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INTERVIEW

Japanese

瀧川ありさ

2017年03月号掲載

瀧川ありさ

インタビュアー:吉羽 さおり

1stアルバム『at film.』の発表からわずか3ヶ月ほどで、瀧川ありさが両A面のニュー・シングル『ノーサイド/ONE FOR YOU』をリリースした。ラグビーを題材としたTVアニメ"ALL OUT!!"のエンディング・テーマとなる「ノーサイド」は、松任谷由実のカバー曲。瀧川自身、幼いころからユーミンが好きで、普段からほぼ毎日のように聴いているアーティストの曲ということで、思い入れも愛も、リスペクトも高いカバーに仕上がっている。しかし同時に、好きであるがゆえの難しさや、自分のあり方も見つめる曲にもなったという。そんな、初のカバー曲への思いを訊いた。

-ニュー・シングルの1曲目である表題曲は、松任谷由実さん(以下:ユーミン)の名曲でもある「ノーサイド」(1984年リリースの16thアルバム表題曲)のカバーです。瀧川さん自身、この曲をどう解釈をして歌おうと思いましたか。

実はこの曲、私が高校時代からずっと聴いてきた曲なんです。高校時代の友達が好きだった曲でもあって、当時は"この曲は私の曲だから聴いて"って言っていて。だから、私にとっては"その子の曲だ"という認識で。今回のカバーの話をいただいたときも、すぐに友達に連絡をして感動し合っていたんです。ユーミンさんは大好きでしたけど、今回カバーするのが「ノーサイド」だったのは、かなり運命を感じましたね。"ユーミンさんは、私が一番好きだ!"くらいの愛情を持って歌わせてもらおうと思いました(笑)。

-そうでしたか。

それでも自分らしく、どう2017年の「ノーサイド」にするかは、意識しました。一度レコーディングして、マスタリングまでしたのにもかかわらず、録り直しをしたんです。それくらい、何回も向き合いました。

-録り直したときは、何が違うと感じたんですか?

原曲と同じキーで歌っているんですけど、私はユーミンさんとは声質がまったく違うので、印象も全然違うんです。ユーミンさんのすごいところって、あえて感情を込めずに平坦に歌うんですよね。それですごく、入ってくる歌になっているんです。でも、私が同じことをすると、全然違うものになってしまって。自分なりに歌うには、自分のやり方で歌わないといけないということで録り直しました。メロディ自体がすごくシンプルで、サビもまっすぐなので、すごく難しかったんですけど、録り直したときに"すごく良くなった"と言ってもらえて。何が変わったのか......心持ちなのか、自分ではわからないんですけど、それくらい模索はしましたね。最初から完成形があるぶん、難しかったです。

-特にユーミンさんの曲は、ユーミンさんならではのイメージがかなりありますし、ファンも長く聴き続けている曲ですしね。

そうなんです。これまで自分が書いた曲しか歌ってこなかったぶん、難しかったんですけど、歌い込み続けるしかないなと思って。はっきりとした正解はなかったんですけど、その感じも大事にしたいなと思いました。"どや"って感じで歌うよりは、25歳の自分が、ミュージシャン人生としても、いろいろと模索している途中なんだというところも、体現できたらいいかなと思えたので。

-臨場感のある歌詞と、エモーショナルな声がマッチしています。先ほどお話に出た高校時代のお友達は、なんで自分の曲だと言っていたんですか。

その子が当時付き合っていた彼が、ラグビー部だったんですよね。私はそのふたりを客観的に見ていたという、リアルなドラマがあったので(笑)、「ノーサイド」の歌詞も当時から新鮮に刺さっていたんです。もしかしたら、今の世代の子だとリアリティがないのかなと思ったりするんですけど、私的には当時からかなりリアリティのある曲でした。そういう意味では、迷いはなかったというか、歌詞で考えることはなかったですね。今回、ミュージック・ビデオでは、ユーミンさんが歌の舞台にした大分の舞鶴高校に行かせてもらったんです(※「ノーサイド」は1984年の全国高校ラグビー大会の決勝戦、天理対大分舞鶴戦が歌のきっかけになったという)。今、頑張っているラグビー部の方たちの姿を見て、まっすぐ突き刺さって。そのあと、今ライヴでも歌っているんですが、どんどん自分のものになっている気がしますね。

-MVのアイディアは瀧川さんから?

今回、どんなMVにしようかなという話になったときに、まず私から"8ミリ(フィルム)で撮りたい"と言って。それで、内容としてはもともとユーミンさんが舞台とした学校へ、ラグビー部に会いに行くのはどうだろうという提案をいただいたんです。

-これまで、カバー曲は音源化していなかったですね。

ラジオではカバー曲を歌ったりしていたんですけど、こうして自分のシングルとして残すのは初めてです。正直、カバーのお話をいただいたときはどうしようかと思ったんですけど、それが「ノーサイド」だと言われたときは、これはイエスとしか言えないというか。"ユーミンさんの「ノーサイド」を私以外の人に歌わせたくない"、くらいの気持ちがありましたね。初めてのカバーというよりは、自分が慣れ親しんで聴いてきた曲なので、ただカバーを歌うという感覚ではなかったというか。違和感はなかったですね。

-20代という瀧川さんの世代で、ユーミンさんを聴くようになった入り口はどういうところなんですか。

私は、小さいころからよく家の車の中で流れていて、その当時から好きだなって思っていたんです。山下達郎さんもそうですけど、自分が生まれる少し前の世代の曲とかが好きだったりするんですよ。なんでしょうね? 前世で聴いてたのかな(笑)。一番しっくり、ピタッとくるんです。簡単に言えば、世代じゃないんですけどずっと聴いていて。クラスでユーミンさんを聴いている子っていう意味でも、その高校時代の友達はすごく気が合ったんですよね。ユーミンさんでの友情があったりして(笑)。私がミュージシャンになったのも、ユーミンさんのおかげですしね。なので、(カバーできることは)不思議ですけど。

-実際にソングライターとなって曲を書くにあたっては、ユーミンさんの曲も研究したんですか。

単純に、好き好んで無意識に研究しているんですよね。言葉選びやメロディ、アレンジとかは、好きで聴き漁っていただけなので、研究という感覚はないんですけど。気づいたら、それこそ身体に入っていましたね。

-ユーミンさんの歌詞の描写は独特ですよね。聴いているとすごくイメージが湧く。

1行目からバーッとシーンが見えますよね。自分が知らないシーンなのに、目の前に見えるようにする力があるっていうのは、すごいなと思います。それこそ、自分がやりたい"風景が見える音楽"は、私にとってはユーミンさんがパイオニアなので、今回は本当に嬉しいです。

-アレンジについては、今回とても控えめでシンプルになりましたね。

好きなぶん、自分の色はいらなかったんです(笑)。ただシンプルに、2017年バージョンにしたというものでした。カバー・ソングって、アップデートされた感じで、正直、違和感があるときがあるじゃないですか。そういうふうにはしたくなかったし、もう愛情ですね。唯一、この曲はアニメ"ALL OUT!!"のエンディング・テーマということで、高校の景色がより見えるようになればいいかなと、トランペットやヴァイオリンを入れて、吹奏楽感を出しました。

-これが2017年の第1弾として出るのは、また新鮮ですね。1stアルバム『at film.』がリリースされて間もないですが、制作はずっと続けていたんですか。

アルバムの最後の曲を録っていたときに、まずこのカバーのお話をいただいたんです。そのリリースがアルバムを経ての次の1枚になるということで、ある意味、注目を置いてもらっているところだと思うので、それなら自分の次の一手も出したいなと。それで両A面にしませんかということで、この形になりました。