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INTERVIEW

Japanese

"SENSOR Vol.2" 座談会

 

"SENSOR Vol.2" 座談会

CARTOON+YELLOCK:CARTOON YELLOCK
ASH DA HERO:ASH(Vo) Dhalsim(DJ)
Interviewer:山口 哲生 Photographer:Yukiya Kanda

-今回のイベントに先駆けて制作された「Judgement (CARTOON + YELLOCK REMIX)」についてのお話もお聞きしたいです。

YELLOCK:"来てもらって、出てもらって、おしまい"では旧来のイベントと変わらないし、"SENSOR"ではすでに一緒に楽曲を作っているとか、番組で共演しているとか、もう少し深い交流や交わりを持ってイベントに臨みたいと思っていて。だから、せっかく出てくれるのならリミックスをやらせてくださいというところから、1曲やらせてもらったっていうのが経緯ですね。その楽曲を持ってイベント当日に臨めるので、一番レディな状態で当日を迎えられると思って、今はワクワクしてます。

-ASH DA HEROのおふたりとしては、そういうお話が来たときの感想と言うと?

ASH:もうめちゃくちゃ嬉しかったですよね。イベントを観に行かせてもらって、僕らもぜひお願いしますって言ったら、そこからすぐにお話をいただけて。ボールを投げてすぐ返ってくるのはすごく嬉しかったですし、そのリミックスが超いいんですよ! マジで!

Dhalsim:聴かせてもらって、ウォー!! って。

ASH:自分らの曲がこうやって解釈されてリミックスされるっていうのがすごく嬉しいし、そのワンフックを経てイベントを迎えられるというのは、僕ら的にもすごくありがたいことだし。だからね、僕らも当日どうしてやろうか......っていう。

CARTOON&YELLOCK:はははははは(笑)。

ASH:やっぱり受けたまんまじゃアレですからね。

YELLOCK:この前のZepp DiverCity(TOKYO)のワンマン([ASH DA HERO LIVE 2023 "Judgement"])を観に行かせてもらっていたんですけど、この曲はこういうダンス・ミュージックに合うなとか、そういう感じで聴かざるを得ない状態で臨んじゃったんですよ(苦笑)。だから、個人的にはウワー! って観ることができずに、"この曲はこういう感じにできるな......"とか。

ASH:すでにリミックスが始まっちゃってる(笑)。

YELLOCK:海外の人たちって、普通の音源から勝手に歌のデータを引っこ抜いて、勝手にリミックスを作ったり、勝手に海賊盤を作ったりとか平気でしていて。それを"いい作品だから、これをオフィシャルのリミックスにしてやってもいいぞ"って(笑)、なぜか上に立つっていうことがたまにあるんですよ。それを面白がって、"じゃあ入れてやるよ"みたいな感じで成り立ったりするときもあったりして。もちろん今回のリミックスはそういうものではないんですけど、話がまとまる前からもうリミックスし始めてましたね。誰になんの話も通さず、勝手に(笑)。それぐらい前のめりではありました。

CARTOON:僕自身ももともとロックのDJをしていて、そこからブレイクビーツのDJをして、全然うまくはならなかったけどスクラッチもやってみたりとか。

YELLOCK:そうなんだ?

CARTOON:そう。そういう経験もあったりして。だからWOMBで初めて会ったあと、どういう楽曲をどういうふうにやっているのかなと興味があったので、ライヴを観に行く前に曲を聴いたんですけど、(YELLOCKと)まったく同じ聴き方をしてましたね(笑)。"これだったらこういうことができるんじゃないかな"とか。そこは別に示し合わせてなかったけど(笑)。

ASH:やっぱDJは曲を聴くと、頭の中でリミックスが始まるんですね(笑)。

CARTOON:リミックスって、今はもう本人たち同士が直接会わなくてもデジタル・コミュニケーションだけで進められるし、マーケティング的に、例えば南米のアーティストと一緒にやったら自分の曲が南米に流れるからとか、マネージメントを通して話をするだけで、本人たち同士が話さなくても作られるパターンが実はめちゃくちゃあるんですけど。でもやっぱり"SENSOR"は現場を大事にして、お互いの音楽を聴いて、その熱のまま作るというのが正解なんじゃないかなって。やっぱりライヴってめちゃくちゃ大事で、僕もASHさんたちのライヴに行って思いついたもののほうが多かったですし、おふたりも僕らのところに遊びに来てくれて、感じてくれたものがあって、だからやろうというふうになった。そういった部分が"SENSOR"というイベントとしてもそうだし、コンテンツとしての価値になっていくんじゃないかなって、おふたりの話を聞いていて思いました。

