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INTERVIEW

Japanese

Non Stop Rabbit

2020年12月号掲載

Non Stop Rabbit

Member:矢野 晴人(Vo/Ba) 田口 達也(Gt/Cho) 太我(Dr)

Interviewer:秦 理絵

-歌詞の話で言うと、恋愛をテーマにした曲が増えましたね。「ハニートラップ」、「愛のPULSE」、あと「ALSO」もですかね。以前は反骨心を剥き出しにした曲が多かったけど。

田口:それだとバランスが悪いなと思ったんですよ。今も言いたいことはいっぱいあるんですけど、いい意味で、暑苦しいだけじゃないよって、幅を見せたくて。あとは、同じ期間に何十曲も作ると、自分のやり方に飽きてくるんです。"またお前それ言うのか"みたいな。そうなってくると、自分で新しい引き出しを開けなきゃいけなくて。そもそも僕は実体験でしかラヴ・ソングを書きたくないから、あんまり数を書きたくないんです。

-恥ずかしいから?

田口:うん、悲しいし。

太我:ふふ(笑)。

田口:だから、今までは1枚のアルバムにつき、ラヴ・ソングは1曲にしてたんですけど、ここにきて自分のレンジを広げる必要があったし、そのためには曝け出すのが一番いいのかなって。あと、やっぱりハルはバラードとか悲しい歌が一番ハマる声っていうのもわかってるので。それをやらせるのがいいのかなと思うんですよね。

-なるほど。「音の祭」で、"音楽の価値"みたいなことをテーマにしたのは、やっぱりコロナの影響が大きいですか?

田口:そうですね。思ったよりも、音楽の価値に関して、世間とのズレがあるなって感じたんです。僕は"音楽は絶対になくならない"と思ってるけど、Twitterを見てると、音楽ってなくなる可能性があるなと思っちゃって。こんなにライヴを毛嫌いしてる人たちがいる。芸術って俺らが思ったほど、中心にないぞっていうのがあって。

-その時期、同じような感情を抱くリスナーもいたと思います。

田口:そこが悲しくもあったんですよ。じゃあ、どっちが変な人なのかな? って考えたときに、たった3人の音楽を聴きたいがためにライヴハウスに集まる何千人がアホなのか、それを端から見て、"バカだな"って言ってるやつが変わってるのか。それを確かめる意味はないけど、もし俺らが変わり者だとしたら、そのまま変わり者の集団を作ろうよって言いたかったんです。THE俺らの反発心って感じの曲ですね。

-わかります。コロナ禍の曲と言えば、3月に豊洲PIT公演("LiveTour 2020~武道館を狙うたてがみの生えたウサギ~")が中止になったときに緊急配信した「全部いい」も収録されます。

田口:政府の要請でライヴができなくなって、3日間で作った曲です。

-当時、ライヴが中止になることが補償とセットでないことに対して、悔しさ、憤り、やるせなさもあったと思うけど、この曲はそういう想いをぶつけるんじゃなくて。本来あの場所で伝えたかったことが、シンプルに音楽になったのが良かったと思いました。

田口:これ、始まりは"全部もういい"っていうノーの意味だったんですよ。もう何もやりたくない。それをポジティヴに変えただけで。

-そうだったんですか......。

田口:中止になったのはツアー・ファイナルだったんですけど、あの時点で"今回はすげぇいいライヴできるんじゃねぇ?"って、スタッフ全員が言ってたんです。バンドがすごくいい状態になってた。なのに、豊洲PITができなくなって。あの時点で、また何年後にライヴができるかわからなかったから、"あぁ、もういいや"って、頑張る理由がなくなっちゃったんですよね。って、俺が思うってことは、世の中に同じように思ってるやつもいるはずだから。じゃあ、今何をしてほしいんだろう? って考えたら、怒ってるとこを見たいのか、いや、そうじゃない。たぶん抱きしめてほしいんだろうなって。

-うんうん。

田口:"頑張ったよね"って言ってほしかっただけだと思ったんですよ。声高に"つらいよね"って言える時期でもなかったじゃないですか。みんなつらいから。だから、これはもうアーティストの役目であり、芸術の役目だなって思って作った曲です。

-ふたりは、この田口さんの動きに対してどう思いましたか?

