Japanese
"Scattered light vol.SP!"
Skream! マガジン 2019年11月号掲載
2019.10.02 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 新地 駿平 Photo by とみたむつみ
Skream!プロデュースのライヴハウス"下北沢LIVEHOLIC"が、不定期に開催しているエレクトリック・ダンス・ポップをテーマにしたライヴ・シリーズ"Scattered light"。このスペシャル・イベントが、10月2日に行われた。今回はスペシャルということもあり、ひとつの音楽ジャンルにとらわれない個性豊かな女性アーティストたちが、下北沢の平日の夜を艶やかに彩った。
O.A.のmoon grinは、MOERI(Vo/Sampler)と、RINA(Ba/Cho/Syn)による女性ふたり組。ライヴのオープニング曲となった「ROUND MIDNIGHT」は、ジャジーなピアノのメロディをベースにした楽曲かと思いきや、変則的でトリッキーな曲展開があり面白く、彼女たちのセンスの高さが窺えた。そのあとも、EDMやヒップホップを軸にした楽曲が次々と披露され、お揃いの衣装で登場してきた、彼女たちのかわいらしいルックスからは想像できないほどカッコ良く、いい意味で裏切られた気持ちになった。
続いては、先日渋谷WWWで5周年ワンマン・ライヴを成功させたばかりのcolor-code。1曲目「parallel world」から、しなやかさとキレが同居した3人の一糸乱れぬパフォーマンスと歌声で観客を圧倒。照明の演出も相まって下北沢LIVEHOLICをダンス・フロアへと変貌させる。続くミドル・テンポの「Break Our Love」、「POP STAR」で3人は、激しく観客を煽りながらも、その歌声とダンスには妖艶さとクールさが溢れていた。MCではMARISAが"私たちは全員センターのダンス・ヴォーカル・グループです"と言っていたが、その発言にすごく納得させられた。NANAMIは男性でも憧れるくらいの独特で低音のきいたハスキーなヴォイスで、MAKOは舞台女優と思わせるほどの声量としなやかな歌声で、MARISAはキュートな外見からは想像がつかないほどセクシーな大人っぽい歌声の持ち主。全員ダンスだけでなく歌もポテンシャルが高く、この3人だからこそ名乗ることができる"多様性"ダンス・ヴォーカル・ユニット color-codeなんだと実感した。
3組目は、今年6月に行われた下北沢LIVEHOLICの4周年イベントに出演して以来のライヴだというロイ-RöE-。ステージに上がると「泡と鎖*」、「スリル*」、「Heart Beat*」を3曲連続で披露。まるで椎名林檎を彷彿させるほどの、どこまでも伸びる透き通った高音の歌声だった。さらにVJによる演出もあり、ロイ-RöE-が映像に包まれ歌っている様子は、幻想的で彼女が掲げる"ディストピア"な世界観が補完されたように感じた。恒例のMPCでのパフォーマンスは、"可憐な女性がMPCを叩く"というミスマッチ感にどこか惹かれつつ、その技術の高さにも目が奪われる。そして最後は、映画"羊とオオカミの恋と殺人"の主題歌「癒えないキスをして*」をライヴ初披露するサプライズが。"以前主題歌を歌ったドラマは血まみれな描写が多かったのですが、今回の映画も血まみれです。血まみれの仕事なら任せてください"と少しのブラック・ジョークを挟みつつ披露した新曲は、ロイ-RöE-の楽曲の中でもかなりポップで、彼女の新たな音楽性の一面が垣間見れた。
そして、このイベントのラストを飾ったのは、DJセットで登場したYun*chi。キラキラとしたイントロから彼女の代表曲のひとつとも言えるアニメ"ログ・ホライズン"のエンディング・テーマ「Your song*」、メドレー形式でデビュー曲「Reverb*」と「Shake you*」を披露。Yun*chiの柔らかく聴き手に寄り添うような歌声が会場を包み込み、前のアクトのロイ-RöE-とはまったく異なる世界観でライヴを展開していった。今回はバンド・セットでギターを担当しているYasunojiがDJを担当するということで演奏だけでなく、MCでも息ピッタリなやりとりがありYun*chiが予定よりも長く話してしまう場面も。そんな和やかなムードのまま、恋をひたすらに頑張る女性をファンシーなメロディと歌詞で表現した「QLL*」へ。そのあとは冬の楽曲「ゴジラのため息」や、忙しい彼に会えない寂しさを歌った「dual*」など、ガラッと雰囲気が変わって切ない曲を披露したが、最後はYun*chiらしいみんなで盛り上がる「Trendy Night*」、「Wonderful Wonder World*」を披露し、手拍子が起こるなど演者と観客が一体になってライヴは幕を閉じた。
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