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LIVE REPORT

Japanese

スキッツォイドマン

2017.07.07 @下北沢CLUB Que

Writer 小田 淳治

織姫と彦星が1年に一度だけ出会える日。見渡せば一面きれいな星空......ではなく血の海。そう、ここは地獄の1丁目......古より伝わるロマンチックな節句はどこへやら。本日、ここ下北沢CLUB Queは地獄への入り口と化すのだ。スキッツォイドマンが6月にリリースしたミニ・アルバム『必殺!地獄逝き!!』のレコ発企画における3ヶ月連続ライヴ。その第1弾は、彼らとゆかりがある、またはステージを共にしたいと思っていたバンド2組を迎えて行われた。

トップバッターを務めたのはスキッツォイドマンの友達、大阪から来たエモーショナルなロック・バンド、それでも尚、未来に媚びる。間髪いれず鳴らされた爆音の「処暑」から始まったその荒々しさは、まさに地獄まで届きそうな勢いだ。続く「夕方の街」ではオイケリョウタ(Gt/Vo)とろく(Gt)のツイン・ギターが激しく交わり、ザクザクと観客の鼓膜を震わせていく。MCではがーこ(Vo)が"みなさん、地獄に行く準備、できてますか?"と煽りつつ、今回のライヴへの意気込みやバンドを続けていく苦労などを語る姿が印象的だった。熱のこもった言葉たちは、続く「高架下心」に乗せて会場の隅から隅までを覆い尽くし、観客にロック・バンドとしての生き様を見せつける。まるでTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを彷彿とさせる気迫と哀愁漂うメロディ。最後の「暮れぐれも」の演奏が終わるその一瞬まで、彼らはこれから地獄へと向かう私たちに、最高のエールを送ってくれた。

転換が終わると、下北沢を中心にアグレシッヴに活動を続ける5人組、嘘とカメレオンのステージが始まろうとしていた。会場が暗転すると、渡辺壮亮(Gt)がつらつらと怪しい文言を読み上げる。KING CRIMSONの代表曲「21st Century Schizoid Man」(邦題:21世紀のスキッツォイド・マン)を引用するなど、まさに今回の企画に合わせた言葉たちは、徐々に会場のボルテージを上げていく。そしてライヴは"みんなで命日にしようぜ!"と渡辺が絶叫した「モームはアトリエにて」から幕を開けた。息もつかせぬ展開の多い楽曲と、紅一点で艶めかしい声を持つチャム(Vo)のヴォーカルが想像以上にクセになる。MCでは再び渡辺が舵を取り、そのユーモア溢れるトークで会場を自分たちのペースに引き込んでいく。スキッツォイドマンとの初めての対バンのついて、また渡辺自身が大阪でのスキッツォイドマンとの忘れられない思い出を面白おかしく語ってみせた。なるほど、この振れ幅も魅力のひとつなのか。とはいえ、ひとたび演奏のスイッチが入ると先の読めないパフォーマンスが繰り広げられる。ライヴ中盤に差し掛かると"楽しく地獄行こうぜ!"というひと言に続けて、現在までに150万回再生を記録しているMVが話題の「されど奇術師は賽を振る」がプレイされる。BPMの速さもなんのその、プログレッシヴなサウンドとそのキャッチーさに、観客もハンズアップして応えてみせる。哀愁も感じさせるラストの「盤下の詩人」を次なるスキッツォイドマンの置き土産として激しく鳴らしてみせると、今日に感謝を告げ、バンドは颯爽とステージをあとにした。

"故人の言うことは絶対!"――幾度となく唱えられるこの合言葉をきっかけに、今回の企画の主人公にして、地獄を創造する張本人、スキッツォイドマンのライヴがスタートした。最新作の表題も飾る「必殺!地獄逝き!!」は、バンドのヴィジュアルとは裏腹に超絶ポップで耳馴染みのいい楽曲だ。白塗りの顔であるキャプテンkt.(Ba/Vo)がいきなり血のりを吐くパフォーマンスを披露すると会場は驚くどころか、ここは地獄だ! と言わんばかりの盛り上がりを見せていて、この対応力には思わず感心してしまった。それにしても終始MCにせわしないバンドだ。むしろMCの方がハイテンションなのでは? と思ったほどで、それは一切喋らないが抜群のメロウ・ヴォイスを聴かせてくれるワンダー久道(Gt/Vo)のキャラクターをいっそう謎めいた存在に見せてくれた。"今から最高のラップ・ナンバー、みんなで楽しくやっていこう!"とキャプテンkt.が叫ぶと、フリーキーなフロウとサーフなカッティングが順番に顔を出す「遺書」へ。80'sディスコの風薫る曲に観客もクラップしながら腰をくねらせ揺れていた。後半戦、「エピソードⅡ」では"スキスキ大好きスキッツォイドマン!"と会場が大合唱。そのカオスの中でふと気がついたのは、ハチャメチャなステージでどっしりと構え、変則的なリズムを巧みに生み出す卍毒蜘蛛ノ助(Dr)の存在だ。見た目は完全に強面な方だが、時折窺えるドラムのフィルインなど、そのテクニックは折り紙つき。そんなここまでの物語の熱量をすべて注ぎ込む、「ゴールドゴースト」で地獄の底を駆け抜けると、キャプテンkt.はフロア中心に男を集めて思いっきりダイブ。本編は圧巻ののち幕を閉じた。と、2分も待たずにアンコールが始まる、これまた地獄ならではの展開に。本日の本当の締めくくり「ビーバップ!I wanna be your 心霊現象」では、バンド然としたファンキーでソリッドな音を響かせ、決して彼らが素っ頓狂な、中身のないバンドではないことを証明してみせたのだった。同企画は場所を同じく9月まで開催される。次は8月8日、故人の言うことが絶対ならば、次回も間違いなく地獄のようなライヴを堪能できることだろう。


[Setlist]
それでも尚、未来に媚びる
1. 処暑
2. 夕方の街
3. 昨日のこと
4. 高架下心
5. 也子
6. 摂氏4℃
7. この春を繋いで
8. 暮れぐれも
9. リフレイン

嘘とカメレオン
1. モームはアトリエにて
2. 終わりの果てのはなし
3. 鳴る鱗
4. 輝夜華ぐ夜
5. されど奇術師は賽を振る
6. Lapis
7. ヤミクロ
8. 盤下の詩人

スキッツォイドマン
1. 必殺!地獄逝き!!
2. 人モドキ
3. 爆裂!バケモノハンター
4. 地獄はどっちだ
5. 遺書
6. 赤い地獄
7. 鬼さんこちら
8. 生き埋めZ
9. エピソードⅡ
10. ゴールドゴースト
En. ビーバップ!I wanna be your 心霊現象

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