Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

THREE1989

THREE1989

Member:Shohei(Vo)

Interviewer:真貝 聡

THREE1989が、映画"いてもたっても。"で初めて映画主題歌を担当した。映画に登場する男女の別れと出会いを描いた内容となっており、タイトルは"待ち逢わせ"。制作は順調に進んでいたのだが、レコーディングの数日前にShoheiの祖母が他界し、急遽歌詞を追加することになる......。今作は映画だけでなく、Shohei自身のパーソナルなメッセージも込められた重要な曲。「待ち逢わせ」完成に至る経緯、そして去年avexからメジャー・デビューを果たした彼らは、この1年でどんな気づきや成長をしたのか、フロントマンのShoheiに話を訊いた。

-僕がShoheiさんにインタビューするのは、2019年にリリースした『Kiss』以来なんですよ。

あー! じゃあコロナ前ですよね?

-どんな話をしたのかなと思って、記事を読み返したんです。そしたら"昨日、片想いの恋愛が終止符を迎えまして"と3人に失恋を打ち明けるところから始まって。

おぉ! ヤバい始まりですね!

-"その気持ちを落ち着かせるために、みなとみらいへひとりでドライブに行って。その車の中で『Kiss』を聴いてました。僕の傷心した気持ちをTHREE1989が優しく包んでくれました"というインタビューでしたね。

いやいや嬉しいっすね! それからは人生的にどんな感じなんですか?

-僕も30代なので恋愛をしても"これで結婚かな"とか、仕事でも"何歳までいくらは持っておかないと"とか、何をするにも後先を考えるようになっちゃいましたね。

考えますよね。周りは転職をする時期だったりするじゃないですか? 僕は地元が熊本なんですけど、ああいう安定した街にいても、やっぱりみんな悩んでて。"これからどうしよう"みたいなタイミングでもあるので、一番悩むときかなって思いますよね。33、4歳っていうのは。

-ちなみに東京と熊本では、同世代でも雰囲気や考えていることは違いますか?

違いますね。人の雰囲気というか、(熊本は)やっぱり変なギラギラもないのかな。東京に踏み出した瞬間に若者はギラギラしてるし、サラリーマンはまっすぐした目で仕事だけに生きてる感じで、東京スイッチみたいなのはあるかもしれないですね。

-地元の同窓会って行きます?

全然行かないですね。それこそ今年1月に、1ヶ月ぐらい熊本に帰ったんですよ。というのも、THREE1989を長年やってきて、去年avexからメジャー・デビューをしてアルバム(『Director's Cut』)を出した段階で"これからどうしていこうかな?"と悩んでいたので、1回地元に帰って立ち返ってみようと思って。廃校になった母校の小学校に行ったら、1台のピアノが置いてあって。そのピアノの前に座って何も考えずに弾いていたら、昔の友達に会いたいなと思ったんです。10年ぶりに中学校の友達とかと会って、ちょっとお酒を飲んで。みんな結婚したり、仕事で昇進したりとかしてて。東京はフリーでやってる友達が多いので、昇進とかはないけど、新しいものを作っては壊して、また別の新しいものを作っては壊してみたいな。地方は積み上げるスタイルだけど、東京は新しくどんどんリノベーションしていく感じなのかなって。別世界に感じましたね。

-自分を見つめ直そうと故郷に戻って、実際に何か変わりました?

変わりました。自然の中に家があるので、風通しがいいんですよね。音楽を1回オフにして、THREE1989っていう枠を1回取っ払うことによって出したものがたくさんあったので、デトックスはできたのかなと思います。"もう1回東京で頑張っていこう!"みたいな踏み台ができた感じでした。

-デトックスというのは、毒素とか老廃物を出すことですよね? いつから溜まっていたものなんですか。

上京したのがちょうど10年前なので、その10年間で溜まったものですかね。側やステータスというか、音楽をするうえで別にいらなかったもの。そういうものがちょっとずつ剥ぎ取れていった感じがしました。

-側っていうのは?

