Japanese
vivid undress
Skream! マガジン 2015年09月号掲載
2015.08.13 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 沖 さやこ
5月6日に初の全国流通盤『Unveil』をリリースした"J-POP突然変異型ROCKクインテット"、vivid undress。そのリリース・ツアー・ファイナルが下北沢LIVEHOLICで行われた。共演は、vivid undressと同じく女性ヴォーカルを擁するカラスは真っ白。当日はソールド・アウトに加えてTV収録も入るなど、早耳リスナーからの注目の度合いも窺える。入場時にカセット・テープを入場者特典としていただいた。このカセットにはこの夏に全国公開される映画"TOKYO CITY GIRL"のエンディング・テーマである未発表の新曲「空想電車」が収録されていた。カセットが聴けない人のために、眺めるだけで楽しめる、ファイナルの思い出の品になるよう、メンバーがタイトルを書き込んだりと1本1本手作りしたもの。"ネットを開けば音楽が簡単に聴けてしまうこの時代に、vivid undressからの楽曲同様少しひねくれたプレゼント"とのことで、磁気が飛ばぬよう取り扱いに注意をしてありがたくカバンに入れた。
先手はカラスは真っ白。シミズ コウヘイ(Gt/MC)、オチ・ザ・ファンク(Ba)、タイヘイ(Dr)がステージに登場すると3人で演奏を始め、シミズがクラップを促し早口MCでスピードをつけて一気に場内の流れを作る。シミズが"モーセの十戒"のごとくフロアに道を作り"神になった気分"とフロアを笑わせ、その道を通ってヤギヌマ カナ(Vo/Gt)が登場した。
1曲目は「9番目の「?」」、攻撃力の高い演奏で観客のハートを貫く楽器隊に、囁くような声でありながらその音の隙間をまっすぐ射抜くように声を飛ばすヤギヌマ。すごく歪で、何がなんだかわからないけど引きつけられる、そんな圧倒感があった。とにかく全力投球で、バンドでてっぺん取るぜ!と意気込む10代の若者のようなエネルギー。空回りを恐れることなく突っ走る、その潔さが気持ちいいし痛快だ。
シミズの"新曲やります"というMCから、9月2日にリリースされる『ヒアリズム』収録の「ニュークリアライザー」。ストレートな楽曲を全身全霊で完走すると、リズムで引きつけて巧みに「night museum」へ。その都会的な楽曲と色気のあるヤギヌマとオチのツイン・ヴォーカルや、エモーショナルなシミズのギター・ソロにうっとりしていると、いきなりシミズがサングラスをかけて"夏の思い出を作ろう。一緒にデートしよう!"と言い、"上野""動物園"と"箱根""ロマンスカー"のコール&レスポンス......この無理矢理なまでのはちゃめちゃ感、相当ハッピーだ。
後半戦では「The xxx」「HIMITSUスパーク」「正義とアクチュエータ」と肉体的な演奏で畳み掛け、しなやかな躍動感が生まれてきた。ヤギヌマのヴォーカルにも熱が帯びる。「フミンショータイム」ではシミズがサビの振りつけを観客にレクチャーし、彼は全力で踊っているかと思いきやギターを弾くことに没頭したりと、挙動不審かと思うほど目まぐるしい。だがそのアティテュードが、カラスは真っ白という存在をもっと大きくしたい、もっとすごいところに行きたいという野心そのもののようにも見えた。4人それぞれのフレッシュな気持ちが溢れるライヴだった。
後手、本日のメイン・アクトであるvivid undressは1曲目の「はやるよろひや」から地面を掘り返すような太く安定感のあるサウンドで魅了。kiila(Vo)はキュートな声を曲によって器用に操り、それは声色を使うというよりはそれぞれで別人格になるようでもある。楽曲に憑依して、サーフィンのようにメロディを優雅にダイナミックに乗りこなす。楽器隊が彼女のヴォーカル目がけて音を鳴らす、そんな海が舞台だからこそ、それも可能なのかもしれない。筆者は後方で観ていたのだが、観客の盛り上がりも凄まじく、ほとんどステージが見えなかった。だが音源では感じられなかった熱量や気迫が、遮られている視覚を凌ぐほどに襲い掛かる。
kiilaは3ヶ月回ったツアーで、待っていてくれる人が必ずいたことが嬉しかったと語る。"各地方で受け取ったパワーを今日全部出して帰ろうと思います!"と彼女が笑顔で告げると、続いてはダンス・ナンバー「嘘月」。曲を聴けば聴くほど"J-POP突然変異型ROCKクインテット"という形容に納得をする。メロディも展開もまさしくJ-POP。rio(Key)の奏でる旋律はJ-POPのロマンチシズムの象徴のようだ。そしてyu-ya(Gt)、syunn(Ba)、ウツミエリ(Dr)はバンド・サウンドの持つ勢いを全力で叩き出す。このロマンと勢力、ふたつを兼ね揃えたのがvivid undressだ。
変拍子を取り入れた優雅な「シンデレラ」はドラマ性の高いアレンジと泣き叫ぶようなヴォーカルが焦燥感を生んだ。ジャズ×歌謡曲なゆったりとしたダンス・ビートが展開する「パラレルワ」、rioが柵に乗り上げてクラップを煽ったポップな「ワンダーランド」と、この音の中で埋もれずに鋭く高音を歌うkiilaの喉の強さに感心した。宇宙初公開されたという「空想電車」は静かに始まり、後半は轟音を巻き起こすバラードで、kiilaは吐息も歌の一部にしてストーリーを描ききる。そのテンションをラストの「簡単な言葉」まで切らすことはなかった。
アンコールではまず「生き物なんだもん」を披露し、そのあとに2ヶ月連続で自主企画ライヴ"PROGRESS PROGRAM"を開催することを発表した。kiilaは"新木場STUDIO COASTでやるのが夢"と語り他のメンバーや会場を驚かせたが、観客の熱量や堂々とした安定感のある音を鳴らすライヴを体感して、近い将来それも実現させてしまうのではないかと思った。現時点でかなり完成度が高いvivid undressは、この先どうこれを超えて進化していくのか? そこにも注目だ。
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