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INTERVIEW

Japanese

め組

2024年02月号掲載

め組

Member:菅原 達也(Vo/Gt) 富山 京樹(Gt) 久佐賀 麗(Key) 寺澤 俊哉(Ba) 外山 宰(Dr)

Interviewer:山口 哲生

め組がミニ・アルバム『七変化』を完成させた。前作『LOVE』から約2年ぶりとなる本作は、そのタイトルの如く、異なるベクトルを持った全7曲を収録。パワフルに、爽やかに、メランコリックに、そしてハッピーにと、様々な情景を色鮮やかに描きつつも、その軸はぶれないどころか、彼ららしさをより強く感じさせる、ポップ・ロック・バンドとしてのめ組を存分に堪能できる作品に仕上がっている。"自分のやりたいことを改めて見つめ直してやってみよう"と原点に立ち返り、なんともエネルギッシュで瑞々しい1枚を完成させた5人に、話を訊いた。


ファンの人たちの性格が変わったというか──ファンの人たちの根明の部分を引き出すことができた


-ミニ・アルバム『七変化』は、まさにタイトルの通り、それぞれ異なるタイプの楽曲が収録されていて。これは意識的にそういう作品にしようと思ったのか、それともたまたま作った曲がそういう形だったのか、どんな感じだったんですか?

菅原:今回の曲を作る前に、バンドとして新しい試みをし始めていまして。いろいろ試行錯誤をした結果、原点に戻ろうじゃないですけど、自分のやりたいことを改めて見つめ直してやってみようというのがきっかけになったんですよ。そうしていくうちに、ずるずると、バラバラの曲になったっていう感じですかね(笑)。正直、意識的ではなかったです。

-でも、自分のやりたかったことではあると。

菅原:これまで新しくやってきたことと一緒なんですけど、飽き性だから同じことができないというのは、結成当初からそういう感じではあるなと思います。

-原点を見つめ直してみようというきっかけみたいなものがあったんですか?

菅原:いろいろと新しいことをやってきましたけど、いったん手にしてみて、自分にとって合うのか、合わないのかっていうのをやってみて。結局合わなかったというと聞こえが悪いんですけど、でも自分の似合うものがわかってきたので、じゃあもう自分の真ん中にあるものを信じてやってみようと。今までは重箱の隅を突くようなことをやってきたんですけど、ちゃんと真ん中があるんだからそれを信じてやりましょうよ、っていうのが大きなきっかけかなと思います。

-そういうことはみなさんでいろいろ話し合われたんですか? 原点に帰ってみるのがいいんじゃないか、みたいな。

菅原:してましたっけ?

寺澤:いや、そこまで深くは。"原点に"みたいな明確な言葉があって、そういう話をした覚えはないかも。

菅原:でも、なんとなくの流れは言わずもがなあったので、その流れに従ったまでというか。あとは、ライヴでお客さんからのリアクションをダイレクトに感じながら、今まで出したものがいい感触か悪い感触かっていうのも分析できたので、だとすればいい感触に近いものを、というのを今回やりました。

-富山さんとしては、具体的なお話はなかったとしても、菅原さんから上がってくるデモから感じたものはありましたか?

富山:ここ1~2年ぐらいの中だったら、結構伸び伸びと曲を作っているんだなっていう感じはちょっとしましたね。作りたいものを作りたいんだろうなぁって。もともとやっていたようなことをもう一度やってみようかなって、自然となっていったのかなと思います。

-外山さんも同じような感覚だったりします?

外山:そうですね。今回は菅原が作ってきてくれたデモに結構忠実にやってまして。彼のやりたいことをベースに、みんなで噛み砕きつつ、それを良くするというためにやっていて。そういう意味でも伸び伸び作っていたところに話が繋がるというか、そういうアレンジをメンバーでも施しているので、より原点回帰に繋がったのかなと。やりたいことをやった音源かなと思います。

-デモに忠実にというのは、"そうしてくれ!"と言われたというよりは、"そうしたほうがいいかも"みたいな感じだったんですか?

外山:そうですね。かなり完成度の高いデモを用意してくれたので、こういうことがやりたいんだなっていうのをメンバーも汲み取りやすかったし、それをいい形にできたかなと思います。

-久佐賀さんは、今回の制作に関してはいかがでした?

