Japanese
ニノミヤユイ
Interviewer:宮﨑 大樹
-もうひとつの表題曲が「散文的LIFE」です。こちらについては"良い意味でカオスな曲になっています。歌いながら訳分からん!って感じです。笑"というコメントをしていますね(笑)。
はい(笑)。ケンカイさんの曲は2曲ともレコーディング時間が長くて、超絶悩みながらやったんですよ。今まで私がやらなかった要素が多かったのと、あとからケンカイさんに聞いたんですけど、"そのアーティストのレベルを1段階上げられるような曲を作りたいと思ったんです"と言われたので"たしかに"と思って。今回の2曲をケンカイさんに作ってもらったことによって、自分のレベルが引き上げられたというか、楽曲に助けられた感じはしているので、ありがたいです。「散文的LIFE」は不思議な曲ですよね。明るさもありつつダークさもありつつ、抜くところを抜くし、攻めるところは攻めるみたいな、メリハリが効いている曲だと思います。
-そうなんですよね。こちらはアニメ"テスラノート"のエンディング・テーマということでアニメの予告を観てから聴いたんですけど、予告がわりとシリアスな印象だったのに対して、曲が明るかったのが少し意外でした。
ですよね。主人公の根来牡丹ちゃんという女の子がいて、その子に寄り添った曲というか、その子をイメージした曲にしてほしいと作品サイドの方からいただいて。なので彼女のことを知ることから始まったんです。この子は、重い責任を背負っているけど、流行りには乗ってみたいと思うし、甘いものも好きだし――みたいな、表向きは普通の女子高生に見えるんですね。そんな彼女のことを漫画原作の中で見ていくうちに、私とリンクするところがすごく多いように感じたんです。等身大のネガティヴをポップに出したいというのが私の中にあって、彼女も作品の中ではコミカルな部分が多くて、だから重くなりすぎないように意識しましたね。
-こちらも1番は作品寄りで、2番はニノミヤさん寄りの歌詞ですか?
そうですね。たぶんこっちのほうが強く出ています。ワンコーラス目は作品に出てくるキャラクター同士のわちゃわちゃ感というか、大変なこともありつつの楽しい日常や、日々を頑張っていく牡丹ちゃんのことを書いているんですけど、ツーコーラス目からは普段私がやっている陰の方向に引っ張ったので、だいぶ暗くなったねと言われました(笑)。
-歌詞になっていないところでは"モチベ上がらない"、"やる気でない"、"働きたくない"といった、ネガティヴな呟きが漏れていますね。
"何か入れられたらいいね"くらいのふわっとした感じのままレコーディング当日を迎えて、今まで私が歌ってきた感じとか歌詞的に、頑張りたいけど頑張れないみたいな、普通にいる女の子像が出せたらいいんじゃないということになったんです。なので、その場で急遽考えて録りました(笑)。
-そんな両A面のカップリングとしては、3形態それぞれに別の曲が収録されるので、今回は合計5曲もリリースされるんですよね。
そうなんです。曲数は前回のミニ・アルバムと同じなんですよ(笑)。
-そのカップリングについてもそれぞれ聞いていくと、まず"アーティスト盤"の「不揃い」は、横浜MMブロンテでのワンマン("ニノミヤユイ ワンマンライブ「消えてくれないアイの痕。」")で初披露した曲ですよね。
はい。初めて作曲に関わらせていただいた曲なんです。作曲はやりたいと思いつつ、まだ自分のレベルとか技術的に難しくて、バンマスをやってくださった原 ゆうま(YUMA HARA)さんにすごく助けられて作ったんです。だから自分ひとりの曲じゃないというか、みなさんと一緒に作り上げる工程により深く参加できたことがまず自分の中で嬉しくて。
-具体的には、どうやって作曲をしていったんですか?
Aメロはこういうのがいい、サビはこういうのがいい、というのが自分の中にあって、それをパズルみたいに繋ぎ合わせていきました。そうしてなんとなくの構想だけを持っていって、メロディ・ラインを歌ってみて、そこにコードをつけてもらっています。コードは、原さんがギターを弾きながら"こういう感じ?"って明るさとかも聞きながら作ってくださって、コード進行ができた段階で自分が思い描いていた感じの曲になったので、すごいなと思いました。
-歌詞としては、かなり赤裸々というか、飾らずに言葉を書いていますよね。"才能もないなんにも無い"とか、そんなことないでしょう......って思っちゃいましたけど。
この曲は、みんなに宛てた曲というよりは、自分の中で消化するために作った曲なんです。自分の中の想いを書くことに専念した曲だったので、内面で終わるエゴが強い曲になりました。そのときに一番思っていた気持ち、その時点での私の想いを詰め込んでライヴ用に書いた歌詞なので、時間が経ったときにみんながどう受け取ってくれるのかは楽しみですね。
-"「生きたい」なんて、強く思えば/思うほど死にたくなる"という言葉が印象的でした。
アーティストとして頑張らなきゃ、声優として頑張らなきゃ、人間として成長していかなきゃって、前に進もうとすればするほどいろんな課題とか壁が自分の周りに見えてきて。それがあまりにも多いし、果てしないし、それをひとつクリアしたところで、何万歩先を歩いてる人たちがいっぱいいて――ということを考えると、"はぁ......絶望"って。気持ちを強く持てば持つほど、それに対する影の部分も出てくると思うんです。「Dark seeks light」でも書いたんですけど、影と光というか、光が強くなれば影も濃くなるということを感じていて。自分にとって嬉しいこと、楽しいこと、こうなりたいと希望が強くなるほど、苦しい感情もどんどん膨らんでいくという、そのコントラストが自分の中で強くなったときがあったので、こういう表現をしました。
-この曲を"不揃い"というタイトルにしたのはどうしてですか?
