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INTERVIEW

Japanese

SPRISE

2025年12月号掲載

SPRISE

Member:笠宮 えいる

Interviewer:山口 哲生

"幸福をもたらすアイドル"というキャッチコピーを掲げ、関西を拠点に活動中の5人組アイドル・グループ、SPRISE。ドロドロとしたものからセンチメンタルなものまで、様々な恋愛模様を描いた楽曲を収録した1stミニ・アルバム『live psycho』について迫るべく、本誌8月号に引き続き、笠宮えいるにインタビューを実施。全国ツアー後半戦という超多忙ななか、本作はもちろんのこと、2025年の活動について振り返ってもらった。

-このインタビューを行っているのは、"SPRISE the Eight Deities of Good Fortune Tour 『福音幻奏 -Euphonia Fantasia-』"の真っ最中(※取材は11月中旬)。残すところ神奈川、東京、大阪の3公演のみという状況なのですが、ここまでの手応えはいかがでしょうか。

去年もツアー("SPRISE Ten Good Precepts Tour『貪瞋痴』")させてもらったんですけど、感覚としてファンの人が変わりましたね。後輩のアブソプと一緒に回っているからっていうのもあるかもしれないですけど、去年いなかった人たちが来てくれたりして、ファンが着実に増えているなっていうのを感じるツアーですね。去年と違うところといったらそこらへんかなって思います。

-嬉しいことですね。

でも逆に言うと、去年いた人がいなくなってたりもするので、そこは一概にいいとも言えないですけど。ただ、分母が減っている、人がいなくなっているんじゃなくて、新しくついていこうと思って来てくれる人が増えてはいるので、"うーん、いいですねぇ"っていう感じですね(笑)。ありがたいです。

-会場によってセットリストを変えていたりするんですか?

内容はそこまでっていう感じですけど、会場ごとに新曲を毎回披露していて、それが目玉ですね。それ以外は対バンで盛り上がる曲を持っていったり、せっかく来てくれたからちょっとレアな曲をやろうとか、会場によってはやったりしてました。

-会場ごとに新曲を披露ってだいぶ大変ですね。

そうなんですよ。今週末に神奈川公演と東京公演があるんですけど、現時点で、レコーディング2曲、振り落とし2曲が終わってないんですよ。

-え?(苦笑)

11月9日の北海道公演のときは、レコーディングは前の週にしたんですけど、振り落としが11月5日で、次の日にちょっと合わせて本番みたいな。だから結構ギリギリな感じで来てるんですけど、今週が一番ヤバいですね。レコーディング2曲、振り落とし2曲を4日間でやるっていう。

-取材受けてる場合じゃないですよ(苦笑)。この後にやるんですか?

いや、今日はオフなんですけど、オフしてる場合ではないなと。そわそわしちゃいますよね。来週がツアー・ファイナルだから、束の間の休息っていう感じではあるんですけど、またそこで新曲増えますし。

-大変だ......。

ただ、ウチらも早くに振り落としされても忘れちゃうじゃないけど、ステージに立って覚えていく感じもあるし、追い込まれながら頭に叩き込むっていうドM精神みたいなものを植え付けられすぎて。逆に余裕を持ってやっても"あれ? これどうだっけ?"って、結局前日に思い出す作業をするのに同じ時間かかっちゃうので。本当はあんまりこういうこと言わんほうがいいんやろうなぁとは思うんですけどね。"ギリギリです!"みたいな。でも、ファンの人にはバレてるんで、まぁいいかなって。

-バレてるんですね(笑)。

やっぱり応援してくれてる人にはバレてますよ。"レッスン中です!"、"振り落とし中です!"っていうのを、ライヴ数日前の深夜とかにアップしてるんで。"あ、今やっとるな"みたいな。

-(笑)前回ご登場いただいたときに、笠宮さんとしては、ライヴはとにかく楽しいことが大事だというお話をされていて。そこに関してはしっかりできています?

