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INTERVIEW

Overseas

POP ETC

2016年02月号掲載

POP ETC

メンバー:Christopher Chu(Vo)

インタビュアー:吉羽 さおり

Galileo Galileiや木村カエラとのコラボレートやプロデュース、Galileo Galileiとは互いの企画ライヴにも呼び合うなど深い親交を築き、音楽的にも共鳴しあっているNY発のトリオ、POP ETC(読み:ポップ・エトセトラ)が、4年ぶりのフル・アルバム『Souvenir』をリリースする。80年代ニュー・ウェイヴやエレクトロ・ポップのエッセンスを吸収して、サウンドや音響的にも独自で研究/昇華した音は、とてもポップでエレガントな尖りがあり、その時代の音を知る人はどこか懐かしく心くすぐられる。そんな、モダンであたたかな作品の所以をインタビュー。

-アルバム『Pop Etc(2012年リリースの3rdアルバム)』以来、実に4年ぶりのリリースとなる移籍第1弾アルバム『Souvenir』が完成しました。まずは、でき上がった手応えを教えてください。

最高の気分だよ。たしかに時間がかかったしね。別に出すタイミングを窺っていたとかそういうわけじゃなくて、とにかくずっと曲作りに取り組んでいた。何事も急がないようにって自分たちに約束したんだ。自分たちがワクワクするものができるまではじっくり時間をかけようってね。これだけの時間をかけたあとだから、やっと世に送り出すことができて、今はすごい解放感とカタルシスを覚えているよ。とてもワクワクしているしハッピーだね。僕たち3人とも、アルバムに全身全霊を注ぎこんだ実感があるよ。

-今回のアルバムは、日本での長期滞在中に制作をスタートしたとうかがっています。そのときには、アルバムのトーンやどういったサウンドの作品にしたいかというアイディアはあったのでしょうか。

時間をかけて作りたいと考えた理由の一部は、あまりコンセプトやサウンドについて考えすぎたくなかったからなんだ。とにかくひたすら曲を書き続けて、最終的には100曲くらいはできたんじゃなかったかな。ひたすら書いていく中で、アルバムが自然に進むべき道を見つけていくようにしたんだ。日本で過ごした時間にはものすごく影響を受けたよ。ここ数年はニューヨークで過ごしたのと同じくらいの時間を東京で過ごしたと思うしね。長期滞在していたのもあるけど、他のアーティストのプロデュースや曲作りの仕事なんかでちょくちょく日本に行っていたからね。日本の文化にも大きな影響を受けたのは明らかだけど、実際に生活したことも個人的に影響を受けたんだ。今は日本にもたくさん友達ができたし、第2の故郷みたいな気がするよ。とにかく影響は大きいよ。

-今回のアルバムについて、ニュー・ウェイヴの進化形ということで、"ニュー・ニューウェイヴ"と呼んでいるそうですが、前作の『Pop Etc』からの間で今回のサウンドについて深く影響したこと、またはインスパイアされた作品などはあったでしょうか。

いつも本当にたくさんのものに影響を受けているよ。いろんなタイプの音楽を聴いているしね。ひとりのアーティストを好きになると、その人の作品を全部探して、深く掘り下げて聴きたくなるんだ。今回は80年代のポップスやロック・バンドに大きな影響を受けたのが聴いて取れると思う。どうしてそのころの音楽に魅了されたかというと、当時はポップス、ロック、ダンスなんかの境界線が今よりもあやふやだったような気がするんだよね。例えばTEARS FOR FEARSなんかは僕たち大好きだけど、彼らはれっきとしたバンドだし本格的なアーティストだったけど、シングルはポップスが多くてしかも大ヒットしただろう? そういう時代の音楽がとても楽しいんだ。それから、80年代の音楽をより深く掘り下げて聴いたことによって......例えばCyndi LauperやTHE CURE、NEW ORDERのシングルはみんな聴いたことがあるけど、他にもまだあまり深く掘り下げて聴かれていない名盤はたくさんあるからね。80年代は昔のことになってしまったけど、それほど遠い昔でもない。だからまだ音楽史に書き込まれていないんだ。何が名盤かという評判もまだ定着していないから、探索する自由がたくさんあったんだ。

