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INTERVIEW

Japanese

ロイ-RöE-

 

ロイ-RöE-

Interviewer:TAISHI IWAMI

あいみょんやyonige、WANIMAといったフレッシュなヒット・アーティストも多く所属する、ワーナーミュージック・ジャパン傘下のunBORDE。同レーベルが送り出す次なる刺客、ロイ-RöE-のデビューEP『ウカ*』が面白い。まったく無名のシンガー・ソングライターでありながら、突如メジャーのフィールドに登場。さらに、ゲスの極み乙女。のちゃんMARIが自身初となるプロデュースを手掛けたというビッグなトピックも納得だ。ジャズやフレンチ・ポップなどにあるレトロな異国情緒、アヴァンギャルドな攻撃性を剥き出しにしたサウンド、独特のハイトーン・ヴォイスなどが混ざり合った、不思議で少し奇妙なポップ・センスがクセになる新感覚作品となっている。そこで今回は、まだまだ謎多きロイ-RöE-の、音楽を始めたきっかけから、曲制作やヴィジュアル面に対して持つ美学などに迫り、そのポテンシャルを探っていった。12月に控えている初ワンマンも見逃せないものになりそうだ。

-まず、曲を作り始めたきっかけを教えてください。

中学を卒業して、何か作る仕事がしたくて、そこで思いついたのが漫画家と歌手だったんです。でも絵心がまったくなかったんで、じゃあ音楽にしようって。テレビとかも出てみたかったし。

-漫画と音楽が好きだったんですね。

好きでしたけど、"ドラゴンボール"とかヒット・チャートに入っている曲とか、ほんとみんなが知ってるようなものばかりで、めちゃくちゃ詳しいってわけではなかったです。

-そこからシンガー・ソングライターとして活動されていた。

アコースティック・ギターを買ってきて、20曲できたらオーディションを受けるって決めて、ひたすら作曲してました。それで今の事務所に合格したんです。

-音楽に詳しいわけではなかったということですが、曲を作るときに参考にしたアーティストはいましたか?

それが、いないんですよね。アコギで曲を作ろうとしたくせに、好きな音楽はヒップホップとかR&Bとかだったんです。周りの友達も似たような趣味で、楽器をやってる人もいなかったから、教えてくれる人もいなくて。まったく無知のまま独学で作ってたんで、変な曲ばっかでした。でも、逆にそれが幸いして審査員の方の目に留まったのかもしれないですけど。

-コードとか、キーとかスケールとか、そういうこともなんとなく?

コードはギター初心者用の本に載ってたコード表を見て、形だけ3日で覚えて、あとは適当に。キーとかスケールとか、そういうことを覚えたのは最近で、正直今もよくわかってないです。とにかく自分が気持ち良く歌える響きや、カッコいいと思う音を探す、みたいな。そんな感じだったから、初めてレコーディングしたときは、リバーブとかEQ(イコライザー)とかコンプ(コンプレッサー)とか、私が知らない用語が飛び交っていて、戸惑いました(笑)。

-音楽的に参考にしたアーティストはいなかったということですが、憧れていた存在となると、どうですか?

土屋アンナさんとか、ダウンタウンの浜田(雅功)さんが好きです。"浜ちゃんに会いたい!"という気持ちがモチベーションになっている部分も大きいですから。土屋さんも浜田さんも、音楽やお笑いだけでなく、役者とか、いろんなことに挑戦していて、全部ハマってる。そういうバイタリティのある人が好きなんです。確固たる自分を持っていれば、どんなことをしても伝わるじゃないですか。

-では、ロイ-RöE-さんたるものとなると?

歌詞ですかね。でも語彙力がなかったんですよ。だから小説とか、いろんな本を読んで勉強したんです。それで身につけた言葉の使い方とかに対して"面白いね"ってよく言ってもらえるんで、良かったです。

-中原中也や三島由紀夫がお好きなんですよね。

はい。最初は読んでいても意味がわからなかったんですけど、使う字とかが、なんとなくカッコいいなって。そういう、活字なんだけど視覚的なデザインにまでこだわる人って、いるじゃないですか。

-今作の歌詞の中で、"儘(まま)"や"含羞む(はにかむ)"といった、常用ではない難しい漢字を使われていますね。それによってどんな効果があるのでしょう。

日本語ってひらがなとカタカナと漢字があるので、そこのバランスはすごく考えてます。漢字が多すぎるからカタカナを挟もうとか。言葉は書き方によって印象が変わる。それが面白くて、ああでもないこうでもないって選ぶ作業が楽しいんです。あとは、小さい"っ"が続くと嫌だとか、そういうリズム的なことや、行数などにもこだわってます。歌だけど見た目も大切。ミュージック・ビデオやジャケットに近い感覚かもしれません。

-"慌ただしい"を"泡ただしい"と書くなど、もじるセンスも面白いですね。慌ただしさを基準に、じゃあ"泡"とは何かを考えたり、"泡"が"正しい"と捉えてみたり、歌詞カードを読むのが楽しかったです。

言葉遊びが好きで、いろいろと想像してもらえるように書いてます。いろんな解釈をしてほしい。だからタイトルにアスタリスクをつけてるんです。私なりの答えはあるんですけど、そこは考えてもらう必要はなくて、聴いてくれた人が思ったことが脚注の答え、という意味があります。

-ロイ-RöE-さんなりの答えははっきりしてるんですか?

はい。でもそこまでは言いたくない。「泡と鎖*」や「Heart Beat*」のミュージック・ビデオを作るときも、完全に監督にお任せしました。人それぞれに思ってることが違うから面白いものができる。自分だけで解決するとワンパターンにもなりますし。

-そのオープンな姿勢がロイ-RöE-さんの感性をますます磨くんだと思います。それに、歌詞の答え、例えば歌詞が作者の実体験なのかどうかとか、こっちから聞いてしまうのはナンセンスだと思っていて。

すごくわかります。そもそもアーティストのそういうのって、聞きたくもないですよね。

-そして、言葉がメロディに乗るからこその強さ。歌声も合わせて、かなり独特ですよね。曲はどんなふうに作っていくんですか?

歌詞から作るとか、メロディから、アレンジからとか、決めてないんです。ニュアンス的には、持っているものを"引き出す"というより、よく言われる"降りてくる"感覚に近いのかも。引き出そうとしたり、必死で作ろうとしたりしてもできないんですよね。で、締め切り前になって病んじゃう。でも本当にギリギリになって、全然関係ないところから降りてくるみたいな。トイレとかお風呂で急に思いついて、リビングに飛び出したり、忘れないようにずっと歌いながらシャワー浴びたりしてます(笑)。