力を抜いたような楽曲も聴いていただけるといいなと思います。あとはやっぱり、来年はとにかく絶対にライヴ! 生otsumamiをご賞味いただきたいです"とコメントしてくれた。引き続き注目していきたい。
▼リリース情報
otsumami feat.mikan
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「星影のパレード」
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