Japanese
SWANKY DOGS
Skream! マガジン 2022年10月号掲載
2022.09.17 @盛岡Club Change
Writer 吉羽 さおり Photo by 菅原大輔
9月14日に約3年ぶりとなるフル・アルバム『流転』をリリースした3ピース、SWANKY DOGSが、地元岩手県の盛岡Club Changeで、ワンマン・ライヴ[SWANKY DOGS 3rd Full Album「流転」Release Oneman "Trace the 15years"]を開催した。アルバムのリリース・パーティーであると同時に、結成15周年を記念したライヴということで、セットリストに並んだのは新曲からかなりレアな曲までとバンドの歴史を追いかけるライヴとなった。
"今日は来てくれて本当にありがとうございます。楽しんでいきましょう"(洞口隆志/Vo/Gt)という言葉から、最新アルバムの1曲目を飾る「季節の変わりめに」でスタートしたライヴ。キラキラとしたギター・フレーズと、躍動的なドラム&ベースで丁寧に紡いでいくこの曲から、続く「One」ではスピードを上げる。長谷川快人のエネルギッシュなドラムに手拍子が起こり、爽快に駆け上がっていくサビとともに観客の手が上がる。アルバムは数日前にリリースされたばかりだがフロアの反応は高く、熱のほとばしる「がらんどう」のアンサンブルで早くも会場が一体となった。MCでは無事にアルバムのリリースを迎えたこと、またこのワンマンを迎えることができたことが語られる。ライヴ冒頭からの勢いのまま早口な洞口に、川村 聡(Ba/Cho)と長谷川がツッコミを入れた。このトークのリズムで、ぐっと前のめり気味だった会場の空気が和む。ここからはじっくりと、たっぷりとバンドの15年の歩みを味わう曲が並んだ。高揚感のあるコーラスが切なさを増す最新の「息も出来ない」から、柔らかに跳ねるビートが身体を揺らす「僕らの帰り道」、そして3ピースの疾走感のあるギター・サウンドで、キャッチーな歌を心にまっすぐに突き刺していく「Annie」へと続く。
また、"誰も知らないかもしれないけれど、20歳くらいに作った曲"だと、現在は完売しているミニ・アルバム『Raysman』から「世界の上で」を歌い上げた。ゆったりと紡がれるこの曲のタイム感を引き継いで、最新作からは「ルチル」や「こえ」を披露。上村奈帆監督の映画"書くが、まま"の主題歌となり、同監督によるMVも公開された「こえ」、そこから続いた「ワンダーライフ」は、ひとつの物語のように響く。"きっと こわくはないよ"(「こえ」)、"きっときっと いつでもうまくいくよ"(「ワンダーライフ」)。日常の、人生の伴走者になってくれる歌、痛みも悔しさも喜びも知るからこその歌が、力強くも優しい。言葉ひとつひとつを大事に届けていく3人のアンサンブルには、バンドで積み重ねてきた時間の説得力が加わっている。
久しぶりのワンマンとなったこの日。盛岡Club Changeは3人がまだ別のバンドを組んでいたときにも出演していたという。SWANKY DOGSでの最初のワンマンや、ツアーを回って帰ってくるのもここだった。思い出深い場所であり、ツアー・バンドとしての礎となったライヴハウスだ。ここで15周年公演を迎える喜びをMCで語った3人は、後半戦、ぐっとエンジンを踏み込んだ爆走モードで「心模様」、拳を振り上げてアグレッシヴに盛り上がっていく「Hello」、そしていつもまでもライヴハウスにいたい、音楽を奏で続ける決意表明を込めた「君が泣いてる夢をみた」へとボルテージを上げていく。そんな"ここにいる"、"いつだってそばにある音楽"を詰め込んだ最新版となるのが、『流転』からの「gift」。川村はステージから乗り出すようにしてプレイし、長谷川と強力なビートを放ち、洞口は伸びやかな声を観客に手渡す。物理的な距離はもちろん、心の距離も近い。そんなSWANKY DOGSと観客との関係性を再確認するようなライヴだ。
熱い拍手や手拍子に応えたアンコールは、15周年を迎えた思いや感謝を伝えながら、急に物販の話を始めるなど3人のトークが止まらない、リラックス・ムードでスタートした。そしてまず演奏したのは、"これこそもう誰も知らない曲では"と、こちらも完売したデモに収録された「ヒーロー」。そして2014年のアルバム『何もない地平線の上から』より「アイデンティティ」を演奏して、旧知のファンを喜ばせる。まさに"Trace the 15years"だからこその一夜となった。
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