それこそ『Kiss』のインタビューをしていただいたときは、僕が出演した"テラスハウス"でのイメージだったり、THREE1989としてのイメージだったり。そういうのを自分で勝手に作り上げてしまっていたので、今思えばいらなかったんじゃないかなって。

-『Kiss』のときに"THREE1989の音楽はキャッチーなんだけど、音作りではテクニカルな部分が多い。ちゃんと音楽的に見たら面白いバンドですよね"という話をさせていただいて。ただ、当時はメディアも"テラスハウス"を含め、トピックを取り上げる機会が多かったですよね。

それを引きずりすぎていたのが自分らでも良くなかったし、そこを1回外したいなと思ったタイミングでもあったんで。もちろん大事にはしたいですけどね。自分が積み上げたものではあるので。

-『Kiss』のときは"30代を迎えたのもあり、このアルバムで愛を歌おうと思った"という話をしていたんですね。

ヤバいことを言ってますね!

-ただ今年発表した「イチグラム」(2022年5月配信リリース)とか「あぁ今夜」(2022年8月配信リリース)はギアが変わった気がして。

たしかにそうですね。自分というものが、めっちゃ入れ変わってるかもしれないです。結婚をして家族ができて、コロナ禍で自分と向き合う時間がすごくできたので、目に見えないものも大事にしていこうとか、そういう感性を取り入れたと思うんですよね。「あぁ今夜」はお盆をテーマにしてるんですけど、亡くなったご先祖様がこっちに帰ってきて、はたまた昔聴いてくれたリスナーの大事な人が年に1回帰ってくるとか。それはライヴでも一緒じゃないですか? やっぱり今日という日は、1日しかないし、そういう日を大事にしていこう、というメッセージや日本人のアイデンティティの曲です。ああいう日本人らしいメロディを洋楽と合体させて、表現していくことがTHREE1989らしさなんじゃないのかっていうのが「あぁ今夜」。

-「イチグラム」はどうですか?

それこそ熊本で作った曲なんです。東京という場所がすごく嫌になった時期もあったけど、また東京に帰って大好きな人たちに対して、いい音楽を作っていきたいと思いまして。"そのためには頑張らなきゃいけないよね"という自分への応援歌が「イチグラム」に表現されています。これまでTHREE1989って、大枠で言うと恋愛ソングのバンドだったんですけど、そこを1回外したんです。まぁ大きなくくりでは、どの曲も愛に帰結しますけど「イチグラム」とか「あぁ今夜」に関しては、人生を歌っているので。表現の幅はすごく変わってきたのかなって感じますね。

-以前は男女の絵をイメージして曲作りをされてましたよね。

そうですね! 楽曲のストーリーを自分なりに考えて、描きたい景色を俯瞰して書いてたんですけど、今年ぐらいから主観的というか、自分の内面を曲に表していこうと思って。たしかに、軸が変わったのかもしれないですね。

-なんのために音楽を作るのか? という根本的なところも変わってきましたか?

変わりましたね! 3年前は"紅白(NHK紅白歌合戦)"に出たいとか、有名になりたいとか、応援してくれてる地元の人たちにいいところ見せたいとか。そういうことが頭の中にあったんです。だけど、純粋に音楽というものと向き合ったことによって、もっと大いなる何かに届けたいなって。音楽が捧げものになったり、背中を押す1曲になったり、ポイントが変わってきたのかなって思います。もっと深いものになっていった感じはしますね。

-知り合いの映画監督やクリエイターも"30代になって、ちゃんと人のためになる作品を作りたい"と言うんです。バズるとか数字じゃなくて、ちゃんと意味のあるものにしたいって。そういうフェーズにTHREE1989も突入したのかもしれないですね。

そうだと思います。1回外にバーって放出するタームがあって、内側を見つめ直すタームがあって、今はその情報をミックスして出すターム。段階があるのかなって感じがしますね。だから、いい意味で結果は捨てちゃったというか。結果って運任せみたいなところもあるじゃないですか。もちろん大事な曲なので、1曲出したらたくさんプロモーションして、売れたほうがみんな幸せになるので、それはもちろん嬉しいんですけど。どこまでやったとしても決めるのは世間だし、神様だったりもする。そこは1回無視して、本当により自分たちが"これでいいんだ"と思えるというか、世の中に残り続けるものになればいいのかなっていう考え方に変わった感じがします。