Japanese
WANIMA
2019年07月号掲載
Writer 秦 理絵
雪の中のアーティスト写真が印象的だった前作シングル『Good Job!!』から4ヶ月ぶり。WANIMAがリリースする2019年第2弾シングルは、季節が巡り、夏全開なタイトルとジャケットとなった『Summer Trap!!』だ。その幕開けを飾る「夏のどこかへ」は、"太陽"、"青空"というワードが散りばめられた清涼感溢れるサマー・チューン。すでに今年3月から三ツ矢サイダー2019 CMソングとしてオンエア中なので、耳にした人も多いかもしれない。KO-SHIN(Gt/Cho)が繰り出す爽快なギターのドライヴ感、FUJI(Dr/Cho)が打ち鳴らす豪快なシンバルの響きが、一瞬で駆け抜けていく灼熱の日々を鮮やかに描き出す。
歌詞で歌われるのは、苦しみから抜け出せずにいる誰かを励まし、手を取り、自分らしく生きられる場所へと導こうとする力強いメッセージだ。同時に、この歌でKENTA(Vo/Ba)は、"この歌は君がこんな僕にくれた"、"言葉や想いが全部"、"間違わずに届きますように"と綴っている。とてもWANIMAらしいフレーズだ。リスナーとの関係性を決して一方通行で終わらせない、そんなバンドの根底にある想いが、このフレーズによく表れていると思う。とかく一般的に"背中を押す歌"には、苦手意識を抱く人も少なからずいるし、同じ歌でも聴くタイミングや心持ちによって刺さったり、刺さらなかったりすることもある。それでも、できるだけ誤解なく、本当に必要な人のところまで間違いなく届いてほしい。この"間違わずに"という言葉の切実な響きに、この歌に懸けるWANIMAの願いの強さが詰まっているように感じてならない。
WANIMAのシングルは、表題曲、カップリングの区別がなく、すべてを並列に収録するが、1曲目の「夏のどこかへ」の他にも、その考え方に納得がいくほど、それぞれが異なる世界観を持った楽曲たちが収録されている。2曲目の「サンセットストリップ」は、軽やかに刻む裏打ちのリズムに乗せて、ハメを外したひと夏のランデヴーを描く陽気なナンバー。WANIMAお得意のちょっとエッチな言葉遊びは、何度も聴きたくなる中毒性がある。3曲目「GONG」は、国民的人気コミック"ONE PIECE"の劇場版("ONE PIECE STAMPEDE")の主題歌として書き下ろされた。かねてから大ファンを公言するメンバーの"ONE PIECE"愛を証明するように、歌詞には"麦わらの一味"のこれまでの旅を連想させるようなキーワードも散りばめられ、曲中には登場キャラクターも掛け声で参加している、"ONE PIECE"ファンにもたまらない1曲だ。同時にどんな困難も仲間と"ともに"力を合わせ、泣き笑いしながら強敵を倒してゆく"ONE PIECE"のストーリーに導かれた歌が、同じように小さなライヴハウスから仲間の輪を広げ、ついにはドームでもワンマン・ライヴを成功させたバンドの物語とも重なって、まるで"WANIMAの主題歌"のようにも聴こえてしまうところに、この曲の大きな意味があると思う。
テンポの速い3曲のあと今回のシングルを締めくくるのは、スロー・バラード曲「Mom」だ。アコースティックな歌い出しから、次第にエモーショナルなバンド・サウンドへと展開していくこの曲。日本語で"母親"の意味を持つタイトルのもと、おそらく自身の生い立ちにも触れているであろう赤裸々な歌詞は、"幸せになると決めた"というひとつの決意で終わる。真実は定かではないが、あの満面の笑みの奥に大きな悲しみを超えてきた過去があるとしたら。その悲しみを超えた先にもう一度笑える日々が来ることを知っているからこそ、WANIMAの歌は、大きな包容力をもって聴き手の心に響くのだろう。この曲を聴き終えたあと再び1曲目に戻ると、「夏のどこかへ」という曲が持つ強さと優しさにまた胸が熱くなる。
▼リリース情報
WANIMA
ニュー・シングル
『Summer Trap!!』
![]()
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TOWER RECORDS
HMV
1. 夏のどこかへ ※三ツ矢サイダー2019 CMソング
2. サンセットストリップ
3. GONG ※劇場版"ONE PIECE STAMPEDE"主題歌
4. Mom
「夏のどこかへ」先行配信 『Summer Trap!!』特設サイト
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