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INTERVIEW

Japanese

THREE1989

2021年11月号掲載

THREE1989

メンバー:Shohei(Vo) Shimo(Key) Datch(DJ)

インタビュアー:秦 理絵

あえてルールに則らないこと。素の自分を曝け出すこと。それが、"聴く映画"をコンセプトにしたメジャー1stフル・アルバム『Director's Cut』で、THREE1989が掲げていた裏テーマだった。全26曲74分。フル・ボリュームで詰め込んだ今作の収録曲たちは、これまで"ダンス・ミュージックであること"を最重要課題にしてきた彼らが、そんな自身の在り方を踏襲しながらも、より楽曲ごとの世界観を大切にした自由なサウンドにアプローチしている。7本のショート・ムービーの集合体のような構成だが、そこに散りばめられた断片を拾い集めていくことで、今の時代にTHREE1989が残したいものが浮き彫りになる。彼らはどのようにして、この実験的でユニークな1枚を作り上げたのが。メンバー3人に話を訊いた。

-"聴く映画"をテーマにしようと思ったのは、どういうきっかけだったんですか?

Shohei:去年発表した楽曲から"長編のMVを作ろう"みたいなことをやってきたんですよ。そこから、映画を音楽で表現したら面白いんじゃないかっていう話がまずスタートしましたね。もともと僕らは作りたいものが多すぎるんですよ。ひとつのコンセプトだと収まりきらなかったりもするので。だったら、ここまでリリースしたシングルも全部ストーリーとして繋げたら面白いんじゃないかなって思ったんです。

Datch:今回は今までで一番デモを出し合ったんです。トラックだけとかも含めて60曲ぐらいあったんじゃないかな。かなり曲の幅もあったから、そこからパートごとに分けるっていうアイディアも出てきて。

Shimo:今回はわりと歌詞をフォーカスした作品なんですよ。今まではダンス・ミュージックを軸にやってきたんですけど、映画っぽい雰囲気作りというか。より情景をイメージしやすくなるような作品を目指したんです。

-今Shimoさんが言ってた話に通じるんですけど、THREE1989って、こういうコンセプトで作品を作りそうにないイメージだと思うんですよ。

Shohei:あ、そうやって思ってもらえるのは嬉しい。ギャップを見せたかったので。

-今までのTHREE1989はダンス・ミュージックの心地よさに比重を置いていたと思うんですね。サウンドと言葉の比重で見たら、サウンドのほうが重かった。それを変えてもいいと舵を切れたのはどうしてですか?

Shohei:うーん......そうだなぁ。

Shimo:2年前ぐらいのライヴのときにさ、(Shoheiが)"やっぱり伝えたいよね"って言ってたよね。"こういうご時世に突き刺さるメッセージを歌いたいね"って言ってたのを覚えてるんですよ。気持ち的に変化があったのはそのへんかなって。

Shohei:うん、かもしれない。あとは今年の1月に出したベスト盤(『THE BEST THREE1989 -Don't Forget Dancing-』)に新曲として入れた「HARU(仮)」っていう曲があって。あれも大きかったと思います。THREE1989が作るトラックって歌詞にそこまで意味を持たせすぎると、ダンス・ミュージックとして成り立たなくなるというか。いい意味で崩せなかった自分がいたんです。でも崩していいのかなって。もともと僕らはシティ・ボーイでもないし、田舎の生まれなので。もっと人間的なものを曝け出したかったんですよね。

-ベスト盤のインタビューのときに、「HARU(仮)」って、窓の外を見てたら歌詞が出てきて、その歌詞から曲を作ったって言ってましたよね。

Shohei:あ、そうですね。本当にそれぐらいの感じで曲を作れたのが今回のアルバムのきっかけだったと思います。コロナ禍で全然ライヴもできなくて、3人が離れ離れになったのも大きかったかな。リモートで曲を作るってなって、みんな孤独を味わったんですよ。ひとりで考える時間が増えると、みんなでパーティーしていたときに出てきた歌詞とはまったく違うものになるんです。そういう世界に戻れないかもしれない。今後10年~20年この世界が続くかもしれない。って、なったときに、このCDを手に取ってもらった人が家で、ひとりで聴いたときに楽しめるような内容に切り替えていきたいなって思ったんです。

-さっきのDatchさんの話からすると、アルバムを7つのパートで構成したのは最初から決めていたというより、曲ありきだったんですか?

