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INTERVIEW

Japanese

SPRISE

2025年08月号掲載

SPRISE

Member:笠宮 えいる

Interviewer:山口 哲生

京都を拠点に活動中のアイドル・グループ、SPRISE。今年6月には結成6周年を記念したワンマン・ライヴ"WELLNES ~5-THADOX~"をZepp Namba (OSAKA)にて開催、メンバーのソロ楽曲を収録したミニ・アルバム『5-THADOX』も発表と、精力的に活動を続けている。今回はメンバーを代表して、笠宮えいるに単独インタビューを実施。"1.5期生"として加入し、グループを支えてきた笠宮は今何を思い、ステージに立っているのか。パーソナリティも含めて話を訊いた。

-まず、6月9日にZepp Nambaで開催された、6周年記念ワンマンの感想からいただければと思うんですが、そちらのほうはいかがでしたでしょうか。

私たちのワンマン・ライヴって、基本めっちゃ詰め込みというか。新曲を3曲から5曲出すのが基本で、曲も1ヶ月前に全部仕上がったりして、リハーサルとかゲネもその1ヶ月間に詰め込んで、深夜レッスンが基本みたいな。だからいつも焦り散らかしてるというか。ワンマン前はドタバタして、緊張のまま本番を迎えて、なんとか上手くいくみたいな感じなんですけど。

-いろいろ大変ですね。

でも、そのスタイルが合っているというか。ライヴ数が多いので、半年後にお披露目する曲を半年前から準備したとしても、結局同じクオリティになるんですよ。なので、1ヶ月間に詰め込んでやって迎えたワンマンだったんですが、SPRISEができてから6年目になるんですけど、これまでで一番良かったかなと思いますね。ファンの方が増えたこともあるんですけど、みんなが同じ方向を向いてるというか。同じ熱量でこういうふうにしたいよねとか、こんなライヴにしたいよねってところがあったし、各々ちゃんと思うところとか芯があって挑んだワンマンだったのかなって思います。

-笠宮さんとしてはどんな思いで臨みました?

私はワンマンに限らずなんですけど、ライヴは基本楽しかったらいいやと思っていて。クオリティも大切なんですけど、100のクオリティを求めて、楽しいが50になるくらいやったら、どっちも70とか平均点以上でやりたいよねみたいな感じなんです。とにかく来てくれた人たちを楽しませたいし、今回のワンマンだったら全員のソロ楽曲もあったので、全員も楽しめるし、その子のファンも楽しめるものにできたらいいなって思ってました。

-とにかく来てくれた人たちを楽しい気持ちにさせて、そのまま返したいという。

そうですね。楽しかったー! って帰ってもらいたい。いいもん観たな、みたいな。

-普段のライヴはもちろんですけど、周年ライヴこそ特にそこが大事なのかもしれないですね。しっかりと楽しんでもらうことで、今後の自分たちにより期待してもらえるというか。

そうなんです。だからこそ、失敗しちゃったらこんなもんかって落胆される可能性もあったわけで、それはめちゃくちゃ怖かったですね。ファンの皆さんはなんでも楽しんでくださるというか、良かったと言ってくださると思うんですけど、やっぱり心の底からの"楽しい"が欲しいというか。うちらのことが特に好きじゃない人が"楽しい"って感じることが本当の楽しいだと思うので、そこが難しかったですね。そこで"こんなもんか"って思われたらもう来てくれないし、来てくれるにしても頻度が減ることもあると思うので。だから、そこでやっぱり楽しいって思ってもらえる、もっとこれからを楽しみにできるステージにしたかったっていうのはありましたね。

-そういったシーンをばっちりと作れたと。

やれることは全部やりましたし、成功だったとは思うんですけど、課題も同時に見つかったというか。もっとこうしていかないといけないなとか、もっとここはこうできたなとか、次のワンマンはもっとこうしたいよねみたいなのが自分の中では見つかったので、いいワンマンだったと思います。

-そこも大事なことですよね。そもそもの話になりますが、6年前に笠宮さんがSPRISEというグループに入るときって、どんな気持ちだったんですか?