-リミックスされるにあたって、「Judgement」(2023年2月リリースのシングル表題曲)をチョイスされた理由と言うと?

YELLOCK:ライヴを観させていただいたときに、まぁすごかったんですよ。盛り上がりというか、お客さんとバンドのコミュニケーションが。それに圧倒されてしまって。でも、そこが決め手になったというよりは、"これ、できるかな"というところですね。この曲がいい、でもこれをリミックスし切れるのか? と半信半疑だったけど、でも逆に、ならばトライしようというか。

ASH:なるほど。

YELLOCK:ライヴでやられていた曲の中でも、これはすぐにリミックスできるなと思った曲もあったんですよ。でも、それだと予定調和というか、"このアーティストとこのアーティストが組み合わさったらこうなるよね"というものになってしまうので。だから選んだ理由としては、今勢いがある楽曲だったというのもあるけど、これはムズそうだなと思ったのがトリガーになったというか。

ASH:(「Judgement」は)BPMが180だから、DJ的にはつらいですもんね(笑)。

Dhalsim:僕もちょこちょこ自分たちの曲をリミックスしてるんですけど。

ASH:そうそう。バンドで作った楽曲を、ふたりで稼働するとき用にリミックスしていたりして。"この曲、ハウスにしてみたんですけどどうすか?"みたいなことを、僕らも実はやってるんですよ。

Dhalsim:ただ、あのBPMでがっつりリミックスをするとなったら、僕はちょっと嫌だなって(笑)。

ASH:大変だよね? ハーフで取っても90だから半端じゃん。だからまずBPMを変えるところから始めて、ビートをどうするかとか。

YELLOCK:しかもバンドがめちゃくちゃテクいんですよ。コードもすごく変わるし、ベースラインめちゃくちゃ動くし、スクラッチ入ってるわ、3連でラップするわ、なんじゃこの曲! みたいな(笑)。

ASH:そうそう(笑)。展開多いんですよ。

YELLOCK:4曲ぐらいをくっけている感じで。

CARTOON:構成的にはマジでそうだよね。

ASH:そうそうそう、マジでそうなんです。だからリミックスするのは大変だったと思いますけど、でもたしかに、だからこそやろうっていうのはありますよね、きっと。

YELLOCK:そうですね。そこが面白かったポイントです。

CARTOON:僕としては、ライヴを観ていて、僕が好きなミクスチャー感があったんですよね。さっき言ったような恵比寿のみるくとか、僕は吉祥寺のSTAR PINE'S CAFEっていうところでもDJをしてたんですけど、バンドがいて、DJがいて、MCがいてというのは、自分の原体験みたいなものとしてあるし、Zeppなのでライヴハウスではあるんですけど、感覚としてはあの当時に感じたものとすごく近くて。それが自分の思うダンス・ミュージックでもあるんですけど、アガっている人たちがそこにたくさんいるというか。それは踊っている人がどうという話でなくて、ライヴに来ている人たちが音楽を聴いてワー! ってなっている感じがあって。

ASH:モッシュとかダイブとかじゃなくてってことですよね。

CARTOON:そうそう。ヴァイブスがアガっているっていう。だから一緒にやってみたいなとか、心の会話ができるんじゃないかなって思いました。

ASH:それは本当に嬉しいです。モッシュとかダイブって、ロックとかパンク、ハードコア、ラウド・ミュージックのシーンではありますけど、それって他のシーンに行ったときにまったく通用しないというか、本当にそこだけの小さな身内ノリでしかないと思っていて。だから俺らが目指しているのは、バン! って音が1発鳴った瞬間にハンズアップできるかどうか。そういうサウンドを追求しているところがあるので、今のお話はめちゃくちゃ嬉しいです。

-ASHさんとDhalsimさんは、CARTOONさんとYELLOCKさんの音楽であったり、今回のリミックス音源についてどんな印象を持ちましたか?