久佐賀:私は3年前に加入したばかりで、前作の『LOVE』が私にとっては初めてのアルバムだったんですね。なので、前作のときは"初めてアルバムを出せるー!"みたいなワクワク感が、私の中では勝っちゃってたんです(笑)。でも今振り返ると、『LOVE』というアルバムはめ組にとって挑戦的で、おしゃれな曲とか、静かに愛を伝えるような曲がどちらかというと多くて。それと比べると、今回は本当にタイトル通り、7曲すべてに違う色味があって。自分もやっていてすごく楽しいですし、それがお客さんにも伝わるかなと思うし、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいなと思ってます。

-1枚通して吹っ切れているというか、突き抜けているというか、エネルギッシュな作品だなと思ったんですが、自分のやりたいものをやったというのが風通しの良さみたいなところに繋がったんでしょうか。

菅原:まぁ、根底はやっぱりギター・ミュージック/ピアノ・ロック・ポップ・バンドっていうんですかね。それを全うしてやれたというのはかなり大きいし、結局『LOVE』がいいプロセスになったんですよ。制約されたというと言葉が悪いし、やりたいことがやれなかったわけでは決してないんです。プロデュースしてもらったことでこれまでの作品を凌駕できてすごく感謝だし、実際にいいものができたと思っているし。ただ、その一面性だけではないから、沸々としていたものもあって、そういったいろいろなタイミングとか、曲が揃ったから、これはチャンスだと思って。一挙手一投足、真剣に自分に集中してやろうっていう機会を与えられたという意味では感謝してますね。

-収録曲の中で先行配信されていたのは「咲きたい」でしたけど、この曲が最初にできたんですか?

菅原:いや、「(I am)キッチンドリンカーズハイ」ですね。EDMみたいな感じのことをしているんですけど、この曲ができてから、たかが外れたというか。みんな好感触だったから、これでいいんだって。周りの意見にあまり左右されることなく気持ち良く作れたし、それをすごくいいと言ってもらえたのが、僕の中で起爆剤になったところはあったので。これがスタートになったのは大きかったですね。

-アルバムの中で最も毛色の違う曲ですが、それこそやりたいものをやろうモードの第1弾だったと。

菅原:"やりたいことをやろう!"って掲げてから始めたわけではなくて、"次に何をやろう......"っていう鬱屈としていた状況ではあったんですよ。デモを作ってはダメっていうのを繰り返して、"もう知らねぇよ!"っていう(笑)、結構投げやりなところから始まったので。じゃあもう手癖でいいやと思って作った感じではあったんですけど、それがね、何を間違えたのか(笑)。

一同:はははははは(笑)。

菅原:みんな"これいいじゃん!"って言うから、じゃあ手癖通りやろうかなっていう感じではありましたね。

-鬱屈とした状態だったのもあって、歌詞はこういった感じになったんですかね。言ってしまうと、かなり暗いというか、冷めているというか。

菅原:もう酒に頼るみたいな感じの歌詞ではあるんですけど。ただ、そこに直結しているかどうかはわからないんですが、この曲に関して特に思うのは、"歌詞の意味とかどうでも良くね?"っていうことで。そもそも音楽って楽しいのが根底にあるから、ノリが良くて、メロディが良くて、言葉の乗りも良くて、楽しかったね、終わり、チャンチャンっていうのが本来あるべき姿なんじゃないか? って。それは客観的に音楽を聴いたときも、自分で歌うときもそう思うんですけど。だから、そのあるべき姿みたいなものが「(I am)キッチンドリンカーズハイ」には表れているし、堅苦しい"表現"とか、そういうものではなくて、"今が楽しければそれでいいじゃん"っていうのは訴えていきたいですね、ファンの人たちとかに。"歌詞とかもう良くない?"みたいな。これって結構大事なことだと思うんですけどね。

-たしかにシンプルに踊れる曲だけども、意味は置いておいたとしても、いざそこに言葉を乗せるときに、決して"楽しい"という言葉を使うんじゃないんだと思って。

菅原:あぁ、なるほど。

-それこそ"アルコール抜きじゃ無理ぽ"みたいな言葉が出てくるのが、らしさなのかなと思うんですけど。

菅原:いや、"無理ぽ"のほうが面白くないすか(笑)? みたいな感じなんですよ。別に暗いけど、というか暗いほうが、掌中で鬱屈して転がされている感じを凌駕できるというか。その感じはありますね。なんか、ただただもう君に会いたい! 楽しいね! っていうのって踊れなくないすか? "踊ろうよ!"みたいなの。いや、無理でしょ。"踊れない踊れない、ごめんごめん"って(笑)。

-たしかに、"踊ろうよ!"って言われると踊りたくないっていうのはわかります(笑)。

寺澤:たしかに(笑)。

菅原:そうそうそう。そういうことなんですよ、マジで。全然説明になってないんですけど(笑)。

-いや、"踊ろうよ"と言われると踊りたくないというのは説明になってると思います(笑)。収録曲の中で「咲きたい」を先行配信しようと思ったのはなぜだったんです?

