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INTERVIEW

Japanese

SWANKY DOGS

SWANKY DOGS

Member:洞口 隆志(Vo/Gt) 川村 聡(Ba/Cho) 長谷川 快人(Dr/Cho)

Interviewer:吉羽 さおり

岩手 盛岡を拠点に活動し、今年15周年を迎えた3ピース・ロック・バンド SWANKY DOGS。昨年リリースした3rdアルバム『流転』では、その時、その瞬間に湧く感情の温度感や手触りを、時にエッジィに時に優しい言葉でメロディに刻み込み、エモーショナルな歌と共に3ピースでダイナミックに編み上げた10曲が並んだ。シンプルでいて、3人でじっくりと時を重ねてきたゆえのアンサンブルの強靭さと繊細さとが、ストレートなロックを幾重にも広げた作品となったが、今回リリースとなるミニ・アルバム『ショートシーン』はそのバンドの歩みも踏まえながら、新たなテクスチャーのサウンドや、より広がりのある視野、柔軟に呼吸するバンドの今が映り込んでいる。最新作について、今のSWANKY DOGSについて、盛岡にいる3人にリモート・インタビューを行った。

-ミニ・アルバム『ショートシーン』が完成しました。今回は新しい風が吹いている感覚がありますが、同時にこれまで築いてきたファンとの関係性も改めて思い返すような、バンドの15年間の現在進行形が描かれた作品だなと感じます。ミニ・アルバムということで、よりテーマ性も濃く制作できるのかなとも思いますが、制作はどのようにスタートしたのでしょうか。

洞口:昨年フル・アルバム『流転』をリリースしたのを皮切りに、15周年ということで地元 盛岡で自分たちの企画ライヴをやりながら曲作りも並行していたんですけど、アルバムもそうなんですが、何かテーマを決めて作っていくというよりは、できた曲をどうブラッシュアップして形にしていくか、という曲単位で考えていて。今回も、10月くらいにEPくらいのボリュームで出せないかなという話をメンバーとスタッフとで話はしていましたけど、最終的な形はあまり考えてなかったよね?

川村:うん、初めからテーマを考えてはいなかったかな。

洞口:15周年だからということもなく、何曲か配信シングルをリリースしながらだったので、曲ごとに考えていたんです。

-先に配信されたものというと、8月末に「Raysman」がリリースとなりました。この曲は、もともと2012年に発表したミニ・アルバム『Raysman』のリード曲で、バンドの指針となって共に育ってきた曲だということでしたが、この曲を改めてリリースしようとなったのは。

洞口:10月くらいにミニ・アルバムを出したいですよねという話の中で、スタッフの方から"せっかく15周年をやってきて締めくくり的に作品を出せるなら、昔の曲を1曲入れない?"っていう提案をいただいて。それで全国リリースしてない、会場限定盤で出していたところから選びたいということで、「Raysman」を選んだんです。毎回ライヴでやっていた曲ではないんですけど、要所要所で、例えばワンマン・ライヴがあれば演奏はしていた曲なので、思い入れが強い曲だなというのもあって。

-この曲は歌詞も強い曲ですよね。これからバンドが進んでいくというときに、自分たちはこの曲で変えたいんだという意志がストレートに出ている曲で。

洞口:作ったのがいつくらいだっけ?

川村:10年ちょっと前になるのかな。

洞口:21~22歳の頃か。『Raysman』を出した頃は、会場限定盤ではありましたけど、まとまった作品として初めてCDを作ったときで。ツアーも回り始めて、ここからバンドとして頑張っていくぞというときの曲だったので、そういう気持ちで書いていたんだと思います。最近ではこういうアッパーなというか、「Raysman」みたいな激しめの曲はわりと少なくなってきた感じはするんですけど、もともと僕ら的にはストレートなロック曲が好きだったりもするので、当時はそれを自分たちなりに表現したいと思ったんでしょうね。

