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INTERVIEW

Japanese

été

2019年08月号掲載

été

Member:オキタユウキ(Gt/Vo) ヤマダナオト(Ba) 小室 響(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

-今回は歌詞のインスピレーションはどういうものからだったんですか?

オキタ:リリックのインスピレーションに関しては、「ラスト/ラスト」のほうは、"ぼくらさいごは いたいのか"という歌詞からすべてを書き始めたんですけど、「atmosphere」に関しても、ある意味何も考えずにというか。1回深いところを取っ払って歌詞を書きたかったんです。

-目に見えている景色を刻んでいく、シャッターを切っていくような歌詞ですね。

オキタ:そうですね。自分を取り囲んでいる雰囲気というのを書きたかったものです。

-「ラスト/ラスト」では、先ほど言った箇所"ぼくらさいごは いたいのか"と"いたい"というひらがなを用いてますね。ここにはいろんな意味合いを含んでいるんですか?

オキタ:ここにはもちろん"Pain"の痛みもあるんですけど、それを漢字で"痛い"にしてしまうと僕の中であまりしっくりとこなくて。とても意味が限定されてしまう気がしたんです。そういう意味合いで、ひらがなで表記することはとても多いですね。

-そうすることでいろんな意味も含めますよね。痛みということももちろん、そこにいたいということもできるし。歌に込められているものも、痛みもありつつ、そればかりでない強さもある。

オキタ:この"ラスト/ラスト"というタイトルに関しても、間に斜線が入っていますが、二面性みたいなところについてよく考えていたんです。最後に対してのスタートみたいな意味合いがあって、あとこれはぼんやりと考えていたものなんですけど、渇望や欲望を意味する"Lust"でもいいのかなと思っていて。そういう同じ言葉でも二面性がある、AでもありBでもあるみたいなことを感覚的にバッと書いたものなのかなって思います。

-振り返るとどういう心境だったのかっていうのは、今掴めますか?

オキタ:難しいですね。でも終わりのことや何かの最後についてって、いろんな場面で考えることだと思うんです。僕は、そういう何かが終わったとき、忘れてしまったり、なかったことになったりするのが一番嫌なんですよ。歌詞にもあるんですけど、それが"傷になるのなら悪くないな"という気持ちもありつつ、でもやっぱり終わりたくもないなというのが、ありとあらゆるものに対してあるんです。

ヤマダ:これまでのアルバムやミニ・アルバムでのリード曲「ruminator」(『Apathy』)や「DAWN」(『Burden』)とは、また違った曲だなと思っていて。どちらかというと以前自主制作で作っていた頃の「I am」(2018年3月リリースの3rdシングル表題曲)の雰囲気があるなとも思いましたね。衝動性があって、楽曲もそうですけど、シンプルで原点回帰のような感じもある。歌詞もそんな気がしましたね。

小室:うん。特に「atmosphere」のほうは、むちゃくちゃ難しい歌詞だなとも思ってますね。

ヤマダ:どちらもいいですけど、「atmosphere」この歌詞もすごく好きですね。散文的なところから始まって、"ねえ 本当はどうにもならなくなるのをずっと待ってる"というところでハッとさせられる。めっちゃいい曲だなって思います。

-「atmosphere」は曲の構成部分を聴いていると、テクノやダンス・ミュージックっぽい感じがあります。でもそこに歌詞、歌が乗ることでまた全然違った詩情的なものや様々な香りや感覚が立ち上ってくる、とても不思議な曲です。

オキタ:僕らはいろんな音楽が好きで、いろんな音楽性が溶け合った音楽をやっていると思っているんですけど、ただ「atmosphere」に関しては、なんとも言い難い曲でもあって。僕は音楽を作るときに、ありとあらゆるジャンルの"マナー"を重視しているんです。やるならちゃんとやるって言うんですかね。これを弾いたらそれっぽくなるとかよりも、もっとそのジャンルのマナー、根底にある観念みたいなところでそれをやろうと考えていて。テクノっぽい感じは、ずっと鳴ってるファ~っていうのが、1回途切れて、ドッ、ドッ、ドッみたいな部分があるからだと思います。でも、全体的なスケール感はハードコアやエモをイメージしていて。だけど、仕上がりはもっと現代っぽいというか(笑)。

-そうですね。

オキタ:2曲共ある意味挑戦作だなと思っていますね。「ラスト/ラスト」は原点回帰だとヤマダが言ってましたけど、そのなかでも、今までになかったアプローチがあって。きっと一聴したときにギター・ロック的な聴きやすい曲だと思うんですけど、これまでいろんな曲を作ってきたなかでもここまでわかりやすいものはなかったので、そういう意味では挑戦でしたし。「atmosphere」も、これまでなかったことを改めてこの角度で試してみようということで作っていたので、人に届いたときにどういう聴こえ方がするのかなというのが楽しみですね。

-特に「atmosphere」のような曲は、投げ掛ける球がすごく多いから、いろんな角度で反応がありそうな曲ですね。このシングルの制作時期は、他にもいろんな曲を作っていたんですか?

オキタ:制作的にはちょうど『Apathy』のツアー("Apacity tour 2019")を回っていた時期と被っていたんです。そのツアーが終わったら次は渋谷WWWでのワンマンが決まっていたので、制作に関してはこの2曲をとにかく仕上げようという感じでした。

-そのタイトなスケジュールで、なぜ今こうして新曲を出そう、作ろうと?

オキタ:WWWでワンマンをやろうという話が出たときに、何か出したいねっていうのはみんなで話していたんです。じゃあ会場限定のシングルにしようとなって。すべてが初めての試みなんですよね。WWWという規模でフリー・ワンマンをするのもそうですし、そこで音源を出す意味というのも、ここまで全国流通盤で2枚出させてもらって、サブスクでも聴ける状況で、ある種の前提を持っている人にも今回のシングルは新しく届くし。初めて聴いた人も、少しétéが見えてくるのかなと思います。