Japanese
ヨルシカ
2017年07月号掲載
Member:n-buna(Gt/Composer) suis(Vo)
Interviewer:秦 理絵
人気ボカロPとしても活動するn-buna(ナブナ)が、これまで自身のライヴに迎えていた女性ヴォーカリスト suis(スイ)と共に新バンド"ヨルシカ"を結成。初のミニ・アルバム『夏草が邪魔をする』を6月28日にリリースした。これまでn-bunaが自身の名義で制作してきた作品のような打ち込みやボーカロイドによる手法ではなく、情感豊かな歌声とサポート・ミュージシャンによる生のバンド・サウンドで完成させた今作。インストを含めて全7曲で"夏"をテーマに掲げ、その文学的な歌詞にはn-buna自身の死生観が全編に漂っている。独自の世界観を表現するために、いまタッグを組んで歩み始めたばかりのふたりに話を訊いた。
-n-bunaさんはもともとボカロPとして活動をしてきたわけですけども、ヨルシカという新たなバンドを組もうと思った理由から教えてください。
n-buna:もっと人間的な部分を出した活動をしてみたいと思ったんですよね。それができる場所をずっと探してたんです。僕は歌があんまり得意じゃないので、自分で歌うという選択肢はなくて、自分の世界観にあったヴォーカリストの声を探すところから始めました。
-人間的な部分を出したいと思うきっかけはあったんですか?
n-buna:もともと自分が作った曲を世に発信するためのひとつの手段としてボーカロイドがあって。その文化が好きではあるんですけど、それ以外にもバンドや普通のアーティストの作品も好きなので、僕も人間的な作品を作りたいなと思ったんです。
-これまでにバンドを組んだことはあったんですか?
n-buna:学生のときにちょっとだけ友達とやってました。遊びでやる程度でしたけどね。それよりも家でひとりで曲を作る方が楽しかったんです。
-影響を受けたアーティストはいますか?
n-buna:HIDETAKE TAKAYAMAさんの作品が好きです。作曲家なんですけど、すべての作品がハイクオリティなんです。「Express feat. Silla (mum)」っていう楽曲(2012年リリースの2ndアルバム『Asterism』収録曲)のMVがあって、それを昔見たときに衝撃を受けたんですよ。MVと楽曲自体とヴォーカリストの声の世界観がそれだけで完成されていて。僕もこういう作品を作りたいなと思いましたね。
-自分の世界観を表現するうえで、女性ヴォーカルがよかったんですか?
n-buna:そうですね。たぶん僕の音楽的な好みにも起因すると思うんですけど、女性の声の方が楽器として優れてると思うんです。アコギやエレキ・ギターの音域と少しだけ被りつつも上に抜けていく声っていうか。ギターとかピアノの音とは被りにくい高音までいくので、僕としては曲も作りやすいんです。逆に言えば、男性の声も別の楽器として優れてはいるんですけどね。低いところまでカバーできるわけだから。
-ちなみに、ふたりはどこで出会ったんですか?
n-buna:共通の知り合いに音楽制作の人がいたんです。最初は僕の仕事として仮歌だったり、デモで歌ってもらったりすることがあったんですけど、今回の活動を始めるにあたって、"この人がいいんじゃないか"っていう候補に挙がった感じですね。
-suisさんはn-bunaさんに声を掛けられる前からどこかで歌っていたんですか?
suis:それが、音楽はこれが初めてのことなんです。最初はヨルシカというより、"(n-buna名義の)ライヴをやるのにヴォーカリストを探してる"っていう感じで声を掛けてもらったんですね。
n-buna:そのときに思った以上にうまくハマったんですよ。
-もともとシンガーとして活動している人ではなく、経験のない人に声を掛けたのは?
n-buna:音楽的な経験よりも、その人の持ってる本質を大切にしたいなと思ったんです。どんなに歌が上手くても、僕の作るサウンドにハマらなければ、意味がないと思ったので。歌っていれば誰でも経験はあとからついてくるものですからね。
suis:下手でも育てればいいやろっていう気持ちなんだと思います(笑)。
n-buna:いま現在でも僕の納得いくものを十分歌ってくれてますよ。
-suisさんは誘われてすぐに"やりたい!"って思いましたか?
suis:相当悩みました。ライヴを1回やるにしても、いままではステージで歌うことも想像できなかったので、"私じゃ務まらないよ"っていう気持ちでいたんです。それをn-buna君が一生懸命......本当に詐欺みたいに(笑)、"気楽な気持ちで1回歌いに来てくれたらいいから。すぐにやめられるから"って言ってきて。
-お試しみたいな感じで(笑)。
suis:それがどんどんヨルシカもやるようになってたんです。でも、同時に自分の心も固まっていったというか、覚悟を決めなきゃなと思いました。
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