私はアイドルがやりたくてアイドルになったわけじゃないんですよ。歌うことも踊ることも人並み以下だったので。でも、女の子にしかできない仕事──男の子もできますけど、例えばコンカフェとかメイド喫茶とかで働きたいなって思ってたんですね。そのときは京都に住んでたんですけど、求人を見ていたらSPRISEは京都を拠点に活動しているアイドルっていうことを知って、いいじゃん! と思って応募した感じです。だから、最初はなんとなくでしたね、本当に。

-アイドル活動というものに対しての興味はそこまでなかったと。

全くなかったですね。AKB48さえも通ってきてなかったので、本当に新しい世界に飛び込んだ感じです。

-音楽自体は小さい頃から好きでしたか?

J-POPとかはあんまり聴いてなくて、VOCALOIDばっかり聴いてましたね。聴きたい曲があってYouTubeで調べたら、その曲名を間違えていて、VOCALOIDの曲がヒットしたんですよ。鏡音リンさんの「ココロ」っていう曲なんですけど、引っ掛かって聴いてみたらめっちゃ良くて。こんな世界があるんやと思って、そこからハマりましたね。それが小6とか中1の頃でした。

-人前で何かをするのが好きとか得意とか、そういう感じでもなかったんですか?

全くなかったです。できれば人前にそんなに立ちたくなかったので。

-クラスの輪みたいなものがあったら、そこからちょっと外れているとか?

陰キャではあったし、輪の中心にはいないんですけど、中心からたまに呼ばれる感じの人間でした。イジめられてたのか分からないんですけど、私はイジられとして捉えていて。廊下ですれ違ったら喋り掛けられるくらいの絡みやすい陰キャみたいな感じ......いや、分からん。めっちゃイタいこと言ってるかもしれん(苦笑)。実はイジめられてた説ある。

-いや、たぶんイジメではないんじゃないかと。

そうですかね。気付かないときがあるから。でも、一応仲良くというか、固定の子たち数人とつるんでる感じでしたけど、分け隔てなく全員と喋ってたし、仲良くしてた自認はありますね。

-そうなってくると、今アイドルをやっていることを当時の友達が聞いたら結構驚くような感じでなんですか?

たぶん意味が分からないんじゃないかなと(笑)。"なんでお前がアイドルを?"みたいな感じにはなると思いますね。"どうしたん? 何があったん?"みたいな。でも、その当時インスタとかやってなかったし、LINE交換も別にしてなかったので。アカウント変えちゃったのもあるんですけど、その当時の人たちとはもう疎遠というか、全然繋がりがないですね。

-小中学生のときにボカロにハマったとのことでしたけど、その当時に他に好きだったものはありましたか?

ボカロ繋がりでニコ動やアニメの存在を知ったのと、あとは音ゲーが好きでしたね。中学生の頃も高校生の頃も放課後はゲーセンに行ってたので、他に趣味はなかったかもしれないです。

-音ゲーの中でも好きだったものというと?

"初音ミク Project DIVA"のアーケード版とか。同級生の子が、ゲームセンターに行ったらこんなでっかいのがあって、VOCALOIDの曲を聴きながらボタン叩けるよって教えてくれて。あとは"CHUNITHM"とか"maimai"とか、SEGAの音ゲーが多かったですね。

-先程VOCALOIDにハマったきっかけになった曲として、「ココロ」を挙げられてましたけど、どういうタイプの曲が好きでしたか?

ボカロPでトーマさんっていう方がいるんですけど、その方の曲がめちゃくちゃ好きでしたね。「エンヴィキャットウォーク」っていう曲が一番好きで。だから、アイドル・ソングとかキャッチーなものというよりは、ダークめな曲が好きでした。ボカロのいいところって、放送禁止ワードを歌詞に織り込めるというか(笑)。そういうのが結構平気で入ってるとか、あとは人間には歌えへん速さとか高さが耳心地よくて。だからアイドルの世界を見たときにギャップに驚きましたね。私が聴いていたのはTHEボカロだったんだなぁみたいな。

-トーマさんってコンセプチュアルな作品を作られる方でしたよね。

そうですね。そういう世界観を作れるのってすごいなぁと思います。やっぱり自分にできないことをできる方ってすごいなぁって思うので、何食ったらこんな気持ちいい文字列が浮かぶねんみたいな。当時は子どもでしたけど、気持ちいいなって思ってましたね。

-そこからアイドルになり、歌もダンスもあまり得意ではなかったと考えると、レッスンで大変なことも多かったですか?

