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INTERVIEW

Japanese

ASH DA HERO

ASH DA HERO

-では、WANIさんはいかがでしょうか。ASHさんからメンバーになってほしいという話があったときのこと。

WANI:俺は"来たかぁ......"でした。

-だいぶ険しい表情をされてますけど(笑)。

WANI:(笑)なぜかって言うと、単純にタイミングが悪かったんですよ。自分もずっとバンドをやってきて、インディーズ/メジャーといろいろ経験してきたけど、これからどうしようかなって考えていた時期でもあったし、バンドをやめてからサポートの仕事とかをいろいろやらせていただいて、こういう道もありかなって。別にドラムをやめているわけじゃないし、こういう人生もいいかもなって切り替えたタイミングで"バンドやらないですか?"っていう話が来たんで、今はちょっと考えられないかな......って1回断ったんです。

-そうだったんですね。

WANI:そしたらそのすぐあとに"ちょっと話しません?"ってASHと、ASHのマネージャーに夜の公園に呼び出されて、熱い言葉を貰ったんですよ。それが、なんかもう、シチュエーションも言葉も、不良漫画がそのまま現実に出てきたような感じで(笑)。それぐらいすごくエモいことがあって。俺も結局ずっとバンドでやってきた人間なんで、やっぱりバンドで売れたいっていうのが心の奥底にずっとあって、そこをASHに救い出してもらったというか。それで、じゃあもう1回やるか! って。

-改めてバンドとして活動し始めて、やっぱりバンドっていいなという感覚が強いですか?

WANI:そうですね、めちゃくちゃ楽しいです。やっぱりやって良かったなって思いますね。ASH DA HEROのサポートをやってたときは、Dhalsimのことは知らなかったけど、Sato君とナル(Narukaze)君とは一緒に演奏したりもしていて。でも、そこまで仲良くというか、友達みたいな感じではない状況だったので、コミュニケーションを取るところから始めて。最初はちょっと距離感あるなと思ったんですけど、一緒に過ごしていく中で、どんな音楽が好きだとか、他愛もない話とかもしたりして。今は楽しくやってますね。

ASH:シャンプーしあう仲になりましたね。

-シャンプー、ですか?

WANI:永遠にシャンプーが終わらないっていう。

-あぁ! 泡を洗い流してるところにずっとシャンプーをかけられるっていう(笑)。

WANI:そういうくだらないことをやるような仲に(笑)。

-距離あったらまずできないことですね(笑)。

ASH:ゼロ距離ですよ。

-ですね(笑)。Dhalsimさんはいかがでしょうか。お話が来たときに思ったことというと。

Dhalsim:俺はもう"来たーーー!"でしたよ。泣きました。本当に100パーセントマジで音楽を諦めた1週間後に話が来たんです。他のメンバーも"バンドをやろう"って言われてビックリしたと思うけど、僕だけこの中でサポートもしてないし、なんならお互い存在は知ってたけど、面識すらなかったんですよ。だからめちゃくちゃビックリしたのと同時に、まだ音楽続けられるんだと思って。なんていうか、やっぱりここまでうまくいかないことのほうが遥かに多かったんですよ。それでも自分に言い訳して、やっぱり俺には音楽しかないって思いたかったんですよね。でもコロナ禍で何もなくなったときに、やっぱり俺は向いてなかったのかもしれないとか、そうやって言い訳して続けてきたけど、俺はそうじゃなかったんだな、音楽はもう無理なんだなって諦めたところに、なんかもう本当に青天の霹靂じゃないですか。だから単純にめちゃくちゃ嬉しかったです。

ASH:Dhalsimとはまったく面識がなかったんですけど、本当にことあるごとにDhalsimっていう名前が僕の周りを独り歩きしていて。僕がもともとアルバイトをしていて、辞めてからしばらく経ったあと、僕の後釜というか。"最近新しい人が入って、その人がDhalsimって言うんだけど"って。へぇー、そうなんだ。すごい名前だね、とか。とあるバンドマンと話をしているときに"そういえばASHってDhalsimと知り合いやったっけ?"って言われて、うわ、またDhalsimだって。なんか、ASHっていう人物が主人公の漫画があったとしたら、ストーリーが進んでいく中で、7巻ぐらいから"Dhalsim"っていうワードがセリフで出てきて、読者の頭の中にずっとあるような状況っていうか。

-(笑)自然とインプットされていって。

ASH:で、バンドをやることに決めて、みんなに声を掛けていくなかで、ナル君から"ちなみにバンドにDJを入れるのってどう思う?"って言われたんですよ。僕の構想としても、ノーマルでベーシックなロック・バンド像というよりは、何か不確定要素が欲しいってすごく思っていたし、自分のルーツにはヒップホップとかレゲエもあるから、DJと一緒に曲をやりたいっていうのがすごくあって。そう思っているなかでの"DJってどう?"だったから、実は俺もそれはめちゃめちゃ考えてたんだけどって。そしたら"ひとりおるんやけど"って。"なんていう人?"、"Dhalsimっていうんやけど"。もうこの時点で、コミックの9~10巻まで来てるじゃないですか。"次回、ついにDhalsim登場!"っていう感じなんですよ、俺の中では。

