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INTERVIEW

Japanese

嘘とカメレオン

2020年04月号掲載

嘘とカメレオン

Member:チャム(.△)(Vo) 渡辺 壮亮(Gt) 菅野 悠太(Gt) 渋江 アサヒ(Ba) 青山 拓心(Dr)

Interviewer:TAISHI IWAMI

-1曲目の「さらばウォルポール」と2曲目の「0」は、ただやりたいことをやっただけのサウンドが、特定のジャンルやシーンに括られることへの苛立ちや、それがブレイクしたことで、模倣してしまう人たちがいることへの疑問とも取れるような内容だと思うんです。2曲続けて"イミテーション"というワードも出てきますし。

チャム(.△):たしかにおっしゃったような感情は入っています。でもそれは、音楽シーンに対してどうこうではないんです。というのも、私は人が言う嘘とカメレオンらしさとか、どのミュージシャンがどんな音楽をやってるとか、自分たちを取り巻く状況とか、そういうことに一切興味がないので。ほんと、Michael Jacksonくらいしか知らないんですよね。

-チャム(.△)さんがそういう方だという情報はありましたけど、本当に一点の曇りもないんですね。

チャム(.△):はい。歌詞を書くにあたって、私にある私以外の情報はデモ音源だけ。そこから引き出される言葉でしかないんです。その根底には、既成概念を壊したいという、私が生きている中で軸となっている価値観があって、それがある種の怒りになっています。出る杭は打たれるとか、右向け右とか、そういう行動や価値観に対する憤りですね。でも、歌詞を書くときに、具体的な対象や経験と、直接的に結びつけることはありません。

-作曲をする渡辺さんはどうですか? 嘘とカメレオンは、国内バンド/アーティストだけによるフェスの主流になっている、フィジカルな盛り上がりや一体感を煽ることに長けた、性急なビートを特徴とする、"ガラパゴス化した日本のロック"と言われるシーンに括られている現実があると思うんです。そして現在、その作られたシーンには陰りが見え始めています。そういった一連の流れに疑問はありますか?

渡辺:はい、おっしゃることはよくわかります。たしかに、嘘とカメレオンの表面的なサウンドは、10年代の国内ロック・フェス・シーンを席巻したバンドの括りで語られるものだと思います。そのうえで僕が何をしたいかというと、もう1世代前、00年代のライヴハウス・シーンへの憧れだったりするんですけど、思考はすごくシンプルで、単に好みが出ているだけなんです。

-となると、括られることには抵抗感があるということですか?

渡辺:いえ、あまり関係ないですね。流行を追い掛けるつもりも拒むつもりもないし、ビッグになるために履物を履き替えるつもりもないし、グッとくるものがあれば昇華したい。ただそれだけですね。自分のバランス感覚で調合してできた新しいものが、次に世の中を席巻したらいいんじゃないのって、温故知新の最新バージョンみたいな。結局みんな、自分の中にないものは出せないし、今注目されてるアーティストやバンドも、それぞれのバックボーンを混ぜただけのこと。それがみんなの支持を得ただけで、どれもが等しく素晴らしいと思います。

-1曲目の「さらばウォルポール」は、まさにそんな渡辺さんオリジナルなミクスチャー感覚が、鮮明に出た曲だと思いました。数秒後の予想というか、多くの人が感覚的に持っているセオリーを外し続け、新たなスタンダードを形成していくようで。

渡辺:嘘とカメレオンらしさを気にせず作ったんですけど、やっぱり出てきた嘘とカメレオンらしさを象徴していると思います。"毎セクション、リセットさせてやるからな"みたいな、聴いてる人を安心させない小憎らしさみたいな。"やっぱり性格悪いな俺"って思いましたもん(笑)。

-2曲目の「0」は、明確にリファレンスとなった曲が浮かんできました。ARCTIC MONKEYSの「Brianstorm」なんですけど、どうでしょう。

渡辺:「Brianstorm」は、この先もまた出てくる可能性が大いにあるくらい好きで、ずっと頭の中で鳴っている曲です。カレーととんかつとラーメンくらい、生活と一体化してます。ああいうシンプルで強い曲って、一番難しいし、考え出すとめんどくさいんですよ。そこでしっかりパワーを持たせることに成功している頂点が、「Brianstorm」だと思ってるんです。