-みなさん80年代生まれですよね。自分が聴いて育った音楽や、親御さんが聴いていた音楽だから親しみがあるというのもあるんでしょうか。

それはあるかもね。でも弟(Jonathan Chu/Gt)は1990年生まれだし、自分も育てられたのは90年代だと思っているけど。80年代はまだ物心がついていなかったからね(笑)。80年代の音楽は後追いで聴いたけど、当時の出来事の断面図みたいな気がしているんだ。幼すぎたから当時、音楽カルチャーに何が起こっていたのか把握はできていなかったけどね。自分たちで聴くようになったときはワクワクしたよ。親が聴いていたから自分たちも聴いたことはあっても、本格的に聴くようになってからの方が発見が多かったからね。

-ジャンルの境界線が曖昧だったとさっきおっしゃっていましたが、今は音楽のカテゴライズ化が激しいですよね。そんな時代に80年代の音楽を聴くと逆にフレッシュに感じるとか?

その通りだよ。自分がリアルタイムで聴いていなかったころの音楽を聴くとき、通常は当時の人気曲がエントリー・ポイントになる。時間が経つと、当時あまり知られていなかった曲は発掘困難になっていくからね。80年代の音楽を紐解こうと決めたときも、当初はトップ40ものとかのチャートの上位曲はもっと均一化されたものばかりかと思っていたんだけど、実際はかなり多様だったんだ。こんなバンドに出会えるなんて思わなかった、みたいなものがたくさんあったんだ。だからとても興味深いものがあったよ。

-80年代のアーティストからの影響が色濃いですが、その時代の音の面白さはどういったところだと? また特に英国のアーティストも多いですが、自分ではどういったところに惹かれているのだと思いますか。

いい質問だね。と言っても自分ではよくわからないけど......THE BEATLESやTHE ROLLING STONESを聴いて育ってきたし、高校のときはRADIOHEADが大好きだった。だからイギリス音楽との接点はいつもあったんだ。もちろんアメリカのアーティストも好きなのがいっぱいいるし、最近では日本のアーティストもいっぱい気になっているよ。まぁでもイギリスのアーティストが多いというのは意識してそうなったわけじゃなくて、自然の流れだったと思うな。あの国の音楽カルチャーは本当に豊かだからね。

-楽曲、サウンドの質感や音の細部に至るまで、深みを帯びた、とても大人っぽくなった作品で、コーラスも多用された厚みある内容になっています。"進化"ということで、サウンド面でもっとも重きを置いたのはどんなことですか。

うーん......僕たちがいつもこよなく愛し、なお且つ求めているものは――ソングライティングに対してもそうだけど、自然な流れのある音楽を作ることなんだ。特に最近アメリカのポップスで見られる現象だけど、セクションごとにブツ切りになっているものが多いんだよね。それは曲の書き方によるものが大きいと思う。チームで作曲が行われていて、この人はヴァース、この人はコーラス、この人はブリッジ、みたいに分業されていて、糊でくっつけるような感じだから。ものすごく優秀なコラボレーターの集まりだったら、そういう作り方でマジックが起こることもある。でも通常は構造が壊れていたり断片化されたりしているんだよね。だから僕たちは自然に流れる音楽を作るということを大きな優先課題にしていたんだ。プロダクションの面でも、セクションからセクションへ自然に成長していくような展開になることを心がけたよ。

-なるほど。

もうひとつ3人でよく話し合っていたのが、あたたかみがあって聴くに堪えうる音楽を作るということだったね。カオスすぎたり大胆すぎたり、眩しすぎたりする音楽はたくさんあるから。そういうものよりも、もっとバランス感覚のある曲を作りたいというのがあったんだ。何かが耳障りな形で突出するよりも、自分たちの好きなものがほどよくミックスされたものを作りたかった。何回も聴き返して、暮らしに寄り添うような音楽をね。