"ちょっと大人になったんだな"と感じられるレコーディングでした

－さて、夏の恒例イベント"ファミえん"のベスト曲集という、なかなか面白いコンセプトの作品がリリースされますね。毎年"ファミえん"のEPとして配信されていたものが、ベスト曲集『FAMIEN'21 L.P.』としてCDになるのは、イベントに歴史があるからこそだと思いますけど、こういう形でリリースされることはどう感じていましたか？

真山："ファミえん"をLP化するんだと思って、まずはびっくりしました。"ファミえん"の曲はライヴの定番曲が多いんですよ。だから"CD化してなかったっけ？"みたいな気持ちも自分にはあって。こうやってアルバムとして"ファミえん"の曲をまとめて出させていただけるのは本当にありがたいですね。今の世の中だと、CDにしたくてもなかなかできない部分もあったりするので、形に残るのはありがたいことだなと感じています。

－これまでに何度か"ファミえん"を開催してきて、真山さんから見た他のイベントと"ファミえん"の違い、"ファミえん"ならではの魅力はなんだと思いますか？

真山：夏のライヴだというのもあると思うんですけど、解放感が違いますね、圧倒的に。"夏だー！"という解放感と、"野外だー！ お祭りだー！"という解放感と、両方の突き抜けて楽しい感じがエビ中のライヴの中でも特にあります。エビ中って、ライヴ・パフォーマンスが"エモい"と言っていただける機会が多いので、私たちも真剣に歌う部分があるんです。もちろん"ファミえん"も歌とダンスに真剣に取り組んでいるんですけど、いつもだと若干シリアスになるのが、"ファミえん"になると"楽しい"が120パーセントみたいな感じになるんです。お祭り気分で騒げるというのが、他のエビ中のライヴとは違った魅力なのかなと。

－そんな"ファミえん"のアルバム『FAMIEN'21 L.P.』は、まだ幼さの残る新メンバー3人の声が入ったことで、すごく新しい風が吹いたなと思いました。その一方で、よく考えてみたら"エビ中って最初はそうだったよなぁ"と懐かしさみたいなものもあって。

真山：そうそう！

－長く続けてきた歴史を感じますし、改めて曲に振れ幅のあるグループだなとも思いました。仕上がった作品を聴いてみての感想はどうでしたか？

真山：ユニゾンが変わりましたね。いい意味で子供らしい歌声が交ざりました。私たちももう大人になってしまって歌声はちょっと低めだから、今までの6人の低めのユニゾンに高い声とか面白い声とかが交じって、さっき言ってくださったように、昔のエビ中にちょっと戻った感じ。懐かしさを感じながらも成長もしていて、面白い感じがしましたね。最初のころの9人のエビ中とは全然違ったわちゃわちゃ感というか、新しくてとてもいいアルバムに仕上がったなと感じています。歌割りが一新されているので、エビ中をずっと応援してくださってる方にはそこも聴きどころじゃないかなと思いますね。新しく聴いてくださった方にとっては、エビ中の楽曲の振り幅を感じていただけるアルバムになったと感じています。

－たしかに歌割は1曲目の「ご存知! エビ中音頭 (2021.ver.)」から驚きがありました。

真山：意外な部分があると思うんですよね。「ご存知! エビ中音頭 (2021.ver.)」は、私たちも新規で録り下ろしているので、レコーディングが一番楽しかったです。これまで歌い尽くしてきたので、なんの迷いもなく歌えましたね（笑）。

－桜木さん、小久保さん、風見さんは、初めてレコーディングした作品を聴いてみてどうでしたか？

小久保：曲を覚えるために何回も聴いていたときに、ここは自分が歌うんだなと思って嬉しかったです。ボイトレでいっぱい教えてくださったことをメモって、それを本番でレコーディングして――レコーディングしたものがちゃんと音源になっていてすごく嬉しかったですね。