1人だけタコ踊りしてましたよ。でも、当時はあんまり気付いてなかったですね。この動きあんまできてへんなみたいな感じだったんですけど、そのときの動画を今観ると、1人だけほんまに踊れてないなって。相当苦手だったんやろうなって思いますね。

-でも、とにかくこれを一生懸命やるんだっていうところから続けてきて。

周りに追いつかないとっていうのが強かったかもですね。そのときは全員先輩やったんで。

-加入されたのはグループが始動して結構すぐとかですよね?

そうですね。始動して2ヶ月後とかに1.5期生みたいな感じで入って、そのとき一緒に入った子が最年少だったんですけど、地位で言ったら一番下だったんで、足手まといになったらダメだなって。その気持ちと一緒に、やっぱり1期生の方がメインで、私たち1.5期生は歌割りも少なければ、フォーメーションも一番端っこの後ろとかがメインだったんで、スポットライトさえも当たらんみたいなことが結構ありました。だから、最初は頑張ろうと思ってたけど、徐々にこれいつまで続くんやろうな......っていう気持ちはどこかにあったかもしれないです。無駄に身長が高くて目立つのに、スポットライトが当たらずに後ろにいて、歌割りもなくてマイクがただのおもちゃになってる状態だったから、こんなもんかぁ......みたいなでしたね。

-その状況って心が折れても全然おかしくなさそうですけど。

折れなかったんですよね。悔しさがなかったんですよ。自分がかわいくなくて悩むことはあるし、ファンが少なくて運営さんに対してごめんなさいって思うけど、自分が落ち込むとかはあんまりないというか。そういう状態やから、やめたいとかは別になかったですね。悪く言えば向上心がなかったのかもしれないです。上の世界を知らなかったので、地下アイドルってこんなもんでしょ? みたいな。だから別に落ち込むとかやめたいなとか、もう何くそ! みたいなのがなかったです。

-あまり落ち込まないというのは昔から?

落ち込まないようにしてるところはあるかもしれないですね。回避型じゃないですけど、落ち込みそうなことがあったら避けるみたいな。だから、心のどこかで落ち込んでるかもしれないんですけど、自分では気付いてないというか。でも、そのときも傷付いてはいたのかもしれないですね。こんなふうに覚えてるってことは根に持ってるということだと思うんで。

-すごく冷静に自己分析されますね。

はははは(笑)。キモいですよね。

-全然キモくないです。むしろすごい。

でもその当時はもしかしたら悔しかったのかもしれないですね。今思い返したら別にそうでもなかったなって、記憶を改ざんしてる可能性はある(笑)。

-もう過ぎたことだし、みたいな。

そうです。でも、やめてないってことは、たぶんやめたかったわけではないと思うんですよね。バイトとかも全然続かなかったんで。同じことを6年続けてるのって小学生以来というか、義務教育以来だから。

-じゃあもうすぐ更新しますね。活動していくなかでたくさんのことを知っていったと思うんですが、それこそ悔しさを感じたときってどんな瞬間だったんですか?

でも常に悔しいですね。先日、"関ケ原唄姫合戦"(国内最大級の野外アイドル・フェス)があったんですけど、ありがたいことに3年くらい前から出させていただいていて。でも、まだ一番上のステージに立ったことがないんですよ。一番上のステージにはすごい方々が立つので、そこは仕方ないというかまだまだ実力不足だったんだなと思うんですけど、実力不足とはいえ悔しさはありますね。あとは、"TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)"に呼ばれてないとかも、言ったらコンプレックスではないですけど、認められてないんやなって感覚になってしまいます。

-自分たちの評価に対して悔しさがあって。

そうですね。何が足りひんねやろとか、何があかんねやろなって。そこは実力だけじゃなくていろんな要因があると思うんですけど、やっぱり出れへんってことは何かが足りてないからであって。悔しいなっていうのはありますね。