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LIVE REPORT

Japanese

私立恵比寿中学

Skream! マガジン 2020年02月号掲載

2019.12.21 @幕張メッセ イベントホール

Writer 宮﨑 大樹 Photo by 中島たくみ、石井健、内野秀之

昨年2019年で結成10周年を迎えた私立恵比寿中学(以下:エビ中)。彼女たちのアニバーサリー・イヤーの軌跡を振り返ってみると、単独アイドルが主催する史上初の音楽フェス"MUSiC フェス~私立恵比寿中学開校10周年記念 in 赤レンガ倉庫~"の開催をはじめとした大きなトピックだらけだった。そして主観も交えて言えば、その中でも、多くの音楽ファンを唸らせたであろう2枚のフル・アルバム『MUSiC』、『playlist』のリリースによって、音楽に真剣に向き合いながらシーンの第一線で活躍し続けたエビ中の存在の大きさを、改めて知らしめたことが大きな収穫だったように思う。

そんな私立恵比寿中学がバンド・セットで学芸会(ライヴ)を行えば、それはもう間違いのない内容になるわけで、2019年12月21日に幕張メッセで行われたこの日の学芸会の出来映えも、もちろん例外ではなかった。見事にソールド・アウトを達成し、エビ中ファミリー(※ファンの総称)で埋め尽くされた会場に「ebiture」が流れると、一斉に会場中のペンライトが点灯。エビ中の学芸会ではお馴染みのシーンだが、記念すべきこの年に改めてその光景を目の当たりにすると、10年で変化するものもあれば(もちろん、いい意味で)、変わらないものもあることを感じ(こちらももちろん、いい意味で)、それがなんだか嬉しかった。

"エビ中×バンドの大学芸会へようこそ!"真山りかの声を合図に、エビ中が扮するバンド、五五七ニ三ニ〇名義の曲「半世紀優等生」の演奏が、ステージに白い幕がかかったままでスタート。と同時に楽器を持ったメンバーのシルエットが幕に映し出された。バンド・セットにちなんで、ということもあるかもしれないが、滅多に披露することのないこの曲を1曲目に選択するあたりに、10周年を迎えてもなお攻めの姿勢を崩さないエビ中のスタンスが窺える。「半世紀優等生」のパフォーマンスが終わるまでの間、ずっとかかっていた幕が下りて姿を現したのは、もちろんエビ中のメンバーだ。安本彩花が10月から休養中のため、この日は真山りか、星名美怜、柏木ひなた、小林歌穂、中山莉子の5人でのステージとなる。真山と柏木が高い歌唱力で順にソロ・パートを歌い上げ、ラップ・パート、四つ打ちのダンス・ミュージックと目まぐるしく展開する「Family Complex」の披露中に後方のパネルが開き、ギター、ベース、ドラム、キーボードに管楽器隊、ストリングス隊を加えた13名からなるエビ中バンドが登場。エビ中バンドをバックに、歌声だけでなく表情やダンスでも魅せていくその姿は、キュートなだけでなく、"女性が憧れるカッコいい女性"のような印象も受ける。バンド編成ならではのライヴ感でもって立て続けに披露されていく曲たちは、まるで曲自身が生き物のように生き生きとしており、とりわけキラーチューン中のキラーチューン「放課後ゲタ箱ロッケンロールMX」の爆発力は圧巻だった。そんなバンド・サウンドに触発されたメンバーの熱量はメーターを振り切りっぱなしで、膨大なエネルギーがエビ中からエビ中ファミリーに届けられていく。そんな彼女たちの姿は、"自称「King of 学芸会」"ではなく、もはや"King of アイドル"の領域へ到達しつつあると言っても過言ではないのではないか。

