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INTERVIEW

Japanese

vivid undress

2021年06月号掲載

vivid undress

Member:kiila(Vo/Gt) rio(Key) yu-ya(Gt) syunn(Ba) tomoki(Dr)

Interviewer:山口 智男

-6曲目の「後悔」は、思いを伝えられなかった後悔を歌っている曲にもかかわらず、8ビートのストレートなロック・ナンバーに、そういう歌詞を乗せたことで、その後悔を糧に前に進んでいこうと感じられるようなものになったところが、面白いと思うのですが、曲に、この歌詞を乗せたのでしょうか? それとも、歌詞にこの曲をつけたのでしょうか?

kiila:「後悔」の歌詞は、新型コロナウイルスで私のおじいちゃんが亡くなった次の日、大切な人たちが突然いなくなってしまったらどうしよう、と考えていたら止まらなくなって、そのときの思いをぶわーって書いた歌詞なんです。そのタイミングでyu-yaからこの曲が送られてきて、すごくいい曲だと素直に思えたので、せっかくいい曲が来たんだから、今の思いを乗せようと思いました。

-ところで、サウンドという意味では、引き算のアレンジがメンバーそれぞれのプレイや個性を際立たせた前作『変身コンプレックス』(2020年リリース)の延長上にある作品だと思うのですが、今回アレンジやアンサンブルを作るうえでは、どんなことを意識しましたか?

yu-ya:シンセが入ってほしいと思いながら、ギターはいっぱい抜きました。

rio:そうだったんだ(笑)。

yu-ya:曲に肉づけするとき、ギターですべてやるのはやめようと思いました。例えば、「R-15」は、最初に俺がギターでコードをつけたときの印象と、シンセが入ってきたときの印象って結構違っていて。シーケンス的な部分とか、シンセ・フレーズとか、とてもいいなと思って、ギターは引きました。

kiila:でも、最近、yu-yaのギターが引っ込みすぎるからもったいないと思うんですよ。だから、「R-15」では"最後に感情がぐちゃぐちゃになっていく様を表して"と言って、最後にギター・ソロを入れてもらったんです。なので、その最後のソロに向かって、どんどん出ていくという意味で、結構ギターは前に出ていると思います。

yu-ya:今回のアルバムから結構ファズを踏むようになったんですけど、この曲の最後のソロはまさにそれです。感情が爆発しました。

kiila:そういうのが結局、気持ちいいよね。

yu-ya:ちなみに「R-15」は最初、kiilaからラララって歌とドラムだけのトラックを貰ったとき、"AKIRA"の世界観で作ってみたんですよ(笑)。

-えっ!? あぁ、大友克洋の!

yu-ya:そうです(笑)。"AKIRA"の世界観のコードをつけて、そういう雰囲気にしようと思ったんですけど、それはうまいこといきました。

rio:いったんだ(笑)。

kiila:絶望的というか、破滅的なイメージ?

yu-ya:未来の廃墟みたいなイメージでコードをつけたら、気に入ってもらえたので、やったと思いました。

-yu-yaさんはなぜシンセにいっぱい入ってきてほしかったんですか?

yu-ya:「R-15」に関して言うと、"AKIRA"にできなかったんですよ。

-あぁ、曲の世界観を作るにはギターの音色だけでは足りなかった、と?

yu-ya:そうです。だから、ギターは印象的になりすぎないようにコード感が広がるようなフレーズだけ入れて、rioさんに投げたら、たぶんrioさんも"AKIRA"をイメージしてたんじゃないかな。

kiila:してないと思うよ(笑)。

yu-ya:何かしらの雰囲気を察してくれて、ああいうフレーズをシンセで入れてくれたと思うんですよ。

kiila:一番攻めたって言ってたもんね。

rio:過去一覚醒したと思ってます。めっちゃくちゃ楽しかったです。久しぶりに時間を忘れて10時間ぐらいぶっ通しで作業して一気に作りました。コードが乗った状態でデモが来てから、イメージがどかっと湧いてきたんですよ。だから、それに合う音色を綿密に探して、どんどん乗せていったらトラック数がとんでもないことになっちゃって(笑)。以前のピアノだけで攻めてた自分からは想像つかないようなアレンジになりましたね。

kiila:「R-15」で私がもともと思い描いていたのは、頭のネジが外れた感じのストーカー気質な女の子が主人公だったので、シンセが入ることによって、よりサイコパス感が増して。

rio:サイコパス感......。

kiila:そうそう、鬼畜な感じが私も気に入ってます(笑)。

-なるほど。愛を歌ってもvivid undressはそういう毒っ気が入り混じるわけですね。

rio:そこに浮遊感も足したかったんですよ。

kiila:非現実感?