風見：音源が送られて聴いたときに"自分の声が入ってる！"と思って。何ヶ月か前まではそんなことを予想もしていなかったし、そんなことないだろうなと思っていたので、まずは自分の声が入っていることが新鮮すぎて、テンションが上がりました。再レコーディングした曲は、前と歌い方が変わっていて面白かったりして、聴いていてすごく楽しかったです。

桜木：練習しているときに、（音が）"高いな"、"大丈夫かな"と思うことがあって。でも、自分でボイトレ方法をいろいろ学んだり、ボイトレの先生にいろいろ聞いてみたりしたら、私の声がちゃんと高くなっていて。"こんなにかわいい声を出せるんだ"って、ちょっと嬉しくなりました。聴いてくださる方にも、苦手意識をなくして頑張って歌ったからこんな声が出せるんだと、発見していただけるんじゃないかなと思います。まだまだなんですけど、もっと練習していろんな声を出せるように頑張りたいです。

－「ご存知! エビ中音頭 (2021.ver.)」に限らず初期、中期の曲が再レコーディングされましたけど、真山さんは改めてレコーディングしてみてどうでした？

真山：それこそ「ご存知! エビ中音頭」なんて歌うのが年1回とか、なんなら年1回ないときもありますから、本当に新鮮で楽しかったですね。私の声も変わっていると思うんですけど、美怜ちゃんの歌声は特に大きく変わっていて。他人事のように昔の曲を聴いたら、昔のエビ中もかわいいなと思いましたし、今の自分たちでレコーディングする作業はこういう機会でもないとなかなかできないので、面白いなと思いながら歌いました。特に新しく録り直せて良かったなと思うのが「いい湯かな？ (2021.ver.)」という曲で。"ファミえん"の定番曲なんです。8分もあるので"ファミえん"でしか歌えないというだけの理由なんですけど（笑）。"再び歌ってもいい曲だな"、"おじいちゃん、おばあちゃん、元気かな？"みたいな気持ちで歌いました。当時はそういう気持ちよりも"上手に歌えるかな？"、"この音出るかな？"みたいな気持ちで歌ってる部分が多かったと思うんですけど、"楽曲に想いを馳せる余裕が自分にできたんだな"、"ちょっと大人になったんだな"と感じられるレコーディングでしたね。

－新メンバー3人は初めてレコーディングした曲がすべてだと思うんですけど、印象に残っている曲をあえて選ぶとしたら、どの曲ですか？

風見：私はりかちゃんと一緒で「いい湯かな？ (2021.ver.)」がレコーディングの中で一番印象に残っています。1サビの"私は いい子かな？"という目立つところを貰ったので、いっぱい練習しました。ボイトレの先生にも"そこはいい部分だから溜めていいよ"と言われて、私らしさを存分に出して歌えるように頑張って練習したので、この曲が印象に残っていますね。

桜木：かわいらしい曲とかカッコいい曲とか、いろんなジャンルのいい曲が多いんですけど、その中でも「ラブリースマイリーベイビー (2021.ver.)」と「イート・ザ・大目玉 (2021.ver.)」です。「ラブリースマイリーベイビー (2021.ver.)」の"世界だって救って行けるはずだから"とか、「イート・ザ・大目玉 (2021.ver.)」の英語の部分とか、このふたつはかわいい系とカッコいい系なんですけど、どっちもすごく自分らしく歌えたんじゃないかなと思います。

小久保：私は「朝顔 (2021.ver.)」が夏だなって感じの曲で、すごく好きです。あやちゃん（安本）が歌い方とかいろいろ教えてくれて、いっぱい歌って練習しました。私はセリフの部分で、"泣きたいときに泣けてるかな"というところを言ったんですけど、レコーディングしてくださってる方が"あ、柚乃ちゃん絶対ここ！"と言って、その場で歌割が決まったんです。いろんな意味ですごく好きな曲ですね。