ASH:おふたりとも音楽的にすごいんですけど、音楽のルーツはそれぞれ全然違うところにあるんだろうなっていう感じがものすごくあって。呼応し合う部分と、お互い全然違う部分があるからこそ、一緒にやられているところもあると思うんですけど。今回のリミックスも、おふたりがそれぞれリミックスしたバージョンがあって、どっちもめちゃめちゃ良かったんです。YELLOCKさんからは、俺らのフィールドでこの曲を演奏すると、コード進行はここまで引き算してもちゃんと成立するっていう解答を貰った感じがあって。

YELLOCK:ははははははは(笑)。

ASH:あと、こういうビートで押し切っていくと、3連のラップもグルーヴするっしょ? とか。それを食らって、はいはいはいはい! って、思わず部屋でゴン・フィンガーみたいな。YELLOCKさんがその強みを出せるのは、もともとバンド出身というところもあると思うんですよね。バンドのビート感とグルーヴというものを、理解しているというよりは、ご自身がライヴハウスのステージに立って感じてきたものを咀嚼したうえでリミックスしてくれたんだろうなって。ロック・バンドへのリスペクトと愛を感じるリミックスだなと思いました。

YELLOCK:嬉しい。

ASH:CARTOONさんはまた全然違った感じで、ある種、俺らの音楽を自分たちのフィールドで表現するとこうなるっていうものだったんですよ。

CARTOON:そうだね。

ASH:それがもう僕個人としてはドツボな感じで。時間帯で言うとね、結構深い時間。だいだい2時半ぐらい。

YELLOCK:具体的だ(笑)。

ASH:2時45分のショーケース終わりぐらい。酒も結構回ってきてるときに、バーン! って流れたら気持ちいいー! ってなるような、すごくドープなサウンドで。CARTOONさんがしてくれたリミックスは、原曲を完全にぶっ壊してくれているんですよ。そのぶっ壊したうえでさらに面白いと思ったのが、「Judgement」の歌詞は基本的に日本語ですけど、こういうふうに響かせると日本語っぽく聴こえなくなるっていう。"あれ? 俺そんな感じの英語歌ってたっけ?"って自分で一瞬思うぐらい、英語というか、もはや英語でもないような違う国の言語みたいになっていて。だからすごく斬新だったんですよ。

YELLOCK:ビートに合わせたんですよ。グルーヴにASHさんたちの声を合わせていったんです。

ASH:それも、単純にBPM180を半分にして90にしたとかじゃなくて、抜本的にそもそもテンポが違うっていう。

Dhalsim:(BPM)140ぐらいでしたよね?

CARTOON:そう。

ASH:だから"俺のフィールドでやらせて?"っていう感じのリミックスなんですよ。それもそれでゴン・フィンガーで。こうなるんや!? っていう。

YELLOCK:リミックスって、ともすれば冒涜とは言わないけど、楽曲の要素をぶっ壊したり、作り手の思いを踏みにじるような行為というか。もちろんこっちにそういう意図はなかったとしても、"そこはそうじゃないんだよ"っていうオリジナルの人たちの思いもあると思うんですよ。だからそこのせめぎ合いですよね。アプローチとしてはいろいろできるけど、ここはこういう思いでこれを乗せているんだろうなというところを、自分なりに解釈して乗せ替えてみたりとか、もしくは楽曲の中で遊びの部分があって、そこは彼らのオリジナリティだから下手に触れないなとか。そうやってひとりでコミュニケーションしていく感じで面白かったですね。

ASH:CARTOONさんもYELLOCKさんも、楽曲はもちろん、僕らへのリスペクトを感じたし、純粋に音楽人として"そういうやり方があるんだ!? うわー、食らっちゃったな"っていう刺激もありましたし。だからむちゃくちゃ楽しかったです。リミックスという行為自体がものすごくクリエイティヴだし、普通にバンドをやっているだけでは得られないものだと思うので。