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INTERVIEW

Japanese

the band apart×□□□

2016年10月号掲載

the band apart×□□□

the band apart:木暮 栄一(Dr)
□□□:三浦 康嗣
インタビュアー:石角 友香

-意識的に音楽を聴かなくなったんですか?

三浦:意識的じゃないですよ。単純に飲んだりおいしいものを食べたりしてたら、普通に聴く習慣がなくなっただけだと思いますね。1stアルバム(2004年リリースの『□□□』)を出すとき、なんでかわかんないけど、今までのレコードを全部売ろうと思ったんですよ。

木暮:えぇ(笑)?

三浦:いろんなレコードを持ってて、それを参照して作るとか、すげぇいろんなジャンル――昔のフリー・ジャズからクラブ・ミュージック、AUTECHREよりマイナーなエレクトロニカまで、"俺、いろんな音楽知ってるよ"っていうのがアイデンティティになってたんだと思う。

木暮:あぁ。

三浦:CDを出すってことは、何十年も残るかもしれないものを出すっていうことだから、かっこよく言えば既存の文脈とか、"自分は音楽を知ってる"ってアイデンティティで作っちゃダメだよなって。そう無意識に思ってたから、とにかく全部レコードを売らなきゃなと思ったんです。20代前半までは飯代削ってレコードを買ってたけど、20代後半からレコードを売って飲みに行くみたいな。快楽のあり方が変わったんでしょうね。

-なるほど。そして木暮さんはガチなラップで一番挑戦してますよね。

木暮:昔取った(笑)――

三浦:杵柄? トラウマ?

木暮:トラウマ(笑)。三浦監督がイメージを固めていく中で、なんか"木暮はラップでしょ"って感じになって。BPMはどれぐらいがいいだろうって考えてたときに、最近のトラップぐらい遅いやつで、生楽器でやったら面白いかもみたいな話をしてたら、すぐにトラックが上がってきて、それに対するせいこうさんの情熱溢れるリリックがまず最初に来てですね。俺はそのとき完全に、アメリカのOG Macoって結構叫び系のラッパーを真似してふざけたアプローチで行こうと思ってたんですけど、これは真正面からせいこうさんに向き合わなきゃいかんと思って書き直しました。

三浦:富山に行ったときに、木暮君は高校生のときにラップ・グループをやってたって話で、みんなで"そうなんだ?"って盛り上がって。それで今回、とりあえず(バンアパのメンバーを)全員歌わせるっていうのがあったから、木暮君はラップでしょって。木暮君に素材として1回ドラムを叩いてもらって、生ドラムでトラップをやりたいってことだったからそれを元にリズムを組んで、トラックを作って。それに対してせいこうに歌詞を書いてもらったら、熱いものが来たんで書き直したっていう流れでした。

-□□□ feat. the band apart名義ですけど、両者がっつり組んでますよね。

木暮:川崎が□□□(のアルバム)を出そうって推し進めていったんですけど、あいつがこういうことをアクティヴにやるのも珍しいし、すごくモチベーションが高いなぁと思って。"この日に決起集会するから"って、西新宿のどこで何時みたいな(笑)。

-意外すぎる(笑)。

木暮:そうすね(笑)。で、作品をどういう名義にするかの選択肢で、まず共作ってのがあるじゃないですか。作曲したものを投げ合って作っていくっていうやり方もあると思ったんですけど、それだとよくわかんないうえに中途半端なものができたらどうしよう? という心配があったので。

-それで□□□名義だし、□□□がディレクションする形になったわけですね。三浦さんは"この人にはこの曲だな"ってすぐイメージが出てきたんですか?

三浦:原君はあんまり喋ったことがなくてレアキャラだったけど、他の3人はヴァイブス調整できてたんで。木暮君の場合、トラックを作ってしまえば、リリックは自分で書くわけだし。荒井君はソロでも散々一緒にやってたから、ソロでもやらないような"これを歌わせるの?"みたいな曲を作ればいいと思って、あんまりないノベルティ・タイプの曲にしました。ネタでね、自分を"板橋のジョン・メイヤー"って言ってたんで、それをタイトルにして曲を作ればいいかなと。川崎の場合はとにかくあいつに歌わせるのがゴールなんで、あとはなんでもいいみたいな感じでした。原君の曲が一番考えて、最後になりましたけどね。

-何がとっかかりに?

三浦:原君は......締め切りですかね(笑)。本当にワイルドな奴は人にはワイルドとみなされなくて、ワイルド風な奴がワイルドと思われるっていうか。原君の場合は、ガチワイルドと人のことを気にする感じが同居した、アンビバレントさがあるじゃないですか? ワイルド風のダサさを知ってるからとことんまで行くあたり、俺もちょっと近いところがあるなと思ってて。人とはうまくやっていきたいっていう。それで、歌詞に自分の思いが入っちゃうから、全部排除して景色として書きました。

-アレンジはどうですか? この曲が一番カオスな印象ですけど。

三浦:俺は昔から100円レコードみたいな、クズみたいな世の中の市場で価値のないものしかサンプリングしないんですけど。そういうものが集まって曲ができる感じが原っぽいかなと思って。イントロでゴミみたいなものが浮遊してて、それがだんだん価値を放つみたいな感じ。あの人、話とか面白いじゃん?

木暮:曲の作り方も、そういう感じの断片がいっぱい重なっていって。

三浦:だんだんコードとかリズムとかが乗っていくと、それが1個のアレンジに聴こえてくるみたいな。あの人、"俺はクズみたいな人間好きだよ"とか言うじゃない?

木暮:っぽいね(笑)。

三浦:あいつ、なんだかんだ言ってロマンチックじゃん(笑)? でも、川崎の曲(Track.3「スニーカー」)が一番問題作だと思うんですけど。