-それを今改めて演奏するならどう表現したいか、というのはありましたか。

川村:ちょっとでも新しい「Raysman」を出したいなというのはありました。20代の頃とはまた違った渋さというか、ベースラインも新しくしたところもあって。当時の思いと今のバンドの感じをごちゃ混ぜにした感じなんですけど。思い返すと、当時のものはベースがやたら動いてるイメージはありますね(笑)。今回のものは全体的にちょっと落ち着いた感は出しています。ところどころでは暴れているんですけど。

長谷川:思い入れがある曲、というのは3人の中に間違いなくあって。当時は音楽のことをまだまだわからないなかで曲を構成していたので、ほぼ"情熱"みたいな曲だったんですけど。そこから10年の時を経て、ここにこういうアレンジを入れたら気持ちがいいとか、お客さんが喜んでくれそうだな、とかがわかるようになっていて。大もとは変えてはいないんですけど、レコーディングするときのアプローチや、叩き方を考えて向かいましたね。改めて、いい曲だなと思いながらできたし、バンドが全国流通をする以前を支えてきた曲というのは間違いないので、再録できて良かったです。

-洞口さんは10年前の自分、この歌詞と向き合ってどう思いましたか。

洞口:どうなんだろうな......「Raysman」でテーマとしている気持ちは、もちろん今でもあるんですよね。ただ、そこでの細かな言葉選びや言い回しに関しては、他の昔の曲もそうですけど、そのときにしか書けない歌詞だな、言葉だなというのはあるかもしれない。僕の歌詞にはあまりフィクション、物語的なものはなくて、そのときに思っていること、考えていることしか書けないタイプなので、どうしてもそうなっちゃうんですよね。

-そういうSWANKY DOGSの原点ともなるような、"この曲で変えてやるんだ"という思いが詰まった曲がある一方で、今作のリード曲となる「hope」は、より今のバンドの思いや、ファンやリスナーに語り掛けるような思いが感じられます。「hope」はどのように作っていった曲ですか。

洞口:「hope」は、僕の個人的な作り方の話にはなるんですけど、これまでの曲とは違う歌詞の書き方をしていて。基本的には、物語的なものではないけど、ある程度脈絡があって、且つ感情的な部分では具体的に書いているものが多いんですが、「hope」に関しては抽象的な歌詞にもなっていて。サビはわかりやすいものですけど、Aメロでは"愛はそう 今はまだ"、"哀はそう 今はただ"と耳で聞いただけではどちらの"あい"を言ってるかはわからない、歌詞を見ないとどういう意味で言ってるのかわからない書き方をしているんです。もともとこの部分は英語の歌詞がはまっていて。でも、もっといい歌詞があるかもしれないというので、レコーディング段階でちょっとずつ変えたり、録り直したりしながらやっていたんです。だから、どちらかというと楽曲のほうに引っ張られて言葉を変えていった感覚だったので、そういう部分で新しいというか、今まであまりやってこなかった感じはしますね。

-リスナーやファンに呼び掛けるというか、こうしてバンドが続けてきた今があるからこそ、僕らはここにいるという言葉が伝わってくるというか。そういう思いが素直に綴られているなと感じていたのですが。

洞口:もちろんライヴに来てくれるお客さんやファンのみなさんに向けてもいますし、サビの"君の声を聞かせて"とか"僕らここにいるんだ"というのは、バンドとして"僕たちはずっとここにいるよ"という気持ちもあるんですけど。ライヴハウスや音楽を聴いているみんなというコミュニティからもっと半径を大きくして、"だって俺たち生きてるじゃん"っていうのかな、そこに僕は希望を感じているんですよね。"hope"というタイトルは曲が完成して最後に付けたんですけど、せっかく今僕たちは生きていてここにいるんだから、君の声が聞きたいんだっていう。そこに希望があるんじゃないかって気持ちだったんです。

-歌とともに躍動していくバンド・サウンドとなっていますが、サウンド作りは3人でセッションしながら作り上げたものですか。

洞口:最初に聡とふたりで、イメージ的にはこういう感じの曲を作ってみたいという話をしていて。今とはややコードは違ったけど、最初のデモからギターのアルペジオが2本絡んだフレーズはあって、そこから全体的に広げていった気がする。

