Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

キミノオルフェ × 東市 篤憲

2018年07月号掲載

キミノオルフェ × 東市 篤憲

キミノオルフェ:
A4A:東市 篤憲(代表) 松永 つぐみ
インタビュアー:杉江 由紀 Photo by 上溝恭香

-一方、「天国」と「滑走路」はアルバム未収録曲であり、相関関係を持ったものとなっているそうなのですが、こちらについて監督はどのような見解をお持ちでしょうか?

東市:これは2本とも、蟻ちゃんとカメラマンさんとの息がぴったり合ってるなというのが、よくわかる作品だと思います。映像がほんとにきれい。そして、ちゃんとふたりの作り上げる世界とか、アイデンティティいうのが確実にできあっていますよね。


どこでスクショされても"画になる"映像が私は好きですね(蟻)


-MV撮影に関しては、ずっと一貫してきるけ。さんがされているそうですね。

蟻:さっきの"uncommon"の時点で、カメラを回してくれていたのはきるけ。君だったんですよ。彼はスチールのカメラマンなんです。

東市:そこだよね。スチール的な切り取り方で、ボケ足のきれいな画を動画でも撮るっていうのが、大きな特徴だなと感じます。

蟻:東市さんもそうなんですけど、どこでスクショされても"画になる"映像が私は好きですね。きるけ。君も、そこはまったく同じ考え方なんです。

東市:僕は、半眼のカットがあった場合は必ず抜きます(笑)。

蟻:その話も、東市さんから初めて聞いたときに"そこまで意識するべきものだったのか"って気づかされた点だったんです。まばたきの瞬間の半眼がブサイクだったら、そこは使わないって言われて"そうか!"と、あれはちょっと衝撃でした。

東市:もっとも、全部が全部でそういうことを求められているわけでもないんですけどね。例えば、アイドルのMVだと完全に美しいとかではなく、そのままの雰囲気が好きっていう人もいると思うし。ちょっとした瞬間の変な顔も含めて、全部入れてよっていうファンの方も中にはいらっしゃいますから。そこは、撮る対象によっても違います。

-次に、「蜃気楼」についても監督からコメントをお願いします。

蟻:これは、かなり歌詞に寄り添ってみたMVです。

東市:女の子が絵を描いているやつか。これが5本目なのかな。素晴らしい出来なんですけど、どこか5本目だからこその迷いみたいなものも感じますね。

-おや。蟻さんからすると、そのご指摘には心当たりがありますか?

蟻:東市さんがそうおっしゃる意味は、今になって見返してみるとわかります(苦笑)。

東市:意図的なのか、どうなのかはわかんないんだけど、初作品の「バックパック」で男の子が草の道を走っていくカットがあったでしょ? この「蜃気楼」にも、女の子と男の子が同じような感じで草の道を走っていくところを後ろから撮ったカットがあるんですよ。これが意図的に過去をなぞってやったものだとするとMVとしてはかなり高度な手法だと思うし、もしたまたま重なったんだとしたら、そこにちょっと迷いを感じるし。実際、そこの真相はどうなんですか?

蟻:真相としては、単純にそういう構図が好きなんです(笑)。だから、自分でも前と似てるなっていうことはわかっていたんですけど、「蜃気楼」の方はカメラの方を止めて撮るっていう形にしてみたんですよね。

東市:じゃあ、意識してやったっていうことなんだね。そういう前の自分の作品と重なるようなシーンを入れることは、遊びとして僕もたまにやったりしますよ。ただ、この映像からは"あのときこれと似たカットを撮ったから、今回はこうした方がいいのかな"っていう思考の跡というか、それがちょっとした迷いとして出ているように見えますね。そして、その過程を経てきているっていうのは、蟻ちゃんが本当の意味で"監督になってきている"ことの証でもあるんじゃないかな。

蟻:そこは詞を書くときにも悩むところなんですよね。同じ言葉はなるべく使わないようにする、ということを私は何時も意識しているんです。言っていることの中味は同じだとしても、言葉のニュアンスを変えないと"これは、前のあの曲とリンクしているんですか?"というふうにファンの方から思われてしまいますから(笑)。関連性を持たせたくてわざとそうしたならともかく、自分が思ってもみなかったところでそういう誤解が生まれてしまいかねないので、言葉選びはとても大切なんです。

東市:中国のジョン・ウー監督みたいに、必ずどの作品でも鳩が飛ぶとかね。そういう個性の出し方っていうのも、もちろんあるんですよ。だから、そこは使い方だと思います。