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INTERVIEW

Japanese

THREE1989

2021年11月号掲載

THREE1989

Member:Shohei(Vo) Shimo(Key) Datch(DJ)

Interviewer:秦 理絵

-実験的な曲と言えば、第4章の「Hot Chocolate」ですね。ラテンの常夏っぽいビートと、クリスマス・ベルが鳴ってるっていう。夏なの? 冬なの? みたいな(笑)。

Shohei:あれは最初めっちゃ反対されましたよ、みんなに。絶対にラテンがいいっていうのと、ラテンは変だっていう意見が割れたんですよ。

Datch:ひと悶着あったなぁ。(笑)。最初、ハイハットは三連で刻んでるような感じで3拍子っぽい感じで作ってたんですよ。なのに急に"ラテンとか合わんかな"って。

Shohei:なんでかっていうと、歌詞の世界観として、クリスマスにひとりの女性が家で(恋人を)待ってるっていう曲なんです。クリスマス・ディナーを作ったけど、全然帰ってこないな、みたいな。でも、サビでは帰ってくるんです。そういう待ってるときのワクワクを想像させるとうか、高揚するような曲調ってなんだろう? って考えたときに、ラテンかな、みたいな。常夏のふわふわした感じにしたかったんです。

-見えてる景色と心の中の両方を表したかったんですよね。

Shohei:全然ルールには則ってないですけどね(笑)。

-第6章の「S.O.S」からの「SAKASAMAの世界」は、あっこゴリラさんとケンチンミンさんをフィーチャリングに迎えたヒップホップですね。

Shimo:今までにないですね。ラッパーの方とやる機会もなかったですし。逆におふたりもTHREE1989みたいなポップスのビートでやる機会が多くはないみたいで。お互い新しいことに挑戦できたのが面白かったです。あれはトラックが先だったよね。

Datch:そうそう。全然メロディが違うものが先にできてたんですけど、このふたりとするにあたって、パーティー色を出したんです。みんなで歌えるサビを作るとか。

Shohei:KICK THE CAN CREWとかRIP SLYMEとか。あの時代の良きパーティー感みたいなサビにしたかったんですよね。

Shimo:ふたりとも僕らと同じ世代っていう共通点があって。歌詞は、上京してきたときの気持ちと重なるものがあるんですよ。僕、どっちかと言うと、「S.O.S」のほうに感動しました。あの尺にしっかりメッセージを収められるのはプロだなって。

-リリックはそれぞれが歌っているところを書いた感じですか?

Shohei:そうです。最初に"SAKASAMAの世界って何?"っていうところから説明して。僕らが上京したり、音楽を始めたときのハタチ前後の自分に対して、今の自分から何か伝える。タイムスリップじゃないですけど、電話で伝えるみたいな感じですね。そのテーマで書いてもらったら、ふたりとも"そういう時代があったんだな"っていう感じになったんですよね。あっこゴリラじゃなくて、あっこちゃんだったんだとか。そういう時代を経て、今も頑張り続けてるんだなっていうのはリリックから感じ取れて。ケンチンミンのパンチラインで、"カップラーメンはちゃんと待て3分間"ってあるんですけど、待つことって大事じゃないですか。自分の番が回ってくるのを待つときには焦りすぎず、諦めず、怠惰にしない。その待つ時間が一番キツいと思うんですけど。

-深いですね。果報は寝て待て、というかね。

Shohei:うん。ちゃんと3分間待ったら、めっちゃ美味いカップラーメンを食べられるっていうのは人生の言葉になってる。大人になった僕らからすると、めっちゃ響くんですよね。ハタチの僕が聴いても、何言ってるんだってなってたと思うんですけど。

Datch:2分半でも美味ぇよってなるよね(笑)。

一同:あははは!

-「SAKASAMAの世界」と「Winter Groove」を中心に、第6章は過去がテーマになってますよね。この章ではどんなことを伝えたいと思ったんですか?