菅原:そこはいろいろな繋がりがあって。伊勢丹新宿店さんとのお話があったんですけど、それこそ歌詞に関しては、最初は暗かったんですよ。でもコラボ・ソングなので、もうちょっと明るいほうに寄せた感じではあったんですけど、結果的にバンドがリアルタイムで言いたいことと、奇しくもリンクしたんですよね。だからラッキーでした。先行配信するのもね、これが「(I am)キッチンドリンカーズハイ」だったらもう幸先不安だから。

寺澤:前衛的すぎる。

菅原:そうそう。あと、僕らが意図的にしたことではないんですけど、「咲きたい」をリリースしたことによって、お客さんの熱量が上がったんですよ。僕らが今感じていることや訴えたいことをあえて素直に乗せてみたら、そのメッセージに応答してくれて。それはすごくラッキーだったし、感動したし、やって良かったなと思いました。

-"あえて素直に乗せてみた"というぐらい、「咲きたい」に書かれているようなポジティヴなメッセージを書くことは、これまではやめておこうと思うことのほうが多かったんですか?

菅原:そんなつもりではあまりなかったんですけどね。なんか、もとは根明なんですよ、暗く見られがちではあるけど。そうじゃないとこういう曲は嘘になってしまうので。あとはそもそも飽き性で、そういう曲はこれまで何回も何回も書いてきたから。そういった意味でも、"これが決定版だ!"って考えちゃうと自由が利かないので、最初はとにかくいったん、これが過渡期であるっていうぐらいの感じでラフに作りました。

-ただ、"踊ろうよ"って言われると踊りたくなくなるタイプの人が「咲きたい」に書かれているような言葉を書くことって、ちょっと勇気がいる気もするんですけど。

菅原:もうおっしゃる通りです。非常に勇気のいる行為でしたね。そこにはいろんな感情があったんですけど、いったんそういうメッセージをファンの人に送ってみたら、"嬉しい! ありがとう!"となってくれて。そのおかげでファンの人たちの性格が変わったというか、ファンの人たちの根明の部分を引き出すことができたんですよ。それは僕らもウェルカムだったし。

-面白い表現ですね、"ファンの人たちの根明を引き出した"。

寺澤:まぁまぁ、たしかにパリピではないからね。

菅原:そう、パリピではない。だから"こうやれば良かったんだな"とか、いろんな勉強になった曲ですね。

寺澤:こういったストレートな表現をしてこなかったし、ふた回りぐらいして"これは「咲きたい」と言っているんだな"っていう歌詞が今までは多かったんですよね。それが菅原の良さでもあって、難しいから何回も読みたくなる小説みたいな良さが、彼の歌詞には昔からあったんですけど。「咲きたい」もサビはわかりやすいんだけど、Aメロ、Bメロはちょっと遠回りしているところもあったりするからハイブリッドになっていて、僕はいいなと思いました。

-これまでの部分もあるし、新しく開いた部分もあるし。

寺澤:そうですね。だから新規のお客さんも入ってきやすいかなと思いました。

外山:デモの段階から歌詞が変わったので、変わった瞬間の違和感みたいなものはやっぱりどうしてもあるんですよ(笑)。もとのほうがいいんじゃないかなって思った瞬間もあったんです。暗い歌詞という表現とはまた違うというか、いい意味で菅原節が効いているんだけど、タイアップにしてはちょっと暗いかなという意味だとは思うんですけどね。ただ、曲調も含めてここまでストレートでロック魂が炸裂していて、"咲きたい、咲かせたい"というメッセージがすべて気持ち良くリンクしていて。それにわかりやすいから、僕らが伝えたいことを歌詞の面でも演奏の面でも全部詰め込むことができたので、やっぱり歌詞もわかりやすいほうがいいんだなと気づけた曲でもありますね。これからいろんな方に広がってほしいですし、ファンの方もすごく喜んでくれたことで、すごく手応えを感じました。