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INTERVIEW

Japanese

め組

2022年04月号掲載

め組

Member:菅原 達也(Vo/Gt) 富山 京樹(Gt) 久佐賀 麗(Key) 寺澤 俊哉(Ba) 外山 宰(Dr)

Interviewer:秦 理絵

対人間でありたい。今のめ組は"誰に向かって音楽を届けていきたいのか"に強く意識が向いている。2020年にリリースされた「YOLO」から約2年。新メンバーに久佐賀 麗を迎えた新体制初となるミニ・アルバム『LOVE』は、この場所からより広い世界を見据えるバンドの第一歩を踏み出すような1枚になった。現行のポップ・ミュージックのトレンドにも肉薄するミニマムなサウンドに挑戦するなど、新機軸となるアプローチをふんだんに盛り込みつつ、タイトルに"LOVE"=愛を掲げることで、バンドの変わらない本質が貫かれている。この大胆な進化作はいかに生まれたのか。5人に訊いた。

-去年の4月から久佐賀さんが加入した新体制になりましたね。やっぱりめ組は5人揃ってこそだなと思いました。

菅原:そうですね。一瞬3人のときもありましたけど。

-菅原さんの中で5人編成へのこだわりは強くあるんですか?

菅原:ステージで鳴っている音に矛盾がないようにしたいとは思ってます。賑やかな音が好きですしね。あとは5人って、ドン! としてる感じがいいんですよ。それは偶像としての憧れなんですけど。め組は寂しい曲ばっかりだから、それを理解してくれる人と一緒にやりたいっていうところはありますね。

-久佐賀さんはどういった経緯で加入したんですか?

菅原:キーボードの出嶋(早紀)が去年卒業したんです。僕たちの音楽的にキーボードという楽器は欠かせなかったので、いろいろな伝手(つて)をお借りして何人かとセッションをさせてもらったときに、麗がいたんです。僕個人的には、かっこいい弾き方をしているなと思ったんですよ。立って弾いてもらったんですけど、弾くときに足をこうして(※前後に開いて)たんです。それで"あ、いいじゃん"って。

一同:あはははは!

-弾く姿勢だったんですか!?

菅原:そうそうそう。

富山:そういうところを見てるんだね(笑)。

久佐賀:えー、無意識でした。今まであんまり立って弾く機会がなくて、手探りな状態でやってたから。

外山:実は、(久佐賀は)大学の後輩なんですよ。年が離れてるので一緒の期間にいなかったんですけど。その時点で、できる子だろうなっていう加点があったんです(笑)。

-洗足学園(音楽大学)ですね。

外山:それもありつつ、会ったときの穏やかな感じとは打って変わって、セッションで指定曲を弾いてもらったときに、スタジオでもライヴを感じさせるプレイだったんですよ。

-指定曲はなんだったんですか? め組の曲?

外山:「悪魔の証明」(2016年リリースの1stアルバム『恵』収録曲)です。

-ピアノが難しい曲ですね。

外山:それを弾きこなしてくれるのはもちろんなんですけど、それ以上のパフォーマンスをやってくれたっていうのはありましたね。

-富山さん、寺澤さんは、久佐賀さんに対してどんな印象を持ちましたか?

富山:すごく細かいところというか、他の人がやってこないところまで再現しようとする一生懸命さが見えましたね。

寺澤:華がある人なんですよ。華って努力でどうにかなるわけではないじゃないですか。技術は努力でどうにかなるものだけど。それは代えがたいものですよね。

-久佐賀さんは一緒にやることになって、どう思いましたか?

久佐賀:最終的に決まるまで何回かセッションを重ねてから、ぜひお願いしますって言っていただいたので、すごく嬉しかったです。"やってきたことは間違いじゃなかったな"っていう安心感がありましたね。前任の出嶋さんのプレイがかっこ良かったので、私も自分らしく演奏できるようにしていきたいなと思ってます。

-もともとバンドの経験はあるんですか?

久佐賀:音楽大学ではシンガー・ソングライター専攻だったので、自分で曲を作って、歌いながら弾き語りをするっていうのはあったんですけど、バンドは初めてなんです。

-歌えるというのも、め組が久佐賀さんと一緒にやりたかった理由なんでしょうね。

菅原:あ、そうですね。自分たちの曲には女性コーラスが入る曲も多いので。

-久佐賀さんは、め組にどんな印象を抱いていましたか?

久佐賀:音源を聴いたときに、人としての愛を感じる歌が多いなと思ったのが第一印象ですね。自分で曲を作っていた身としても、め組の楽曲に興味を持てたので、一緒にやってみたいなと思いました。で、加入したときはウキウキでいたんですけど、男性ばっかりがいる空間で、あと年もちょっと離れてるので。普段はあんまり接しないお兄さんたちがいることへの恐怖みたいなのが、最初はちょっと......どうしようみたいな。

一同:(笑)

久佐賀:萎縮しちゃうというのもありましたけど、ようやく慣れてきたかなって感じです(笑)。メンバーがみんな優しいので。不安なことははっきりと吐き出させてもらって、助けられながらやってます。

-久佐賀さんが加入して、バンドの雰囲気も変わったところはありましたか?

菅原:人が変わったっていうのは大きいことだから、まず鳴らす音のニュアンスが変わりましたね。自分たちでも、そうしていきたいと思ってたんです。今まではバンドだから当然なんですけど、サーキットとかフェスで盛り上がることを意識したものとか、肉体性8割みたいな鳴らし方を考えていたんですけど。そこが変わってきてるんです。もっと人っぽい感じがいいなって。麗と一緒にやりたいと思った理由もそこなんですよね。

-今まで以上に人間臭いモードに入っているということですか?