Shohei:曲ありきですね。作りながらできていった感じかもしれないです。(先行配信の)「エゴイスティック渋谷」と「夏ぼうけ」は、アルバムのことを考えて作ったわけではなかったので。そこを繋げるのは難しかったですね。

-1本の長編映画のようにも感じるし、7つの異なるショート・ムービーの集合体のようにも受け取れるなと思ったんですけど。そのへんは両方で解釈できるようにしたんですか?

Shohei:どうだろうな。最初に人生のパートみたいなところから始まって、恋愛とか、その枝葉にある出来事で感じるモヤモヤしたものを表現していて。で、最後は「エゴイスティック渋谷」で現代の僕らっていうところに辿り着くんですけど。僕の中では、1本の軸として命っていうものはあるけど、各パートで聴いてもらって、いろいろな答えを出してもらうのが楽しいかなと思いますね。

-今はストリーミングで1曲単位で聴かれる時代だし、長編は好まれない傾向もあるじゃないですか。

Shohei:はい、わかります。

-そのうえで74分に及ぶ大作にチャレンジしたことに対して何か想いはありますか?

Shohei:ひとつはストリーミングで聴いてもらっても、26曲もあるから、逆にどこかは刺さるだろう、みたいなことは考えてます。いろいろなジャンルがあるので。あとは僕らがCD世代の真っただ中なので。今後もしかしたらCDがなくなるかもしれないっていうときに、これがもう時代の締めになるかもしれないっていう気持ちもあって。フルマックスでちゃんと残るものを出そうよっていうのは思ってましたね。

Datch:いい意味で、THREE1989からの文化の伝承というか。

Shohei:歌詞カードは見てほしいよね。

Shimo:パンフレットみたいな役割になってるんですよ。映画のあらすじが書いてあるので。読みながら聴くことでより内容をイメージしやすくなると思います。

-サウンド面で言うと、ベスト盤のインタビューのときに、ルーツを消化していくのはもう一段落ついたから、これからはさらに踏み込んで、"え、これ何?"みたいな新しいTHREE1989を作っていきたい、という話をしていて。

Shohei:あーはいはい。

-まさにそういうものを目指したんじゃないかなと思いましたが、どうでしょう?

Shohei:まさにその通りで、今回は今まで自分たちが使ったことのない音がたくさん入ってますね。80年代の洋楽の感じだったら、これを使わなきゃいけないっていうルールみたいなものがあるじゃないですか。

Datch:暗黙のルールみたいなものがね。

Shohei:それを今回は全部度外視しました。

Shimo:直観で一曲一曲やっていけた感じですね。何も考えないで出てくるものの中に今まで自分が聴いてきた音楽の要素が絶対にあるし。最初にデモを聴いて、情景をイメージして、それに合った音を色づけしていく。ほとんどの曲がそういう作り方でしたね。

-映像が目に浮かぶような音にしたかったんですね。

Shohei:そう。映画を軸に考えてたから、いろいろな音を使おうっていうのができたんです。

Datch:スキット(インタールード)だからこそ使えた音もあるよね。シングルとかでは表現できない音色の選び方とか。

Shohei:いっぱい変な音が入ってるもんね。iPhoneの着信音とかさ。

Datch:低すぎるベースの音とか。

Shohei:クリスマスの大聖堂の鐘の音とか、雪の上を歩く音もあるね。

Datch:インタールードの尺八の音とかも、絶対シングルでは使わないですよね。

-特に第2章は和っぽいテイストを意識した艶やかなサウンドになってますよね。そういう日本人ならではの表現を意識したところはありましたか?

Shohei:あ、それはあったかもしれないです。10代とか20代のときは、アメリカにとても憧れがあったんですよ。で、今回自分を振り返る機会があって、自分のアイデンティティに立ち返るというか、日本の勉強をしたんです。日本の音楽とか。そういうところから日本の音をスパイスとして入れていきたいねって話はしましたね。

Datch:20代のときは派手な音楽が好きで、みたいなところがあったんですよね。今はちょっと落ち着いた音楽が好きになってきたというか。日本のわびさびとか抜きの文化、あえて間(ま)を作るのってすごい素敵だなっていうところに戻ってきたんです。

-日本人がやってるという誇りを込めたかった。

Shohei:あ、本当に誇りだと思います。日本語の響きってあると思うんですよね。僕は英語を喋れないですけど、そういうのを取り繕って歌うよりも、自分の中から出てくる日本語で表現したほうが、ちゃんと想いが宿るんじゃないかなと思うんです。

-「夏ぼうけ」という言葉遊びも日本語の妙ですし。

Shohei:そう、あそこはSummerなんとか、みたいな言葉を使っても良かったんですけど。古き良き日本の言葉を使うことで、いい違和感が生まれたかもしれないです。