そうですね。ライヴは本当に楽しいなとは思います。ただ、最近気付いたんですけど、ライヴ中に気が散りやすいというか。例えば、自分のファンがさっきまでここにいたけど、体調が悪くなって後ろにはけたりしていなくなると、え、どこ行った? みたいな。それでミスっちゃったり、振りが飛んじゃったりすることがあって。ファンの人がいつもとちょっと違った動きをしたら、なんでその動きしたんやろとか、自分のファンじゃなくてもなんでこの人は不機嫌なんやろとか、そういうことを考えてミスっちゃうことが多いなって、楽しいながらも最近気付いて。あと、ツアーのセトリはしっとりした曲というか、ちゃんと意味のある歌詞の曲が増えてきたから、歌うときに入り込みすぎてしまって、表情として笑顔が減ったりすることが多くて。それは別に楽しくないからとかじゃないんですけど。

-あくまでも曲に合わせて、という。

そうです。私は"楽しい=ファンの人との交流"やと思っていて。コールとかミックスがあってレスをする、それで相手が笑ってくれる。その積み重ねで"楽しい"が膨張していくって思ってるんです。でも、しっとりした曲が増えると、どうしてもレスをする回数が減っちゃうというか、そういう曲で笑って指さしたりするのは違うじゃないですか。レスはポップな曲とかかわいい曲でやるものだと思っているので、しっとりした曲とかかっこいい曲が増えていくと、楽しいをどこで積み重ねていこうかなって。そういうことを考えるのが結構増えたなって思いますね。

-しっとりした曲やかっこいい曲が増える=自分たちの新しい面を見せられるというのもいいことではあるとは思うんですけど。

たしかに。そうですね。SPRISEってかわいいタイプの子がいたり、清楚な子がいたり、かっこいい子がいたりする中で、その子が違うジャンルのことをしているのも結構楽しいなと思うので。たしかにこのツアーでいろんな面をお見せしているのかなと、ポジティヴに今のお言葉を聞いて思いました(笑)。

-(笑)今まではそう思えていなかったんですか?

いやぁなんか難しいなぁって思ってたんで。ツアーのスケジュールもタイトで、新曲も対バンとかであんまりやらないから、やる回数が少ないとお客さんがどういう感じなのかあんまり統計が取れてないんで、うーん、どうなんやろう......っていう。

-新曲をやるのはいいけど、実際にそれがどう響いたのかという。

そうです。ツアー・ファイナルまでにこの曲をどう調理して持っていっていいのかっていうところがまだ分からないので、あと2週間でどれだけ理解できるかみたいな感じですな。

-先程、楽しい=ファンの方との交流とのことでしたが、笠宮さんが一番楽しかったと思うライヴというと?

楽しかったライヴかぁ......私、結構記憶をすぐ飛ばすんですよね。ファンの人にも申し訳ないですけど、"いついつこういうことあったよね!"って特典会とかで話されて、"そんなことありました?"って平気で言っちゃうから。何も覚えてない、ごめんねって。

-そこで話を合わせて"あ、ああ! 覚えてる覚えてる"って適当なことを言わないのがいいっていうのもあるでしょうし。

そう! 嘘をつきたくないんですよね。ほんまのことをほんまと思ってほしいから、本当の言葉にちゃんと重みを持たせたいから、絶対に知ったかぶりはしない! そこはありますね。でも、上手い生き方ではないなぁと思います。それで人を傷つけて生きてきてるから。たぶん傷ついたファンの人もいっぱいいると思うんですけど、それに耐えれる精鋭たちが今、私のサイリウムを振っているので。だから変わってるなと思いますね、自分のファンって。こんなによう耐えられるなぁみたいな。ありがたいですね、見捨てずにいてくれて。

-感謝ですね。

で、楽しかったライヴは......やっぱりツアーは楽しいですね。言ったらみんなでプチ旅行みたいな感じもあるんで。3大都市もありがたいんですけど、福岡から大阪って、大阪から東京に行くよりも遠く感じるし、北海道も年に1回とかだから、それがめっちゃ楽しいです。

-記憶を飛ばしがちとのことですけど、一番心に残ってるライヴというと?