-「秒針」はベースの歪みがすごくカッコいいですね。

渡辺:いいですよね。どのエフェクター使ったか忘れちゃったけど(笑)。

渋江:まだライヴで再現したことないんで、どうしようか悩んでます。人力では難しいミュート感もあるし。

渡辺:あの歪みをそのまんまモニターで返されたら、こっちは演奏できないしね。今のところ一番有効なのが、同時に屁をこいて低音を演出しようって(笑)。

渋江:自在に出せるように練習しないとね(笑)。

-90年代、オルタナティヴ・ロックの色を感じました。

渡辺:それは結果的なことで、メンバーもそう言ってて。

渋江:RED HOT CHILI PEPPERSとかLINKIN PARKみたいな。デモの段階だともうちょっと日本のガレージ、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTっぽい感じになると思ってたんですけど。

青山:僕は最初から海外っぽいなって思ってました。

渡辺:こんな感じで、メンバーによって感想が全然違うんですよね。そこが、僕ひとりでやってりゃいいわけじゃない、バンドとしての面白さなんです。

-RED HOT CHILI PEPPERSは土っぽさがあって、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT は、キメの荒いサウンドが特徴。どちらもオーセンティックなロックやR&B、パンクに由来しています。それに対してLINKIN PARKはもっと機械的でハイプロダクションなラウドさ。その狭間を狙ったような印象もあったんですけど。

渡辺:わかります。LINKIN PARKまでやりきる感じより、もうちょっとザラつかせたサウンドが好きなんです。

-「リトル・ジャーニー」は、ギャグと言ったら失礼かもしれないですけど......。

渡辺:いや、わかりますよ(笑)。

-王道のミドルなギター・ロックでいけばいいものを、なぜ強引にBPMを変えるのかと(笑)。

渡辺:僕の中で本筋は後半なんです。それに対する引っ掛かりとなる前半が、あまりに王道アンセムすぎたんですよね(笑)。

-そんな感じで散々かき回されてのラストは「BIG FISH」。全曲それぞれの色があるなかで、この曲だけは別の次元というか、今までの嘘とカメレオンとは離れたところにいる感じがしました。

渡辺:これは完全にthe band apartへの切なる想いですね。僕が一番好きなバンド。よくYouTuberとかがやってるじゃないですか。"〇〇みたいな曲やります"って、その人っぽいコード進行とか癖とかを真似た曲を作って演奏するやつ。あれを、僕が本気で2010年代後半に入ったあたりのthe band apartでやったんです。自前で同じベースとギターも買いましたし。

-最後の"You can choose fake or truth..."という歌詞は、 チャム(.△)さん、ひいては嘘とカメレオンのすべてが詰まっていると言っても過言ではないほどの感動がありました。"fake"と"truth"については、どう考えてますか?

チャム(.△):まさしく、この1文に私が日々考えてることが集約されていると思いますし、嘘とカメレオンらしさの結晶でもあると考えています。意味については、以前他のインタビュアーさんにも同じ質問をしたことがあるんですけど、本物のマジシャンって、本物だと思います?

-そう聞かれると答えに詰まりますね。

チャム(.△):私は"fake"でも"truth"でも正解だと思っていて、それは人それぞれに答えがあると思ってます。

渡辺:俺はセロが本当にハンバーガーを壁から出したと思ってるよ(笑)。

チャム(.△):(笑)事実だけ見れば違うことと、そうであると信じたいことの間というか、私はそこにすごく大切なものがあるような気がしていて、そのポイントこそ、私が信じていたいことなんです。だから、誰にどう伝わればいいかとか、そういう感情もありません。ただ、私たちの作品を聴いてくれた人には、それはあなたにとって本当ですか? お伽話ですか? って、聞いてみたいですね。

-曲順は、この言葉があって最後にしたのでしょうか?

渡辺:僕の曲もチャム(.△)の歌詞も、前提があって作るわけではないので、偶発的なものですね。もっと言うと、彼女は頭の中で組み立ててどうこうできるタイプじゃないんです。すべての起因は生き様。嘘とカメレオンというバンド名も"生き様だから"のひと言で収束しますし、だからこそ、こういう締めに相応しい言葉も出てくるんだと思います。

チャム(.△):狙ったわけではないんですけど、これしかないと思える言葉が出てきました。

渡辺:そこにロジカルな要素はまったくなくて、生き様でしかないから、何が出てくるかわからずハラハラするんですけど、いつも結果的に一同納得できるような言葉がちゃんと出てくるので、安心感もあるんです。だから、普通に生活していくなかで必要なネジは僕ら4人が担うんで、あなたはその生き様を大切にしてくれたらいいよって、思いますね。