－続いて、個人的にこれぞ"ファミえん"だなと思う曲はどれですか？

桜木：私は「MISSION SURVIVOR」（2016年リリースの3rdフル・アルバム『穴空』収録曲）です。一緒にお客さんと盛り上がれるし、お祭り気分を味わえて、"これは「ファミえん」っぽいな"とすごく思いました。

風見：この質問がきた瞬間に心菜と同じで「MISSION SURVIVOR」が頭に浮かびました。盛り上がるし、タオルを振ってるということもあるので、夏っぽくて"ファミえん"らしい曲だなと思いますね。

小久保：私は「ラブリースマイリーベイビー」に"ファミえん"のイメージがあります。"夏"って歌詞に入っているし、元気で明るい曲だし、夏を感じる曲なので"ファミえん"っぽい曲だなと。

真山：私はやっぱり「いい湯かな？」ですね。「ご存知! エビ中音頭」か「いい湯かな？」、どっちだろうとなったけど、やっぱり「いい湯かな？」。"お正月は家族で"という歌い出しを夏に歌うのは、リハのときにずっと引っ掛かるんですけど（笑）、"これ冬休みの曲じゃない？"と思いながら夏に歌ってますね（笑）。

－たしかに「いい湯かな？」は"ファミえん"のイメージがありますね。田舎の情景が浮かぶので、野外や自然の中で聴くのがすごく合いますし。

真山：いろんな演出で歌ってきましたしね。噴水があったりとかステージが上がる演出があったりとか、いろんな演出でこの曲を歌ってきましたけど、どれもすごく思い出深いです。

－そして本作には新曲として「イヤフォン・ライオット」も収録されています。爽やかな夏曲という印象もありつつ、新しいエビ中の始まりも感じさせる曲です。

真山："「仮契約のシンデレラ」（2012年リリースのメジャー1stシングル表題曲）の杉山勝彦さんの曲だよ、歌詞は児玉雨子さんに書いてもらったよ"と、事前情報があったからどんな曲なんだろうってすごくワクワクしていて。聴いてみたら、すごくポップで、なおかつブレイクやラップがあって、転調が繰り返されて、すごく聴き応えのあるいい曲だなと思いました。もちろんレコーディングも楽しみで、ワクワクした気持ちで挑めましたね。完成されたものを聴いたら歌割りが細かくて、でもちゃんと歌詞が耳に入ってくる曲だなと思いました。"ファミえん"の曲はみんなで一緒に"わーい！"って感じの曲とか、いろんな曲があるんですけど、その中でも「イヤフォン・ライオット」は家で聴くタイプの曲ですね。"イヤフォン・ライオット"と言っているくらいなので、イヤホンで聴く曲なんですよ。それが自分の中では新しくて。みんなには"ファミえん"に向かいながら聴いてもらって、フラストレーションとか、広いライヴ会場で発散したい気持ちを弾けさせてくれたら嬉しいなという想いがあります。新しいエビ中の1曲目に相応しい楽曲だと感じていますね。

－3人からするとエビ中に入ってから初めての曲ということで、特別な想いがあるかと思うのですが、この曲にはどんな印象がありますか？

桜木：真山さんが言った通り、聴いた瞬間にポップな曲だなと思って。ポップだし、すごくパワーのある歌に感じます。"バカヤロー！"とかの口調や言葉は、このご時世であまり外に出られなくて、ストレスが溜まってそれを発散して打ち勝つぞ、みたいな想いも込められていて。好きなラップを歌割でいただけて嬉しかったので、もっとカッコ良く歌えるように頑張ろうと思います。私と美怜ちゃんがラップをするんですけど、その盛り上げからの、真山さんとひなちゃん（柏木ひなた）のコーラスがめちゃくちゃカッコ良くて。そこがセットでカッコいいなと思います。この曲は思い入れのある曲ですし、ライヴで早く披露したい気持ちです。