川村:これは、俺が無理難題を洞口に投げてという感じで始まってるんですよね(笑)。

洞口:聡が最近聴いている、こういうバンドのこういう感じみたいなイメージをいろいろと貰って、"こんな感じ?"って言いながらデモを作っていってという感じだったかな。あまりはっきり覚えてないんですけど(笑)。

川村:そうだったと思う。その無理難題っていうのも、イントロがキラキラしていてとか、ちょっと哀愁があってとか、ざっくりとした言葉だけで洞口に投げているんですよね。そこを洞口が拾い上げて頑張ってくれてという。そこからスタジオでやってみて、展開は快人が考えていったのかな。

洞口:並行していろんな曲をやっていたんですよね。リード曲をどれにするかも、曲が出揃ってレコーディングもだいたい終わったくらいの段階でメンバーとスタッフとかと考えていたんですけど、結構どれにするか悩んだ気がする。でもスタッフや周りの人にいろいろ曲を聴いてもらったときに、一番ピタッときてたのが「hope」で。自然とこれに決まった感じありましたね。

-「誰も知らない」は空間的で心地よく広がるサウンドと、パーソナルでナイーヴな感情を綴ったギャップのある曲で。歌と一対一で向き合うようなタイプの曲で、特に冒頭の隙間のあるビートが、孤独感がありながらもどこか温かさも感じられる、エモーショナルな感じがあっていいですね。

長谷川:この感じはスタジオで合わせながら作ったのもあるし、家で考えていたのもあるんですけど。もともとこういう感じにしたいよねっていうのは洞口と話していたんです。このバンドのこういう感じがいいよねとか。空間的に広くなりそうな曲だったから、あまり詰め込みすぎないドラムのアレンジにしようとか、レコーディングでも音にこだわったり、バスドラの踏み方とかもより空間を広く使うような感じでやったりと、結構勉強になった感じもありましたね。

-アレンジが歌の世界観や情緒を引き立てています。

洞口:曲としては最後のサビが終わってから、アウトロ的に違うメロディが展開していって、メロディとかだけを聴くと爽やかなというか、明るい感じなんですけど、そこにあまり救いのない歌詞を乗せたいなという気持ちがあって、こういう歌詞になっているんですよね。明るい曲を明るい歌詞で、暗い歌詞を暗いサウンドで、というのもいいんですけど、あのメロディにどうしようもない思いや歌詞を乗せると説得力が生まれるんじゃないかなっていう気はしていたので、それが表現できた曲なのかなと思っています。

-性格的なところも反映されているんでしょうね。ひねくれているというか、ちょっと自虐も入る感じがあるというか(笑)。

洞口:そうなんですよね(笑)。まだ本チャンの歌がレコーディングできていなくて、このままだとアルバムに収録できないという感じもあって。でもどうにかしてこの曲を入れたいんだけど、どれくらいのスケジュールでやったらいいのかって話をエンジニアさんにしたんですよね。そしたら、"あぁ、あのナメクジみたいな曲?"って言われて。

川村:ナメクジ!

-すごい喩えで来ましたね(笑)。

洞口:"あ、そうなんだな"と思っていたんですけど(笑)、僕的には逆にそういう気持ちで作っていたので、そう捉えてもらって嬉しかったんですよね。

長谷川:そうだったんだ。

洞口:ジメジメした感じで。

川村:ねっとりしてるっていうかね。

洞口:エンジニアさんも冗談で言ってくれたんだと思うんですけど、僕は良かったなと思いました、その言葉を聞いたときに。

-聴いてくれる人の心境によっても、孤独でジメジメした感じが心にフィットするのか、あるいはその先に開けていく希望の感じがフィットするのかという、いろんな面を感じてもらえそうな曲でもありますよね。

洞口:聴いてくれている人の立ち位置によって、それぞれで捉えてくれたらいいなと思いますね。