なんやろう......嬉しい記憶とかだとワンマンとか生誕(祭)になるけど、そういうライヴって緊張が勝っちゃうんですよ。安堵というか、無事に終わったー! っていう感覚が強いので、純度100パーセントの楽しいっていう感じでもないんですよね。緊張の中でずっとやっているから、手放しで楽しんでるか? と言われたらそうではないので、"楽しい"のタンスに入れてないんですけど。

-別のところに入ってるんですね。

"メモリアル"のタンスに入ってます。だから記憶に残っているものというと......やっぱり楽しそうに観てない人とか、それこそ不機嫌そうな人がいたら、数日は考えますね。自分のファンには"どっか行って"って言うし、今はそんなにいないけど、他のグループのファンの人とかで、もう全然興味なさそうやんみたいな顔で観てる人がいたら、その日寝るまでは記憶に残るかも。後ろのほうでもステージからは結構見えてるから、みんなの表情も分かるし、自分が最初に出てきたときの感じを自分のファンじゃなくても見るんですよ。で、この人はデフォがこの顔やったのに、今は結構歪んでる、何があったんやろ? みたいな。なので、長く記憶に残っているライヴは特にないけど、細かくというか、記憶に残る瞬間が多々あるなっていう感じですね。プラスの感じであんまり記憶に残ってることはないかも。そういうのはその場で消化されちゃうというか。楽しかったー! みたいな。

-おつかれー! みたいな。

そう。でも、マイナスなことは引きずるじゃないけど、なんでなんやろみたいな。何があったんや、この人はっていうのがちょっと残るっていう感じですね。

-ということは、笠宮さんはライヴ中にめちゃくちゃフロア見ていると。

見てるというよりは視界に入るっていうのが正しいですかね。私は基本、自分のファン以外見ないんで。なんか視線感じるなって思ったとき以外は自分のファン以外見ないから、余計に違和感として映るんですよね、不機嫌な顔が。だって、ライヴ中にそういう顔をするってね? 絶対そんな場面ないはずなのに、違和感! みたいな。そういう感じですね。

-逆にレスを貰おうと思って不機嫌な顔をするパターンもありそうな......。

そういう変なやつにはレスしないんで大丈夫です! なんで笑わへんか分かっている人、そんなシャカマ(斜に構えた)なやつは相手しないんで。

-(笑)ちなみにライヴ前のルーティーンとかってあったりします?

そんなにないですね。私がいつも最後に出るんですけど、SEが鳴り始めても、のそのそしてたり、まだもぐもぐしてたり、結構ギリギリまで何かしてますね。基本あんまり慌てない。久しぶりの曲が多かったらちょっと慌てますけど、普段は結構落ち着いてます。

-どんと構えていると。ここからは先日リリースされたミニ・アルバム『live psycho』についてお聞きしていこうと思います。念のために確認したいんですが、読み方って、"リヴ・サイコ"か、"ライヴ・サイコ"か、どっちなんでしょう?

"ライヴ・サイコ"らしいです。実はこれ、もともと"love psycho"の予定だったんですよ。今回の曲が結構重めというか、ドロッとした感じの恋愛曲を多めに入れたので、そのタイトルにする予定だったんですけど、締切に追われてはったみたいで、タイプミスで"live phycho"になってしまって。そういうハプニングがありましたね。

-そうだったんですね(苦笑)。重ためのドロッとしたラヴ・ソングを1枚にまとめるということに対して、笠宮さんとしてはどう思われました?

いやぁもうファンなんてものは重いと思っているので、みんな刺さってるんじゃないですか? 推しに対して重い感情を抱いてる方も多々おられると思うので、沁みてしまう人もいるのではないかと。でも、みんな結構ドロドロしてる感じがかわいいじゃないけど、曲調が好きって言っている人も多いので、喜んでいただける一品なのではないかと思います。