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LIVE REPORT

Japanese

嘘とカメレオン

Skream! マガジン 2018年12月号掲載

2018.10.27 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 秦 理絵

オープニング映像が流れ出して、全国ツアー"嘘とカメレオン pre.「ここHOLE ヲトシアナTOUR」"のファイナルとなる渋谷CLUB QUATTRO公演がスタートした。"変幻自在のオルタナティヴ犯罪グループ"に扮したメンバーが刑務所から脱獄するという手作り感のあるパロディ映像に、満員のフロアから笑いが沸き起こる。この日のライヴは9月12日にリリースされたメジャー・デビュー・アルバム『ヲトシアナ』を携えたレコ発ツアーのファイナル。そんなバンドの晴れ舞台だからこそ、おそらく企画、制作までに少なからず時間を要したであろう遊び心溢れる映像を用意している"おもてなしの心"が、まず嘘カメ(嘘とカメレオン)らしかった。

ライヴは「百鬼夜行」から始まった。"お待たせしました! 端から端まで見えてますよ!"。"動けるデブ"の異名をとり、ステージ上手でボリューミーな存在感を放つ渡辺壮亮(Gt/Cho)の声を合図に、ロック、ジャズ、ファンクなど、あらゆる音楽のおいしいギミックが複雑に絡み合う嘘カメのバンド・アンサンブルが、会場の熱狂を一気に沸点へと押し上げていった。ステージ下手で渋江アサヒ(Ba)がアグレッシヴに動き回った「フェイトンに告ぐ」から、ミラーボールがフロアを美しく照らした「手記A」、チャム(.△)が操られたマリオネットのような不穏なジェスチャーで歌う「モームはアトリエにて」へと、序盤は『ヲトシアナ』の中でも、とりわけ攻撃力の高いキャッチーな楽曲を容赦なく畳み掛けていく。

最初のMCは、嘘カメ名物の渡辺のコーラ飲みタイム。ペットボトルをマイクに近づけて、キャップを開ける音がプシュッと響くだけで、会場から歓声が起こると、"(俺たちが)出てきたときより沸いてるんじゃない?"と渡辺は嬉しそうに笑っていた。そんな渡辺によるパワフルなラップが炸裂した「JOHN DOE」では、男女に分けた"アン・ドゥ・トロワ"のコール&レスポンスで会場を一体にすると、予測不能に展開するサウンドが摩訶不思議な世界へと手招きする「鳴る鱗」、真っ赤な照明が激しく明滅するなかで漆黒の景色を描く「ヤミクロ」など、テンポやグルーヴを自在に操るテクニカルな楽器陣が、渋谷CLUB QUATTROに曲ごとにまったく違うムードを作り上げる。

"遅ればせながら、我々9月12日にメジャー・デビューしました!"。中盤に渡辺が挨拶をすると、"おめでとー!"という祝福の声が飛んだ。さらに、メジャー・デビューの直前に遭った交通事故についても触れると、"容態を心配してくれて、「復活、待ってるよ」って言ってくれる人がいて、俺はバンドマンなんだなって改めて認識できました"と熱く語り掛ける。そして、ゆったりとしたメロディに乗せて、会場のお客さんが左右に腕を振った「Lapis」では、チャム(.△)がステージ前方にしゃがみ込み、お客さんと目線を合わせるように歌う姿が印象的だった。

物販紹介で、「フェイトンに告ぐ」や「N氏について」などのミュージック・ビデオに出演した演者を招くという、ゲストの無駄使い的なコーナーを挟んだあと、"ライヴ後半戦も盛り上がっていけますかー!"と叫んだチャム(.△)が"腕組みヘドバン"を見せた「N氏について」から、いよいよライヴはクライマックスへ。バンドの名前を一気に広めるきっかけになった「されど奇術師は賽を振る」で作り上げた空前の盛り上がりは、メジャー・デビュー以前、ノー・プロモーションにもかかわらず、ライヴの実力だけで話題をかっさらってきたバンドの実力を感じさせるのに十分なものだった。そして、最後にチャム(.△)が"嫌なことがあっても、みんなが心の中の光に気づけるように、お守りのように思ってほしい曲をやります"と伝えて、ラスト・ソング「キンイロノ」を届ける。光がいっぱいに溢れたステージ。そこで披露した"道を作ってゆく/聖者たちは 進む"と歌う穏やかなポップ・ナンバーには、嘘とカメレオンというバンドが、そこにいるみんなをこの先へと引き連れていく決意が込められていた。

アンコールでは、"終わりますねぇ......"、"終わっちゃうねぇ"と、メンバー同士が口々にライヴの終わりを惜しむような言葉を口にしながら、「盤下の詩人」で今回のファイナルは幕を閉じた。とにかく自分たちの"これ面白いんじゃない?"という感性に忠実で、やりたい放題にバンドを楽しんでいる嘘とカメレオン。この日のライヴには、そんなバンドの神髄がギュッと詰まっていた。彼女たちの落とし穴。一度ハマると、もう抜けられない。

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