Japanese
ザ・モアイズユー / め組
Skream! マガジン 2022年10月号掲載
2022.08.22 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 稲垣 遥 Photo by タチバナジン
下北沢LIVEHOLICのオープン7周年を祝し現在実施中の"LIVEHOLIC 7th Anniversary series"。"in joy!!"とサブタイトルが付いた8月22日公演は、ザ・モアイズユーとめ組のツーマン・ライヴだ。

先にSEにノッて手を叩きながら、フロアをかき分けて入場したのはめ組。軽快なミドル・テンポ「ぼくらの匙加減」からライヴをスタートさせ、のっけからフロアの手が上がる。そこから、跳ねるドラム&キーボードに合わせフロントマン、菅原達也がクラップしながら「余所見」へ。親しみやすいグッド・メロディを菅原がさらにフレンドリーに歌い、どんどんぬくもりのある空間を作っていくなか、その後ろで富山京樹(Gt)と寺澤俊哉(Ba)が向かい合って音を合わせながらお辞儀したり、途中ジャジーな久佐賀 麗のキーボード・ソロから富山の泣きのギター・ソロへ繋いだりと、ヴォーカル以外の各メンバーにも自然とスポットが当たっていくのが楽しい。そして"行くよ!"と菅原が合図すると「お化けだぞっておどかして」。次々とリズムが変わりはちゃめちゃに転がるサウンドと、キュートな歌詞の世界観で聴き手を笑顔にさせてゆく。
ここまでバンド初期から大切にしてきた、お得意の晴れやかなポップ・ロックで盛り上げたが、以降は最新作『LOVE』からのナンバーも織り交ぜていく。まずは打ち込みのリズムやメロウなエレピ、外山 宰のマーチング・ドラムをバックに曖昧な関係ゆえの胸の痛みを歌う「あの恋をなぞれば」。明るさの中にも少しどろっとした想いが孕む様がうねるベース・ラインに滲んだ気がした。さらに菅原が久佐賀と男女ツイン・ヴォーカルを重ねた「愛し、愛され」では、新たに洒脱な一面を見せ、序盤とがらりと違うラグジュアリーなムードを作り上げる。次いで"モアイズユーに負けてたまるか! 後半戦、必殺技ぶちかましていこうと思いまーす!"と菅原が叫ぶと「Bad Night Dancer」を投下。今度はアーバンなムードのダンス・チューンでその引き出しの多さに驚かされたが、それはもちろんいい驚きで、5人のバランスのとれたグルーヴィな音に心も身体も躍らされてしまった。
ラストは菅原がタンバリンを持って、夏っぽいナンバー「悪魔の証明」で手拍子でのコール&レスポンスもして沸かせ、"どうしてもみなさんに届けたい歌"と「YOLO」を披露。"無理しないようにしようぜ"、"ぐっとこらえなくてもいいぜ"と選りすぐりのメッセージが込められた、大きな手を広げて抱きしめるような歌に目頭が熱くなる。どこまでも温かな全9曲でそのステージを終えていった。

後攻はザ・モアイズユー。「秒針に振れて」から本多真央(Vo/Gt)と以登田 豪(Ba/Cho)のハーモニー、繊細さも骨太さも併せ持つオザキリョウのドラムで、切なく哀愁を湛えた楽曲のストーリー、そしてバンドの持つ感傷的な空気感を醸成していく。"下北沢始めようぜ。俺たちが大阪のザ・モアイズユーです、よろしく!"と本多が挨拶すると、ソリッドなイントロから「fake」へ突入。ヒリヒリとしたクールな演奏とキャッチーなサビとの行き来でぐっとオーディエンスを惹きつけ、フロアのボルテージを上げていくと、本多のカッティング・ギターから「MUSIC!!」を披露。高らかなブラスのSEも入った、太陽の光が降り注ぐような、勢いのあるはじけるポップ・チューンに合わせフロアも跳ねる。センチメンタルなナンバーでリスナーの気持ちに寄り添い、そんな日々も受け止めながらも、最後には前を向けるようにと歌う彼らの"音楽"へのポリシーが示された1曲は、確かにオーディエンスに届いているようだ。
MCではLIVEHOLIC 7周年を祝いつつ、実はオザキが加入してこの3人になった最初の頃に出演したことがあり、3年ぶりに帰って来れて嬉しいと想いを語った本多。また対バンのめ組とは初対面ながらも個人的に聴いていたバンドとのことで、念願の邂逅であることも口にした。大阪在住の彼らの目線で綴る、大切な人が上京して遠く離れてしまう物語「トーキョー・トレイン」をフォーキーに演奏し、臨場感のあるリリックでありありと描くストーリーは扇情的で、"今年こそ見れますように。大切な人と"と始めた「花火」も、ほの暗い夜道を照らすようなギターのアルペジオから情景を脳裏に浮かばせる。8月下旬のこの日にもぴったりの選曲だった。
"また必ずライヴハウスでお会いしましょう。ラスト2曲かまして帰る!"そう本多が言ってスタートした「すれ違い」では、ぐんとボリュームを上げると同時に3人も激しく動きながら雄々しくパフォーマンス。そのバンドの熱量に呼応し、フロアから力強い手拍子が湧いたラスト・チューンは彼らのライヴ・アンセム「何度でも」だ。ヒートアップした本多と以登田はさらに一歩ステージの前方に出てギターとベースをかき鳴らし、"今この場所で 歌うことの意味/ずっとずっと見失わぬように"と全力で叫んで去っていった。
アンコールが発生し、再登場したザ・モアイズユー。"めちゃくちゃ上(天井)当たってすんませんでした"(以登田)、"俺にも当たってたで"(本多)、"それはない"(以登田)、"当たった人が言うてる!"(本多)と笑いながら、"ラスト1曲やります!"と本多が言って3人が位置につくも、一瞬の変な間が空き"......何やる?"(オザキ)ときょとんと顔を見合わせた瞬間には思わず吹き出してしまったが、勢い任せの感じが実に微笑ましい場面だった。そうして仕切り直して「光の先には」で真正面からアグレッシヴにロック・チューンを届け、再び会場の温度を上げてこの日の公演を締めくくった。
[Setlist]
■め組
1. ぼくらの匙加減
2. 余所見
3. お化けだぞっておどかして
4. あの恋をなぞれば
5. キキ
6. 愛し、愛され
7. Bad Night Dancer
8. 悪魔の証明
9. YOLO■ザ・モアイズユー
1. 秒針に振れて
2. fake
3. MUSIC!!
4. 求め合うたび
5. トーキョー・トレイン
6. 花火
7. すれ違い
8. 何度でも
En. 光の先には
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