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INTERVIEW

Japanese

嘘とカメレオン

2018年09月号掲載

嘘とカメレオン

Member:チャム(.△)(Vo) 渡辺 壮亮(Gt/Cho)

Interviewer:秦 理絵

-渋江さん以外の他のメンバーはどんな音楽を聞いてるんですか?

渡辺:青山(青山拓心/Dr)は一番特徴がなくて、ヒット・チャートをまんべんなく聴いてますね。

チャム(.△):ギターの菅野はBUMP OF CHICKEN。

渡辺:みんなの聴いてる音楽がちょっとずつ重なったところが、今の嘘カメの音楽になってるんだと思いますね。

-なるほど。嘘カメって、2016年に「されど奇術師は賽を振る」のMVが公開されてからバンドの状況が変わったと思うんですけど、実際にライヴの動員もガラリと変わったんですか?

渡辺:その前は全然お客さんがいなかったですからね。動員が2桁に届くことがなかったですし、ただ、とにかくライヴを良くしようと思ってたんですよ。

チャム(.△):ライヴはめちゃくちゃやってましたね。

渡辺:県外遠征も実費で行っていて、本当に泥みたいに転がりまわってて。少しずつライヴの形ができあがっていったんですけど、そこでできあがったがったものを、なるべく映像で伝わりやすいものにしようと思ったのが、「されど~」(「されど奇術師は賽を振る」)だったんです。だから、僕のキャラクター感とか、コーラを飲むネタも、全部ライヴで培ったもので。

チャム(.△):あれが演出っぽく思われるんですけど、素の私たちだったんですよ。

-そこは誤解があるかもしれないですね。あの映像(MV)を観たら、もっと戦略的に、売れ線を狙ってやってるのかな? って思われそうだから。

渡辺:そうなんですよ。あの映像でやってるのは、ライヴを楽しくやるためのロジックを、そのまま映像に落とし込んでるだけなんですよね。

チャム(.△):自分たちはライヴ・バンドだっていう自負があるんですよ。作品できれいなものを残すだけじゃなくて、生で伝えるライヴが絶対的にかっこいいことが大事なんです。

-例えば、"ライヴでこうしたら楽しいよね"とか考えるアイディアマンみたいな人は、バンドの中にいるんですか?

渡辺:アイディアはみんなで雑談しながら出てくることが多いですね。

チャム(.△):たしか(渡辺のトレードマークとして)短いネクタイを衣装にしようと思ったのも、そのころだったよね。最初は"蝶ネクタイにしたら?"って言ってたんですよ。

渡辺:それ、すげぇ嫌だったんですよ。なんかデブっぽいじゃん(笑)。

チャム(.△):で、短いネクタイって、めっちゃ良くない? って、みんなでゲラゲラお腹が壊れるぐらい笑って。"短いネクタイ"で検索したら、パリコレの写真が出てきて(笑)。

渡辺:クソオシャレ!

チャム(.△):で、それをやってみたら、すごいしっくりきたんです。

渡辺:蝶ネクタイとかサスペンダーとかオーバーオールだと、いわゆるデブのキャラクターっぽいんですけど、もっと絶妙なところを狙いたくて。短い蝶ネクタイは、デブのキーワードじゃないんですけど、身につけるとなぜかしっくりくるんです。

-なるほど(笑)。メジャー・デビュー・アルバム『ヲトシアナ』は、メンバー同士が自分たちの感性を信じて、インディーズ時代と変わらずに、かっこいいと思うものを突き詰めたアルバムだと思いますけど、まず、どういう作品にしようと思いましたか?

渡辺:アルバムにひとつ一貫してテーマがあるとしたら、それは"ジャンルレス"なんですよね。好きな音楽は全部やりたいから、僕らは今までもずっとジャンルレスでやってきたんです。売れてないときには、"なんのジャンルなのかわからない"とか言われましたけど、心の中でずっと反抗しながらやってきてて。それを研ぎ澄まして、自分の中のジャンルレスを突き詰めた結果が、今回のアルバムになればいいなと思ってましたね。

-今言ったことと真逆になるかもしれないんだけど、たしかにアルバムにはファンキーな曲もあれば、明るいポップスもある。だからジャンルレスっていうのもわかるけど、全然バラバラじゃなくて、全部が嘘カメとして統一されてるんですよね。

チャム(.△):あぁ、それはすごく嬉しい。

渡辺:これが1個の答えなんじゃないかと思いますよね。サウンドメイクのときに、一応ジャンルのモデルはあるんですけど、それをあくまでも嘘カメの音にするために、今までライヴハウスで培ってたノウハウからフィードバックする音作りをしてるので。根本にはジャンルレスな曲たちがあるけれど、最終的には僕らっぽい曲になる。そのためにはヴォーカルの力も大きいです。チャム(.△)は他にはあんまりいないタイプの声なので。

-ええ、キュートさとセクシーさを併せ持った声だなと思います。

渡辺:二面性がありますよね。ひとつの声の中に両方が内包されてるような印象があって。それと、歌詞の世界観。この3つが絡み合えば、嘘カメになるんです。

チャム(.△):今回は(交通事故で)休止してた3ヶ月もあったので、ようやくできたっていう感覚なんですけど。アルバムには1秒も無駄がないんです。捨てる0.1秒が本当にない。12曲を聴いたときに、自分たちが選んだものが何も間違ってなかったなと思いました。