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INTERVIEW

Japanese

チーナ

2016年12月号掲載

チーナ

Member:椎名 杏子(Vo/Pf) 柴 由佳子(Violin) リーダー(Gt/microKORG) 林 絵里(Contrabass) HAPPY(Dr)

Interviewer:石角 友香

ピアノ、ヴァイオリン、コントラバスを擁する独特のバンド形態で、クラシック、ロック、ポップス、オーガニックといったジャンルをシームレスに行き来するバンド、チーナが2年4ヶ月ぶりとなるニュー・アルバム『PULL』をリリースする。ポスト・ロックなどのよりエクスペリメンタルな部分と、歌がダイレクトに伝わる部分の両翼を広げた印象のある本作は、チーナフィルハーモニックオーケストラの制作を並行したことから"バンドとは何か?"に自覚的になった作品だ。試行錯誤しながら我が道を行くメンバーに、今回はバンドとチーナフィル両方の作品について訊いていく。まずはバンド作に至る道のりを紹介しよう。

-前作『DOCCI』(2014年リリースの2ndミニ・アルバム)をリリースして以降、チーナというバンドのスタイルが定着してきた実感はありますか?

椎名:ライヴをやる場所や対バンが広がったというか。アコースティックな日があったり、めちゃくちゃぐちゃぐちゃなロック・イベントに出たり(笑)。

林:今度、成山 剛さん(sleepy.ab)と一緒にアコースティック・ライヴをやりますし(※11月24日開催/取材日は11月14日)。

椎名:逆に、新宿JAM主催で開催された"JAM FES"というサーキット・イベント(※チーナが出演した2016年は7日間160時間連続で行われ、総勢500組が出演)に呼んでいただいたり。

-チーナフィルでの活動が、今回のアルバムに直接、あるいは間接的に関わっていることはありますか?

椎名:いやもう、めちゃくちゃ複雑に絡み合ってる感じで。チーナフィルの存在があってのチーナっていう感覚はすごくあります。2015年の5月1日にチーナフィルでライヴをして、その直後にチーナのライヴがあったときに、"やっぱりチーナフィルの方が楽しいな"って思っちゃうのかなとかいろいろ悩んだんですけど、チーナフィルをやることによって、いい意味でチーナのメンバーは身内感が増した気がして。言い合いとかも結構増えて、なんか親戚が集まった家から、家族だけまた戻ってきたみたいな。言いたいことを露骨に出せるようになりましたね。

-すごく新鮮な曲が多かったので、具体的にお聞きしていきますね。Track.3「いい人間になりたいよ」はどういう成り立ちですか?

椎名:"チーナでアルバムを作る"っていう最初の段階ですっごく悩んじゃって。逆に言うと、チーナフィルではできない曲をやりたかったんです。今まではそんなこと意識して曲を作ることがなかったんですけど、"やっぱりチーナだからいい"と思える曲を作りたいと考えたときに、5人の個性がすごく出るようにっていうのを意識して。「いい人間になりたいよ」は、あんまりクラシカルじゃなくて、バンドっぽさもありつつコーラスがとにかく面白い曲を目指しました。あと、いい意味で私のダメさがちゃんと出てる歌詞というか。それはチーナにすごく合うなと思ってるんです。

-チーナフィルという対比する存在があるから、バンドに対しての意識がより鮮明になったと。

椎名:はい。私はひとりで曲を作ってるんですけど、メンバーはあんまりそういうのを気にしてくれてなくて。私が曲作りでめっちゃ悩んでるのに、(柴と林が)山登りに行って、なんかすっごく楽しそうにしてたり。

柴:そうですね。"一緒に行く?"とか聞いてました(笑)。

椎名:山登りに行ってて、すごくムカつくなと思いながら作ったのがその曲です(笑)。

柴:"曲ができました"って、山登りの途中で送られてきたんですよ。それを受け取ったときは、なんか"うん"って気持ちになりました。

-どういう印象を持ちました?

柴:面白かったのが、曲を最後まで聴くと"めっちゃいい曲だな"という気持ちに移行して。個人の感情というよりも、やっぱりそこはバンドとして。"あ、これはもしかして私に向けてるのかな?"ぐらいは思うんですよね。ただ、"これ、どういうアレンジになるんだろうな"って、脳みそは違う方にすぐ切り替わるんですけど(笑)。

-この曲はわりとファンクっぽい部分もあったりして、今っぽい要素も盛り込まれていると思うんですけど、そのへんは誰のエッセンスなんですか?

リーダー:今言われて"たしかにファンクっぽいかも"って気づいたぐらい、あんまり意識せず、シンプルに仕上げたいっていうのはありましたね。

-ヒップホップのテイストもあるのかなと思うし。

椎名:チーナフィルは"たくさんの楽器が鳴ってる"っていうのがあるんですけど、チーナはドラムを一番大事にしていて。それでこの曲を作るときに、いろんなドラムの音源とかをすっごく聴いて意識したのを思い出しました。

-椎名さんの中に、モードやトレンドはあったんですか?

椎名:私、ハラフロムヘルっていうバンドが好きで。くだらないんですけど、すごくチャーミングなんですよね。それでハラフロムヘルを意識したわけじゃないんですけど、いい意味でのチープ感みたいなもの――やっぱりどうしても、チーナフィルで目指しているようなオーケストラ感と違って、チーナはちょっとチープな感じであったり、もうちょっとバンドっぽい部分であったりを意識しましたね。