菅原:まぁ、もともとそうだったんですけどね。麗が入ってから、もっとできるなっていうか、そこの深さを感じるようになったんです。

-人っぽさを追求するというのは具体的にどういうことですか? 例えば、サウンド的に生音を多くして体温を感じられるものを求めていきたいのか、歌詞のことなのか?

菅原:歌詞がメインかもしれないですね。これまでみたいな自分流ではなく、聴いてくれる側を考慮して書こうっていう意味かな。今まで以上に誰に対して歌ってるかがわかってきたような気がするんですよ。

-他のインタビューで話してたことですけど、今までは曲作りは自己満足だって言い方をしてましたもんね。自分のために書いているって。

寺澤:あ、言ってたね。

菅原:そっかぁ。言われてみると、劇的に変わりましたね。だから、去年たくさん曲を書いてたんですけど、完全に"自分大好き"みたいな曲はアルバムの候補には挙がらなかったですからね。そういうバンドの空気感はあったなと思います。

外山:中には(菅原が)自分を吐き出した曲も作ってはいたんです。すごい量が送られてきたので。ただ、今回はそういう曲は選ばれなかったんですよ。

寺澤:今回の作品を作るうえで前作から時間が空いたので、ミーティングを結構重ねたんです。そのなかで、バンドとして今いるステージから1個上に上がりたいよねっていう共通の意識があったんですよね。今までのやり方を再確認して、なぜリスナーに届いてないのかっていう話し合いができたので。それが反映された結果でもあるんです。

-コアな音楽好きだけではない層まで広がっていくことを意識して作ったんですね。

菅原:そうです。バンドをやってるからには広い会場でやりたいですから。

富山:それで、アレンジャーの方にも手伝っていただいて。今までだったら、とにかくガシャガシャさせたい、みたいなのがあったんです。歌の裏にずっと違うフレーズが複数鳴ってる、みたいなことを要求されることが多かったんですけど、今回はそれが必要か必要じゃないか、みたいなところを考えてたというか。とりあえず鳴らしとけっていうモードではなくなった。それが菅原さんの意識に新しく芽生えたんですよね。

-アレンジャーの花井(諒)さんとは、2020年にリリースした「YOLO」のときから、引き続きタッグを組んだ、という流れですね。

菅原:そうですね。花井さんはすごく細かいところまで......次のバンドのステージはこうだっていうのも理解してくださったので。「YOLO」の段階でそれを汲んでいただいたので、引き続きやっていただくことにしたんです。さっき京樹が言ってた、音を削ぎ落したっていう話も別にそれがブレーキだと思わないんですね。ちゃんとその意味を理解してやれるようになったので。そこは、花井さんという司令塔に助けられましたね。

-アルバムの中で一番ビート・ミュージックっぽい新機軸のアプローチになったのが、「あの恋をなぞれば」とか「REC」あたりかなと思いますが。

菅原:そうですね。あれは花井マジックです。僕のデモだと、平べったい感じなんですよ。凹凸がない。花井さんには主にリズムをイジってもらってベース、ギター、最後に上モノっていう流れで重ねていく。この1年間ぐらいはその流れで作ってますね。

-ドラムの音色には相当こだわっているんじゃないですか?

外山:そうなんですよ。この7曲でドラム・セットを5台ぐらい使いわけてるんです。この曲はこれとか。花井さんもそこはこだわってて、そのドラムを軸に一緒に使うギターを考えたりしました。60~70年代のヴィンテージのドラム・セットを使ったりもしてますね。

-それはどの曲ですか?

外山:1曲の中でも部分部分で使いわけたりもしてるので、どれがっていうのはもうわからないんですけど......。

菅原:すごかったよね。

外山:うん。曲を録るときも、ドラム・セットの音作りに一番時間を使ってますね。もちろん生で録ってるんですけど、打ち込みっぽさを意識していて。シーケンスと交じり合ったときの相性も考えて、(ドラムに)ガムテープを貼るとか、細かいチューニングとかもみんなで話してるんです。それがカチッとハマる瞬間は面白かったですね。

-ポップ・ミュージックってドラムの音色によって時代性が表れますもんね。聴いた瞬間に80年代っぽい、2020年代っぽいって認識するポイントがビートだったりするから。

菅原:おっしゃるとおりですね。だからすごく注力したんです。

-ただ、ロック・バンドをやっていると......あ、め組を"ロック・バンド"と呼んでいいのかな? 私はロック・バンドだと思ってるんだけど。

菅原:もちろん、全然大丈夫です。

-ロック・バンドをやってると、ガツンとパワフルなドラムを叩きたくならないですか?

外山:まさにその気持ちっていうのもあって。それを発散してるのが「YOLO」なんです。最初はそういう(ロックなドラムを叩きたい)気持ちもあったんですけど、今はこれからめ組がやりたい音楽に必要なものをやっていきたいと思ってますね。

富山:今回はギターに関しても、今までみたいなロックなギターではないんです。花井さん自身がギタリストっていうのもあって。例えば、「あの恋をなぞれば」みたいな全編にわたってフレーズっぽいギターを弾くのも、僕ひとりだったら、絶対にやらないんですよ。そういう自分にないものをどんどん出せるのは学びにもなりました。今までのめ組になかったような曲ができたっていうだけじゃなくて、そもそもあんまり日本で聴いたことがない音ができたのは、やってて楽しかったですね。