Datch:人生の中で過去のことを振り返る期間って、次への助走のために必要だと思うんですよね。あの頃良かったな、けどまだ自分たちにはこれからがあるよね、みたいな。次へのステップに進むためのタームというか。今までを見つめ直して、良かったものは残して、捨てるものは捨てて次に行く。そういったメッセージもあると思います。

-今と未来があるのは過去があるからで、それが人生であるという意味では、この作品にはなくてはならないパートですよね。

Shohei:たしかに。その考え方は自分でもしっくりきますね。ただぶっちゃけると、僕は単純に映画が好きなので。"バック・トゥ・ザ・フューチャー"みたいなパートを作りたいっていうことだけだったんですよ。タイムリープ系を入れたいなって。

Shimo:映画と言えば、SFみたいなね。

Shohei:そうそう。ぐらいの気持ちだったんです(笑)。

-最終章の「エゴイスティック渋谷」は先行シングルとして発表されていた曲ですけど、アルバムの最後のほうに出てくると、また意味合いが濃くなるなと思いました。

Shohei:これが現在の自分たちっていう感じですね。

-渋谷の雑踏を表したようなコラージュっぽい音の作りがかっこいいですね。

Shimo:これも混沌としてるんですよね。よくあるジャズ/ヒップホップでは終わりたくないなっていうのがあって、間奏をアンビエントにしたり、そのあとにネオ・ソウル風のコードでキメを作ったり。3人らしさを表現できたと思います。

-この曲で渋谷っていう限定した地名を入れたのは、どんな想いがあったんですか?

Shohei:僕らがずっとやってきた場所っていうのもあるし、今の渋谷を残しておきたかったっていうのがあるんですよね。書き残しておきたかった。

-CDというカルチャーを残しておきたかった、という想いにも近そうですね。

Shohei:今後、東京がどうなるかわからないと思うんですよね。40年後とか50年後の話ですけど。自分の孫とかに、渋谷ってこういう町だったんだって思ってもらえるような、歴史の書みたいなものを残しておきたかったんですよ。ストリーミングっていう図書館の中に。言うならば、日記みたいなものかもしれないですね。僕らは渋谷っていう街が大好きで、そこで夢を追って生活してたんだよ、いろいろな出会いがあったんだよ、別れがあったんだよっていうのを書き記しておきたかったんです。

-この街には出会いと別れもあったし、そこで希望と絶望を感じてきたというような。

Shohei:あぁ、そうですね。希望と絶望があるし、その振り幅は本当にデカい街だと思うんですよね、渋谷って。

-最終章の終わりにボーナス・トラックとして収録されている「明日風交差点」がとてもよかったです。素朴で温かい歌ですよね。

Shohei:このアルバムを制作したのが北海道のニセコっていう町なんですよ。そこで山を見ながら、自然を感じながら、セッションしようぜって言ってできた曲なんです。この曲で言いたかったのは、時代に何を残すとか、何を残したとかじゃないねっていうか。今が本当に楽しくて心地よくて、息を吸えて、飯を食えて、みたいな。それだけでめっちゃ幸せじゃない? みたいな心を表した曲です。

-これは第1章で問い掛けた「A. me too」の答えなのかなと思いましたが。

Shohei:答えは聴いてもらった人それぞれでいいと思うんです。「明日風交差点」は自分たちなりのアルバムを作り終えての感想というか。その日の答えってだけかもしれないですね。明日には答えは変わるかもしれないので。

-ふたりはセッションでの曲作りはいかがでしたか?

Shimo:セッションってミュージシャンの素の部分が表れると思うんですよ。そういう意味では、「明日風交差点」は一番3人らしい曲になったと思います。裸のままの自分たちらしさを大切したっていうところで、3曲目に入ってる「裸」にもリンクするんですよね。

Datch:アレンジとかも何もしてないですからね。むしろ最終的にはセッションしたときよりもビートを抜いたし。そのまま素の3人を出したかった曲なんですよね。

-そうか。今回のアルバムは素であること、ありのままであることが裏テーマだったんですね。

Shohei:ほんとそうなんですよ。今3人ともその段階にいるんです。いろいろなものを盛りつけるんじゃなくて、どんどん脱ぎ捨てていく。いらないものを取っ払ったときにあるのが本当のTHREE1989だし、本当の自分たちがやりたいことだし、それがどんどん見つかってくる。その最終的に残ったのものが一番面白いね、みたいな話をしてましたね。