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INTERVIEW

Japanese

Muvidat

2019年07月号掲載

Muvidat

Member:Uqui(Vo) MAH(Dr)

Interviewer:山本 祥子

-あとはさ、「19 Years」って曲の佇まい的にも役割的にも、「ポビーとディンガン」(2003年リリースのSHAKALABBITSの7thシングル『星空の下で/「ポビーとディンガン」』収録曲)みたいな感じがして。最後のUquiの叫び声に合わせてお客さんも大声出して、会場がキュッと1個になる画が見えるから。

MAH:そう。最後の叫びで会場にいる全員が解放されるんですよ。SHAKALABBITS時代から俺はそれを"大声ヒーリング"として提唱してるんだけど。とにかくデッカい音を出すと気分が晴れる。だから若者はバンドをやったり、バイクに乗ったりするんです。なので「19 Years」はみんなで恥も外聞もかなぐり捨てて大声出して、そこからまた始めましょうっていう。

-禊、滝行、もしくはお祓いみたいな(笑)。

MAH:そうそうそう。塩なんか撒いちゃったらちょっと大変だけど。

-嫌だぁ。紙吹雪が舞うバンドから、塩を撒くバンドになるのは。

Uqui:お掃除も大変だもん。ただMuvidatから聴き始める人にも身近に感じてもらえるんじゃないかなぁと思うんだ。長く一緒にいる家族とか友達とか恋人とか、いろいろなところに結びつくワードにしたつもりなので。

MAH:さらに言えば、俺らがムビ(Muvidat)をやってるって知らない人がまだいっぱいいるから。リサーチによるとそこが繋がってないんですって。

-UquiとMAHとMuvidatが?

Uqui:そうそうそう。その要因のひとつに、"UKI"から"Uqui"に私が名前の表記を変えたこともあるのかもしれないけど。これは、Muvidatというバンド名の意味とも繋がっているんだけどね。イラストレーターの宇野(亜喜良)さんに初めて舞台("新宿版 千一夜物語")に誘ってもらったときに、開演直前まで美術も衣装も完成してないところがあってバタバタしてたら、アシスタントの直子さん(野村直子)が"宇野さん、間に合うの? 大丈夫なの?"って。

-それくらい切羽詰まってたんだ。

MAH:もう出る5分前とかよ。

Uqui:裏でみんなが猛烈にバタバタしているなか、宇野さんが"大丈夫だよ。僕はいつだって夢中になれる"ってサラッと返して。

-かっこいいぃぃ(悶絶)。

MAH:Uquiさんの衣装の腕章に宇野さんが文字を書かなくちゃいけないんだけど、まだ他のことをやってて。

Uqui:"新宿版 千一夜物語"という作品を完成させる腕章だったから、私はその"僕はいつだって夢中になれる"って言葉を側で聞いてしまって。

-ん? とても聴き覚えがあるような......。あっ、「Muvidat」のフレーズだ。

Uqui:そう! 私じゃなくて宇野さんが言った言葉だから、カッコがついてるの。

-今、鳥肌がすごいんですけど。

Uqui:私もザワッザワして、その場ですぐに"僕はいつだって夢中になれる"って口に出して言ってみたの。で、そのまま本番を迎えて、初めての演劇の舞台だからどうなるかわからなかったけど、衝撃で気持ちがスーッとなって初日を無事に終えられたという記憶が鮮明に残っていて。メモる必要もないくらい、ずーっと自分の頭の中にあったし、たまに口に出して言ってたし。だからバンド名にも、ライヴや物語やいろんな世界に瞬時に入り込めるっていう意味の"脱兎"を入れたし。宇野さんのひと言は痛烈に効いていたね。

-その場にいたわけじゃないけど、鮮烈な光が見えたもの。

Uqui:でね、5~6年前、宇野さんが私の衣装のデザインをしてくれたときに、そこに書いてあったのが"Uqui"だったの。"UQUI chan"って書いてあって。

-考えたら、宇野さんの署名も"Aquirax"じゃなかったっけ?

Uqui:そうそう。だから"Aquirax"的に私は"Uqui"なんだと思って、それが結構気に入ってて、たまに友達にサインするときとか、ふざけて"Uqui"って書いたりしてたの。で、Muvidatが始まるってなったときに、そういういろんなことが、カシャンカシャンカシャーンってパズルのピースみたいにハメ込まれていったから、私はUquiになった。"いつからUquiちゃんになったの? なぜ?"って思っている人もいるだろうけど、そういうことなんです。

MAH:名前だけじゃないと思うけどね。ずっとシャカ(SHAKALABBITS)に夢中だった人がバンド休止を機に自分の人生に目を向け始めたら、仕事だ、勉強だ、子育てだって、ケータイやパソコンで俺たちのことをチェックする機会は減るじゃないですか。そしたらもうご飯作ってるときにテレビで流れない限り、気づかないっすよ。いや、それが悪いって言ってるんじゃなくて、しっかり動き出したので、休憩時間にでもケータイをポチッてくれれば、俺らはそこにいますので。

-まだ気づいてないシャカファンに言いたいのは? ちょっと冷静に考えてみて。素敵な音楽を響かせる以外、UquiとMAHに何ができますか?

MAH:そう! 何もできないんですよ。

Uqui:でもふと、"こんなのやってたんだ!"って気づいてもらえたら、すごく嬉しいよね。

-そういう想いも全部アルバムに入っているよね。「タンジェリン」の"その瞳に映ってしまったら息をするのも忘れて"は、ステージからふたりが噛みしめた想いなんじゃないかって。早く出会ったとか、期間の長さとか関係なく、シャカの音楽に触れて一緒に過ごした同じ時間に尊さみたいなものを感じるというか。

MAH:まぁそんな崇高じゃないけどね(照)。

-けどそれって奇跡みたいなことじゃない? 年齢とか、タイミングとか、少しずれただけで出会うことすらなかったかもしれないわけで。

MAH:うん。それは本当に感じるなぁ。例えば、年上の先輩がリアルにQUEENのライヴをロンドンで観てたりするわけよ。それって我々からすると信じられないことでしょ?

Uqui:いいなぁと思うね。

MAH:けど自分が今日ライヴハウスで観る友達のライヴが、数年後に誰かに話したら"えー、すごいっ!"ってなる可能性もあるじゃない。その先輩も至って普通のテンションで"あのときに僕、やられちゃったんだよねー"みたいなことを言うけど、"そりゃあんな人たちの音を生で聴いたらやられるでしょうよ!"っていう。そういうことと出会うには、ちゃんと自分のアンテナを張っていられるかどうかが大事で。そう考えたら日常って面白いなーって思うし、俺らのライヴも絶対に観てほしいよね。