"才能もないなんにも無い"って、自分の中で何かが足りない気持ちがずっとずっと強くて。それはもういろんな節々でもそうなんですけど、負けず嫌いというもともとの性格から、あとひとつ順位が高ければとか、あとひとつここができていれば、あとひとつオーディションに受かっていれば、みたいな。そういう"あとひとつ"が絶えない自分がずっと続いていて。それはみんなも同じだと思うし、たぶんずっと続いていくから、そういうのを表したいなって。だからちゃんと揃っていない状態、"不揃い"にしました。
-"暗殺貴族盤"の「愛したあの頃に哀を」もいいですよね。ケルト音楽的エッセンスで新たな一面を見せつつ、ニノミヤさんらしい生きづらそうな歌詞もあって。
真戸原直人さんが陰な感じで作ってくださるということだったので、楽しみにしていたらすごくカッコいい曲が上がってきました。このメロディとこのサウンド感を生かすにはどんな歌詞にしたらいいんだろうと悩みながら歌詞を書いていきましたね。私の想像したシーンは、"渋谷の夜の街をひとりで歩く女"みたいな感じなんです。昔のことを回想しているというのは意識していて。「愛したあの頃に哀を」には、今までのアルバムとかで使ってきた言葉がふんだんに入れてあるんです。あのころは良かったなと思うことがいっぱいあって、だけど時間はもとに戻せないし、環境はそこに戻らないので、昔に引っ張られながらも前に進まなきゃいけないという気持ちを込めました。メロディの輪廻してる感じ、回ってる感じから脱却することを目標に書いていきましたね。
-音楽的な部分については真戸原さんに何かオーダーなどはあったんですか?
いつも真戸原さんが作っている陰、ロックという感じでオーダーをしました。そうしたら新しい感じで作ってもらったのが嬉しかったです。陰の部分が多かったので、あとから歌詞でどれだけ世界観を深められるかは考えましたね。
-そして"テスラノート盤"に収録される「みっともない私なんて」は、ずとまよ(ずっと真夜中でいいのに。)のアレンジなどを手掛けている100回嘔吐さんの提供ということで、旬の作家による楽曲です。
曲を聴いたときから、"いまどき感"、"オシャレと陰"という感じしていて、これを歌いこなすにはどうしようかをすごく考えた曲です。作詞は共作で、私が単語とか文章のストックみたいなものをお渡しして、それを100回嘔吐さんが組み立ててくださいました。100回嘔吐さんの言い回しだけど、私の言葉がたくさん入っている状態だったので、感情的には歌いやすく、でも新しいみたいな。そこが私の新感覚、新境地になったと思います。
-さて、今回の両A面シングルは改めてどんな作品になったと思いますか?
今回20歳になって初のシングル、且つほぼ1年ぶりのリリースなので、アーティストとして私が成長したところを見せたいというのがあって。作詞もやらせてもらっているぶん、私の想いが直接伝わる両 A 面シングルになったと思います。このシングルから新しくファンになってくださる方もたくさん引き込めるような楽曲を作れたと思っていますので、宣言通り、売れます! 頑張ります(笑)!
-(笑)最後に、20歳になって、これからチャレンジしてみたいことはありますか?
音楽の面で言うと、私がよく聴いているのはボカロ、J-POP、ロックとかが多いんですけど、もうちょっと自分の聴くジャンルを広げたいというのがありますね。ヒップホップとか、洋楽とかも聴いたりして、いろんな楽曲の要素をもっと取り入れたい気持ちがあって。自分の芯がブレなければ、それはニノミヤユイの楽曲になるのかなと思っていて、いろいろやっていきたいです。
-アーティストとしての幅を広げていきたいんですね。
そうですね。あとはそろそろ頑張って外国に行きたい。今まで海外に行ったことがないんです。飛行機が怖いので、それを克服して(笑)。いろんなものを見て、こういうものがあるんだと知っておきたいですね。
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