-そうなりますよね(笑)。

ASH:だから作者であり読者である自分としては、11巻の頭からDhalsim登場みたいなね(笑)。俺、そうやって俯瞰的に見る部分があるんですよ。だからナル君から電話を貰ったときに、俺、マジでことあるごとにDhalsimっていう名前を聞いてたんだけどって。"そうなんや!? ちょっと変わったやつなんやけど、紹介しようか?"って言われたときに"いや、もうDhalsimは入れよう!"って。

Narukaze:まだ会ったこともないのに(笑)。そんなことある!? って。

Dhalsim:それもあってめちゃくちゃビックリしたんですよ(笑)。最初に"こういうバンドでいきます"って企画書を見せてもらったんですけど、俺の名前がもう入ってて(笑)。

Narukaze:はははははははは(笑)。

ASH:俺、すぐマネージャーに言うんで。この5人でいきますって。たぶんこれがDhalsimと知り合いだったとしたら、もしかしたらこうなっていない可能性もあるんですよ。それはDhalsimがいい/悪いっていう話ではなくて。さっき"不確定要素"というふうには言いましたけど、なんていうか、さっき漫画で例えたけど、そういうロマンって、バンドをやっていくなかで俺はめちゃくちゃ大事にしたいんですよ。そのロマンありきなところがあるじゃないですか、音楽のカルチャーとかって。だから自分の中ですごいときめいちゃって。Dhalsimっていう名前を周りからずっと聞いていて、ナル君からその名前が出てきたら、それこそ俺がもう"来たー!"ですよ。

-同:ははははははは(笑)。

ASH:伏線回収のターム入ったじゃん! みたいな感じになって。で、ASH DA HEROの第2章がここから始まるっていう。なんか第2期ヤバいらしいよ? Dhalsimってやつが出てくるらしいっていう。

-ははははは(笑)。今回リリースされる『Genesis』ですが、ASHさんのソロ時代の音源って、ロック大辞典的と言いますか。様々なジャンルが渾然一体としていて、そういう意味でもものすごくミクスチャー・ロックだなと思っていたんですけど。その中でも今回のアルバムは、バンドとして5人で音を鳴らすということであったり、ご自身のルーツにあるロック、パンク、ヒップホップといったものを色濃く出してきたりしている印象を受けました。実際にファースト・アクションとして、どういう作品にしようと考えていましたか?

ASH:まず、このメンバーでバンドを始めようとなってからすぐに曲作りを始めたんですよ。その時点ではアルバムというものはおろか、バンドで活動するとは言ったものの、どうやって市民権を得ていくかもそうだし、どう示していくかということも必要で。そのためにはまずは曲を作らなきゃいけないし、曲を示していかなきゃいけないっていう。そうやって曲作りを始めたときの空気だったり、匂いだったり......ちょっと言語化できない"雰囲気"みたいなものですよね。"始まるぜ、何かが"っていう。そこはスタッフも含めて、ワクワクする気持ちと、ヒリヒリする気持ちと、なんとも言えない空気感があったんですけど、その渦中にいながら、待っててくれるファンの人とか、まだ知らないリスナーの人たちに、この感覚をどうにかして伝播していきたいと思って。で、アルバムの話をいただいたときに、もう四の五の考える必要はまったくない、と。このバンドが始まったときのあの日の空気だったり、匂いだったり、パン! って生まれたときのあの感覚を全部閉じ込めよう、と。

-衝動や情熱を高純度で結晶化させていくというか。

ASH:そうですね。ロック・バンド ASH DA HEROの初期衝動を、ありのまま封じ込めたような作品になったと思います。

-ソロでも何枚もアルバムを出してこられたわけですけど、改めて1stアルバムを作ることって、楽しさと難しさと、いろいろあるのかなと思ったんですが。

ASH:楽しさと難しさ......そのどちらもあるし、どちらもないっていうのが本音ですかね。というのも、冷静になっていられないほどに、みんなものすごく燃えていたんですよ。停滞してしまっていた人生の途中で出会っちゃったこの5人が"まだやれるじゃん"、"やるしかないよね"って本当に燃えたぎっていたので。だから楽しいは楽しいし、難しいはもちろん難しいし。"楽しいね"なんて感覚に浸っている暇もなく"難しいね"なんて頭を悩ませて足を止めてる余裕もなかったけど、とにかく転がろうぜ、と。だって俺たちロックンロールやってんでしょ? みたいな。とどまっていたらただのロックだけど、ロールが必要じゃないですか。じゃあもう前のめりに転がり続けようぜ、かすり傷ぐらい余裕っしょ? っていう。そうやって前進していった感じだから、どちらもあるし、どちらもないというところかなと思います。

-ソロのときと曲の作り方はかなり変わりました?

ASH:そこはもう圧倒的に。ソロのときは自分のフィルターから生まれるものというところに帰結していたけれども、そこにNarukazeという、本当にものすごい強度とスピードで曲を書く、すごいコンポーザーがいるので。曲の作り方も本当に毎回刺激的というか、すごくヒリヒリしながら進めている感じなんですよ。ソロのときは対自分のところでヒリヒリ感はあったけれども、そこはもう圧倒的に違いますよね。ヒリヒリできるメンバーと一緒に、お互いをガツガツぶつけ合って、曲を生んでいく作業は全然違います。