rio:そうか! そうなると"AKIRA"なのか(笑)。

yu-ya:そうだね。"AKIRA"だよ(笑)。

rio:そんなふうに振り返ってみると、「オリジナルカラー」も凝ったんですよね。シンセ面から言うと、総じて、前作に引き続き今回も楽しかったです。

-「オリジナルカラー」も浮遊感のある音像になっていますね。

rio:シーケンスがずっと鳴っていますからね。そういうことってあんまりしたことがなかったんですよ。そんなふうに頭の中で、こうしたい! ってアイディアが湧いた曲が多かったですね。

-yu-yaさんのギターもソロやリフを以前のようにバリバリと弾いてはいませんが、空間系の音色、プレイという意味では結構鳴っていると思います。

yu-ya:そうですね。ドライなロック・ギターというよりは、ウェットなフレーズをたくさん入れたい曲が今回は多かったですね。「後悔」だけはちょっと違うんですけど。

-そんな上モノに対して、リズム隊のふたりはどんなふうにアプローチしていったのでしょうか?

syunn:四つ打ちの曲が多かったので、四つ打ちっていったら踊るイメージがありますけど、みんながつけたアレンジから、ちょっと大人っぽいものを感じたんですよ。でも、その中に四つ打ちが鳴っていてっていう。だから難しかったというか、ただ弾いたら、ただ乗りやすい感じになってしまって、それだとちょっと違うのかなって。なので、踊れるところもありつつ、ちょっとねちっこいというか、大人な感じを出すことを意識しました。あとは、引き算が最近多すぎて、上モノたちは展開があるのにその誘導をしていない感じがあったので、代わりに展開を誘導するフレーズを作るっていうのはやりましたね。

-たしかに絶妙なタイミングでベースが前に出てくる瞬間が結構ありますね。ところで、ねちっこいプレイを一番生かせた曲というと?

syunn:「R-15」はそうですね。

yu-ya:「オリジナルカラー」、「Yeah! Yeah! Yeah!」もそうじゃない? ベースはほんとにネバネバしている(笑)。

syunn:そうですね(笑)。ネバネバするけど、ライヴでは身体を揺らすような感じで聴いてもらえたらと思いながらやりました。

kiila:「Yeah! Yeah! Yeah!」はリズム隊に助けられました。ドラムとベースがしっかりと支えてくれたおかげで、より曲が楽しくなりましたね。

tomoki:でも、kiilaさんが最初に持ってきたジャジーなものが基盤になってますね。そこから変に変えようとは思わず、それを生ドラムでやってみたらというアプローチでした。

-tomokiさんは全体的にはどんなふうにアプローチしていったのでしょうか?

tomoki:ドラムも作品を重ねるごとにシンプルになってますね。単純に、それが曲に相応しいというところもあるし、みんなで話し合ってそうしているところもあるし。でも、音数は減っているように聴こえても、やっていることは変わらず大変ってフレーズが多かったりします。

syunn:求められるからね。特にyu-yaに(笑)。

yu-ya:tomokiに叩いてほしいリズムもあるし、syunnにはスラップしてほしいですからね。

tomoki:ドラムで新しいことをやっていると言ったら、両手でシンバルを叩いているところが多いです。ライドとハイハットを同時にみたいなことは普通あんまりやらないと思うんですけど、片方だけだと出したいノリにならなかったので、やってみたらハマったんですよ。でも、両手が結構わちゃわちゃして、今後ライヴが大変だなと思います(笑)。

yu-ya:そんなふうに、それぞれに新しいことをやれてるから、今回も作りながら一歩一歩進んでいる実感はありましたね。

-kiilaさんはヴォーカリストとしては、どんな挑戦がありましたか?

kiila:挑戦というよりも、むしろ曲に対して素直に歌うことを意識しました。

-さて、『愛のゲイン』は改めて、どんな作品になったという手応えがありますか?

kiila:もともと私たち、ずっとインディーズでやってきて、地下感みたいなものが結構あったんですけど、メジャーに行くことによって地上感というか、歌詞でもサウンドでも広い景色を見るようなものを意識して、音楽も作っていきたい思いがあったんです。だから、今回、愛もそうですけど、それに加えて色彩や光を裏テーマにして作ったんですね。それでアー写にもスクリーン投影の手法を使って色を入れてもらっているんですけど、さらに幅が広がったというか、今回、歌詞もサウンドも表に向いた開放的な作品になったと思います。