矢野:こんなにすべてを肯定する歌はないですよね。僕自身、ポジティヴな人間だから、納得できる言葉が多くて。歌を録ったのは配信の前日ぐらいだったと思うんですけど。スタジオでレコーディングができないから、自分の家で録って。ほぼデモ・トラックでした。

太我:当時、急いで配信はしたけど、実際に生で演奏したのは、それから半年後だったから、わりと最近なんですよ。この曲は今演奏してても、熱くなるものがありますよね。

-私は自分がダメ人間だから、こういうタイプの曲がすごく沁みるんです。でも、田口さんは社長だし、バンドでも成功を掴もうとしてる。そういう人が、こんなにも、ダメな人間に寄り添う優しい曲を書けるのは、なんでだろう? って思うんですよ。

田口:いやいや、俺全然しっかりしてないんですよ。

矢野:めちゃくちゃオナラしますよ。エレベーターの中で。

田口:でも、ちゃんと許可をとるよね?

一同:あはははは!

田口:まぁ、僕もダメな人間だから、こういう曲を書くんだと思います。ハルみたいに、もともとポジティヴなやつって、すぐに"次何をしようか?"って切り替えられるんですよ。でも俺はすぐには今後のことを考えられなかったから......。

矢野:自分に言い聞かせてるの?

田口:うん、そうだと思う。僕がこの3人の中で一番聴いてる人と変わらないと思うんです。才能があったわけでもないし、曲作りに関しても、頑張ってできるようになっただけだし。一緒なんです、みんなと。だから、わかるよっていうことですね。

-では、ラスト・ソングの「偏見じゃん」の話を聞かせてください。「カノン」(パッヘルベル)のフレーズを入れ込んだ、めちゃくちゃポップ且つ遊び心のある曲で。

田口:最後にかましたかったんですよね。

-世にはびこる偏見を挙げていく歌ですけど。書こうと思ったきっかけは?

田口:僕らのYouTubeって、世の中に対して文句を言ってるとか、気になったやつを引っ張り上げて、ただ喋ってるだけなんですけど。それが3人の素に一番近いんですね。だったら、それをもっと曲の中に入れてもいいのかなと思って。

-その発想って、最初に話してた"職業:ノンラビ"と思えたからこそかもしれないですね。YouTuber側の自分たちをバンドにも還元していけるっていう。

田口:そう。今まで俺らは音楽の売名にYouTubeを使ってきましたけど、YouTubeから得て成長したこともめちゃくちゃあったんです。僕らが人として柔らかくなったのは、YouTubeのおかげなんですよ。今は"いろんな意見があるよね"って言えるようになった。だって、あんなに他人の意見を聞ける場は他にはないですからね。

-ひとつ、この曲を最後に置いた意味について踏み込むと、YouTuber系バンドという存在が偏見の目で見られることへのメッセージでもあるんだろうなと思いました。

田口:うん。本当にそのとおりです。

-でも、あえてその偏見を払拭するような言葉は入ってなくて。

田口:それを自分たちで言ったら、ダサいなと思ったんですよね。"君らが僕らに抱いてるのは偏見じゃない?"なんてことは言う必要のないことなので。いろいろ言ってるけど、最後はチャンチャン♪って感じで楽しく聴いてほしいです。

-この先、ノンラビみたいなYouTuber系バンドって出てくると思います?

田口:出ないと思いますよ。出られないというか。やってみたらわかると思うんですけど、思ったよりもムズいんですよ。俺らもまだ悩むことが多いし。

太我:SNSでうまく売名してくるバンドは増えるだろうけど。

矢野:たしかに同じようなバンドはいないよね。

-今後の活動に関しては、どんなことを考えていますか?

田口:とりあえず、このアルバムを早く聴かせたいですね。配信ライヴを発表して、チケットを売るところまでいったのに、全部中止にしちゃってるんです。根本、"僕らはやっぱり配信じゃねぇな"っていうのがあるので。

-YouTuberバンドだけど、ライヴは配信ではやらないと。

田口:絶対やりたくないんですよ。ギリギリになって3人でごねてます。ちゃんとお客さんを入れられるようになって、あの空気で、アルバムの新曲をやらなきゃ意味ないよねっていうのがあるので。なんとかツアーをやりたいんですよね。

矢野:だって、"ライヴ"って"生"ってことですからね。そこにみんな気づかないかな? 配信ライヴって矛盾してるんですよ。どっち? ってなる。それはずっと思ってます。

田口:もちろん配信ライヴは、配信ライヴでいいと思うんですよ。あの距離で、最前にいるような感覚を味わえる。めっちゃ素敵だと思うんですけど......。

矢野:僕らの良さって、生なんですよね。普段YouTubeにいるからこそ。