小久保：この曲はレコーディングの前に曲の説明を送っていただいたんです。このご時世で学生たちの行事がなくなったこととか、いろんな意味が込められていて。私も修学旅行の行き先が変わったりして、共感できる歌詞がいっぱいありました。だからこの曲は自分がちゃんと歌うんだと思って、すごく練習して歌ったんです。音源になったときに、歌いたかったところに歌割があって嬉しかったです。

風見：9人ということもあって、全員で歌ったときのサビの声の盛り上がりがすごいんです。だからこそ最後のサビ前の"「君らしさ なんだった？」"をひとりで歌うところが強調されています。歌っていて楽しい曲ですし、ダンスも楽しく明るく跳ねる感じなので、歌とダンスが合っていていいなと思いました。

－個人的には、2番Aメロの歌割と歌詞がすごくいいなと思ったんです。新メンバー3人が順に歌ってから、"磨ききってないダイヤモンド"で「えびぞりダイアモンド!!」（2010年リリースの2ndシングル）が浮かんで、"煤だらけ"で「仮契約のシンデレラ」が浮かんで、そういう初期の代表曲が浮かぶ部分は先輩メンバーが歌っているんですよね。そのあたりに曲への想いを勝手に感じていました。

真山：それ、全然気づかなかった！ 今度使いますね（笑）！

－聴いていて"おっ！"と思ったんですよね。新体制の始まりだからこそ、あえて初期の代表曲を引き出してくれたのかなと。

真山：そうしてくれたんですかね、雨子さん。もしそうだとしたら、すごすぎませんか！？

－さて、ここまでアルバムのことを中心に聞いてきましたけど、今年の"ファミえん"（"みらいに響け、みなとのPLAYGROUND こと ファミえん2021 in 赤レンガ倉庫"）で、いよいよ新生エビ中のデビュー戦です。最後にイベントへの意気込みを聞かせてください。

桜木：私たち3人のライヴ・デビューということで、9人で絶対に成功させるぞという気持ちで臨みたいです。ステージ・デビューなんですけど、このご時世だからお客さんは声を出せなかったりするので、そのぶん一緒に踊ったりして、ファミリー（※エビ中ファン）のみなさんと一体になって楽しんでいきたい気持ちがすごく大きいですね。そのために練習をすごく頑張っているので、"ファミえん"を必ず成功させたいと思います。

小久保：会場が解放感のある広い場所なので、車で近くを通った方にも届けられるように、通った方が"誰がライヴやってるんだろう？"と調べて、ファンになってもらえるように頑張ろうと思います。

風見：3人が入って初めてのライヴになるので、これを観てくださった方々に"9人のエビ中もいいんじゃね？"と思ってもらえるように、大成功させて、最後は笑顔で"楽しかったね"と言って終われるように頑張りたいと思います。

－では最後に、真山さんお願いします。

真山：新体制になって初めての"ファミえん"ということで、まず基本姿勢として、エビ中は変わらないでいたいと思っています。ライヴに来てくださるみなさんを楽しい気持ちにして、私たちも一緒に楽しい気持ちを共有して、ハッピーな気持ちでライヴを終えるというのが、アイドルとしてもエビ中としても一番の課題です。常に心になければいけないことだと思っているので、そういう気持ちで"ファミえん"を終えられたらいいなと。そして3人が新しい風を絶対に吹かせてくれるので、3人が"最高の2日間だった"と言って終えられるように、私たちも悔いが残らないようなパフォーマンスを下支えしたいですね。私たち先輩メンバーも頑張りますし、エビ中ファミリーのみなさんも3人のことを待ってくださっていると思うので、"現体制でのエビ中最高！"と言ってもらえるパフォーマンスを残り少ない期間で準備して、最高の夏を迎えられるように楽しみたいと思います。ちょっとでもエビ中が気になったら、ぜひ"ファミえん"に遊びにきていただけたら嬉しいです。