MCでは、"それではまず私たちの自己紹介、そしてバンド・メンバーの自己紹介をしていきたいと思います。まず、彩ちゃん(安本彩花)から!"と柏木が声を発すると、エビ中ファミリーが一斉にペンライトの色を切り替え、安本のイメージ・カラーであるグリーンで幕張メッセを染めた。エビ中メンバー全員で安本の自己紹介を代わりに行い、エビ中ファミリーが合いの手を入れる。それは、その場の全員にとって、安本がどれほど大きい存在なのかが伝わってきた瞬間だった。そしてその想いは、中盤での演出にもはっきりと表れていく。どこかの公園でひとり時を過ごす安本の姿が映し出されると、白を基調とした衣装に身を包んだ5人が登場。深く一礼をして用意された椅子に腰を掛けると、アコースティック・バージョンのセクションへ移行する。ひとりひとりの歌唱力が際立つ、深く感情を乗せた歌声を聴き手の心へと届けていくと再び映像が始まった。そこへ映し出されたのは、加入当初でまだあどけなさの残る10代前半の頃のメンバーたち。エビ中の歴史を感じさせる映像から切り替わり、再び現在の安本の映像へ。彼女がイヤホンを耳につけると、安本も含めた現体制のメンバー全員が6分割された画面に映った。そうして、私立恵比寿中学として初めて作詞を手掛けた「HISTORY」をパフォーマンスすると、安本のパートでは彼女自身によるまっすぐな歌声が流れていく。自己紹介からも、映像からも、パフォーマンスからも、いたるところから安本の存在を感じさせた。今思い返してみても、この日の私立恵比寿中学のステージは、現体制6人全員での学芸会だったように思えてならない。

この日の学芸会は、全員でマイク・スタンドを使用した「愛のレンタル」や、エビ中ファミリーの近くで歌声と笑顔を届けた「涙は似合わない」。そして、「元気しかない!」からメドレー形式で繋げられ、エビ中バンドも交えた"ダンスサドンデス"で会場を沸かせた「サドンデス」など、見どころの多すぎる内容だった。その中でも、"最後の曲になります。10年間引き継いで動かし続けてきた私たちエビ中の心臓の音を感じてください"と柏木が語り、シンプルな白の照明の中で、壮大なサウンドスケープを作り上げた「ジャンプ」のことは、やはり記さずにはいられない。まっすぐな言葉をエモーショナルに歌い、届け、そして中山が感情を絞り出すように叫んだ"今だぁぁ!"の声は、鳥肌が立つほどに心を震わせた。

「ジャンプ」で本編が終了し、学芸会はいよいよアンコールへ。「COLOR」、「永遠に中学生」を披露したのち、この日の学芸会の最後に届けられたのは「なないろ」だった。エビ中と、エビ中ファミリーにとって大切な1曲が、特別な意味を持つ青のペンライトで彩られた空間で歌われていく。きっとその歌声は、幕張メッセを越えて、空高くまで届いていったことだろう。

エビ中の10年の旅路。それは、出会いや別れ、嬉しいことに悲しいこと、すべての想いを引き継ぎ、背負い、歩んできた道のりだ。この日の彼女たちのパフォーマンスや、会場を染めた緑と青のペンライトの光が、それを物語っていた。


[Setlist]
1. 半世紀優等生(五五七ニ三ニ〇)
2. Family Complex
3. イート・ザ・大目玉
4. 放課後ゲタ箱ロッケンロールMX
5. YELL
6. 踊るガリ勉中学生
7. 梅
8. 青い青い星の名前
9. 愛のレンタル
10. シンガロン・シンガソン
11. ちがうの
12. キャンディロッガー
13. 紅の詩
14. 自由へ道連れ
15. フユコイ
16. まっすぐ
17. 星の数え方
18. 曇天
19. HISTORY
20. 涙は似合わない
21. MISSION SURVIVOR
22. PANDORA
23. HOT UP!!!
24. オメカシ・フィーバー
25. 元気しかない!~サドンデス
26. ジャンプ
En1. COLOR
En2. 永遠に中学生
En3. なないろ

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