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Japanese

vivid undress

2015年05月号掲載

vivid undress

Writer 沖 さやこ

日本のバンドはとうとうこんなところまで来たのか。その突然変異に驚愕したと同時に、今までこういうバンドが登場していなかったことが不思議だとも思った。2000年代、2010年代と、この15年で音楽を聴く環境は猛スピードで転がるように激変し、インターネットの普及やアイドル群雄割拠、ライヴ・シーンの隆盛、フェスはサーキット・イベントを入れれば1年中開催されている2015年。難解なアンサンブルや屈折した表現など、そのささくれ立った特異とも思われる音楽も、J-POPシーンと結びつくことで新たな価値観が生まれ、それがスタンダードのひとつになってきている。自らの特色や強みを活かしたサウンドを追求したり、踊れる音楽に抵抗するバンドも増えてきた。そんな中、突如現れたvivid undressというバンドは、この2000年代、2010年代にあたる15年間が作り出したと言っても過言ではない、生まれるべくして生まれたバンド。自らが標榜する"J-POP突然変異型ROCKクインテット"という形容は言い得て妙だ。

vivid undressの結成は2014年3月12日。別々に音楽活動をしていたメンバーが集まり、下北沢を拠点に活動している。結成から間もなくして、MASH A&Rのオーティションのマンスリー・アーティストに選出され、同年7月にデモ音源がバイヤーの目に止まったことをきっかけに、TOWER RECORDS渋谷店限定で1stデモ『ゼロ』でのリリースが決定した。この1,000枚限定のデモはすでに完売とのことで、この異例のセールスが早耳のリスナーからの注目度の高さを物語っている。そして今回、初の全国流通盤である6曲入りミニ・アルバム『Unveil』が5月6日にリリースされる。MVがYouTubeでも公開されている、デモ収録の「パラレルワ」のイメージでこの作品を聴くと、十中八九その進化に驚くだろう。

まずTrack.1「はやるよろひや」は現代版エモの要素も強く、ラウドロック・リスナーにも受け入れられるであろう楽曲。少しJAWEYEの匂いもあるな......と思って資料を確認すると、作曲を担当しているのが師崎洋平(ex-JAWEYE)だった。彼は他にTrack.2「生きて生きて」、Track.6「ワンダーランド」の作曲を担当し、メイン・ソングライターであるヴォーカリストkiilaとTrack.5「嘘月」を共同作曲し、全曲の編曲にも携わっているようだ。彼の存在がvivid undressの特性をより拡張している。

ヴォーカリストであるkiilaは時にいたいけな少女のように歌い、時に妖艶な余韻を残し、時にヒステリックに激情的に、時にエフェクトを用いてVOCALOIDのような質感も生み出すという、サウンドと一体化したヴォーカルで自分の言葉を伝えていく。サスペンス・ドラマのジングルを彷彿とさせるイントロのギターからもユーモアが窺える、猫がモチーフになったTrack.4「人間なんだもん」は女性アニメ声優やアイドルをも凌ぐ、猫なで声にも近いキュートな歌声。合いの手が入り、日本的音階にテクニカルな裏打ち、ピアノの音色がドラマティック且つポップに響く目まぐるしい展開は、2000年以降に生まれた日本の音楽を凝縮させたようでもある。

各楽器もテクニカルでありながら、どの音が前面に躍り出ていくというわけではなく、すべてが均衡の取れたアンサンブルである。特に適材適所でアクセントを与えるキーボードは楽曲の色味を存分に広げ、そういうサウンドのアプローチはポップス的でもある。でも、彼らにとってはロックだとかポップスだとか、そういうことは関係ないのかもしれない。自分たちの吸収してきた音楽と、その中で生まれた美学を貫くという姿勢が、これからもvivid undressというバンドを突き動かしていくのだろう。しっかりとまとまりを持った音源ゆえに、これがライヴでどう表現されるのかも見てみたい。突然変異から飛躍的進歩を遂げたvivid undress、気になる存在である。



vivid undress
1stミニ・アルバム
『Unveil』
[Zombie Magazine Records]
ZMRD-1001 ¥1,890(税別)
2015.05.06 ON SALE
amazon | TOWER RECORDS | HMV

1. はやるよろひや
2. 生きて生きて
3. 簡単な言葉
4. 人間なんだもん
5. 嘘月
6. ワンダーランド

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